村上春樹さんや吉本ばななさんのような文学系は
別の話になりますけど、現在アメリカで最も売れて
いる、日本人作家によるエンターテインメント小説
のひとつは、Dark Horse PressとDigital Manga
が共同出版している、菊地秀行さんの「吸血鬼ハ
ンターD」シリーズになると思います。
MANGAのジャンルに入れられてしまうことが多い
ですが、小説作品にもかかわらず、チャートの上位
で目にすることが多いです。
アメリカでの出版は、2005年5月に始まって以降
順調に巻を重ねており、今年11月には第8作(巻
数では9巻目)「The Rose Princess」(D-薔薇姫)
が発売になる予定です。
その英語版「吸血鬼ハンターD」の翻訳者である
Kevin Leahyさんへのインタビューが、Sequential
Tartに10月22日付けで掲載されていました。
「The Man Who Brought Vampire Hunter D
to English Readers」
(英語読者に「吸血鬼ハンターD」をもたらした男)
インタビューに基づき、Leahyさんのプロフィール
と合わせて、「D」英語版出版の経緯をざっとまと
めてみますね。
ボストン出身のLeahyさんは、この17年間日本で
教師を勤めるかたわら、翻訳・通訳の仕事もこな
しているという方です。
「D」に初めて触れたのは、大学時代に友人から
アニメの1作目を見せられた時。英語字幕も吹替
もありませんでしたが、すぐに夢中になってしまい
ました。
数年後、JETプログラムによって、英語教師として
日本を訪れた時、たまたま入った古書店で、「D」
の小説を見つけてしまいます。内容を完全に理解
するほど日本語が上達するには数年を要してしま
いましたが、日本語勉強のテキストとしても、大い
に役立ったようです。
さらにその5年後、2作目のアニメ(英題「Vampire
Hunter D: Bloodlust」)公開時のイベントで、
Leahyさんは作者の菊地秀行さんと出会う機会が
ありました。
この作品はアメリカで先行上映される予定でした
から、質疑応答セッションの際、それとタイアップ
した形で、小説の英語版を出版する予定があるか
どうか、Leahyさんは菊地さんに訊ねます。
実は密かに、自身で手がけた翻訳を提供する期
待もあったようですが、その時は既に、翻訳の企
画が別に進行中だったようです。
けれど、その企画はどうやら頓挫し、今度は菊地
さんの方からLeahyさんに、彼の翻訳で出版社を
探してみようという申し出がありました。
そしてさらにさらに数年後(2005年ということです
ね)、やっとDark Horse PressとDigital Manga
からの出版が決まったわけです。
Leahyさんが「D」の英語翻訳を始めてから出版
にこぎつけるまでに、実に10年の歳月を必要とし
たのですね。「D」ファンとしては、素直にご苦労
様でした、と言いたいです。
Leahyさんが現在翻訳しているのは、日本では
第7作「D-北海魔行(上下巻)」と第8作「D-薔
薇姫」の間に刊行された、別巻扱いの短編集
「Dark Nocturne」(D-昏い夜想曲)。
加えて現時点で、続く四部作(蒼白き堕天使)と二
部作(D-双影の騎士)を翻訳する契約が済んでお
り、その作業には2年を費やすことになるだろう、
とのことです。
Leahyさんの翻訳ペースは、4か月で一冊くらい。
教師の仕事もありますので、翻訳に割けるのは
1日に数時間。その時間で英語で百行、日本語
で6ページの作業を日課としているそうです。
あ、それと天野喜孝さんの「D」イラストで一番の
お気に入りは、第2作「風立ちて"D"」の、日本
版だとP167にある、Dがコーヒーを飲んでいるも
のだとか。自分でコーヒーを飲むたびに思い出す
そうです。
アメリカでの小説「D」の成功については、90年代
から続いている、アニメ版の影響をLeahyさんも
認めています。
これから増えていくだろう、アニメ・マンガ化され
た日本のライトノベルの英語出版も、上手にそれ
ぞれのメディアで相互影響を及ぼしていけばいい
んですけど。
アニメ版が向こうではかなりの人気の、英語版が
先月発売された原作小説「フルメタル・パニック!」
はどうだったでしょうか。
こちらのレビューでは、「the novelization of
the manga series(マンガ作品の小説版)」なん
て書かれちゃってましたけど(逆ですー)。

