2006年12月18日

アメリカにおけるAMV(アニメ・ミュージック・ビデオ)の歴史と、現在の問題について


16日付けの記事でご紹介した、ポッドキャストAnime Pac
ific
のホストのお1人である、Alex Sorokopudさんからは、
さっそくメールをいただきました。
日本人のパートナーの方に、翻訳してもらったそうです。
第一回と続けて収録されたという、昨日アップされている
第二回では、僕が知りたいと思っていた、香港におけるア
ニメ海賊版市場の現状についても触れてくださっていると
のことで、出来るだけはやくチェックしたいです。
うちで紹介したおかげか、主に日本からのアクセス数が
飛躍的に増えたそうですから、新しいポッドキャストのス
タートに、わずかでもお役に立てたのなら嬉しいですね。


short_g.gif


さて今日の本題。
アメリカ・ニューヨーク州ビーコン発のポッドキャストGeek
Nights
の、12月13日更新分のテーマは、AMV(Anime
Music Videos)
でした。
AMVは、アニメ作品から取り込んだ映像を、それに合わせ
た音楽を重ねて再編集し、ミュージック・クリップ風に仕上
げたものですね。
同じようなアマチュア編集作品の、いわゆるMADビデオが
もう少し受け狙いというか、パロディ色が強いのに対して、
スタイリッシュに、つまり格好よく作る傾向がある、という解
説でいいでしょうか。
詳しくは、Wikipediaの方でよろしくです。


二台のビデオデッキをつなげて、ぷちぷちと編集していた
初期から時代を経て、今では画像取り込みや映像編集も、
パソコン上で簡単に行えるようになり、世に流通する作品
数も膨大なものになっています。
ちょうど「アニメ大好き!」さんがご紹介してくださっている
ように、YouTubeで「anime AMV」を検索すれば、5万
3000件近く見つかりますし、アニメコンベンションでもAMV
コンテストは、コスプレのそれと並んで大人気の一般参加プ
ログラムです。


AMVの大手配布サイトであるAnime Music Videos.Org
では、現在10万本以上の作品がチェック出来ます(全て見
るには、無料のメンバー登録が必要)。
登録してあるAMV製作者も、3万6864人という数。
どういったアニメ作品、アーティストの曲が素材として人気
があるかというと、以下がそのトップ10です。

MOST USED ANIME(最も使われたアニメ)

1. NARUTO...11285(8.38%)
2. ドラゴンボールZ...9880(7.33%)
3. 犬夜叉...7650(5.68%)
4. ファイナルファンタジー8...3716(2.76%)
5. ファイナルファンタジー7Advent Children
...3585(2.66%)
6. ファイナルファンタジー10...3521(2.61%)
7. 鋼の錬金術師...3431(2.55%)
8. るろうに剣心...3388(2.52%)
9. 新世紀エヴァンゲリオン...3330(2.47%)
10. 美少女戦士セーラームーン...3191(2.37%)

MOST USED MUSICAL ARTISTS(最も使われた音楽アー
ティスト)

1. Linkin Park(5080)
2. Evanescence(1861)
3. System of a Down(1399)
4. Disturbed(1254)
5. Nightwish(880)
6. Korn(863)
7. Metallica(801)
8. Green Day(691)
9. Hoobastank(687)
10. Rammstein(639)


short_g.gif


GeekNightsのホストであるRymさんは、以前述べたように
ニューヨーク州ローチェスターのアニメクラブRIT Anime
Club
の会長をかつて務めていて、その仕事のひとつとして、
アニメ作品の前に上映する良作のAMVを(それも参加者を
集めるための企画のひとつ)、毎回探していたんですね。
ところが、年々作られるAMVの数は増えていくのに、良い作
品は反比例して、どんどんと少なくなっていく。
これは何故だろうという疑問を解決するために、1989年と
いう、アメリカのアニメファンダムにおける、AMV黎明期か
ら活動を続けているエキスパート、Jeff Tatarek ジェフ・タ
タレックさんをゲストに招き、色々語ってみよう、というのが
今回のエピソードの主旨になります。
ジェフさんのAnime Music Videos.Orgの登録プロフィ
ール・ページ
からは、ジェフさんが過去に手がけたAMVの
一部もダウンロード出来ます。


「AMVの黄金期は?」と訊かれて、ジェフさんは1989年から
93年あるいは94年頃、と答えます。
その頃は、ビデオテープからビデオテープにダビングを重ね
て作るしか方法が無かったわけですが、それだけの手間を費
やすためには、かなりの技術と熱心さ、そして執念が必要と
され、結果出来上がるAMVの作品的クオリティにも、高いもの
があった。
一方現在では、手間という面では楽になったにもかかわらず、
その分の作業を作品的クオリティ向上に振り向けることなく、
お手軽に作れた作品をそのまま公開して満足しているだけだ
と、ジェフさんは嘆きます。
「great power comes great responsibility」
(大きな力には、それだけの責任が伴う)ということを理解し
ていないと。使える技術が増えたのなら、それを作品に注ぎ
込まないのはクリエイターとして失格だというのですね。
その思いの裏には、自分達があれだけ苦労した90年代初期
に今のテクノロジーがあったなら、もっと優れた作品が生み
出せた筈なのに、という気持ちもあるでしょう。


では、そういったお手軽に作ってしまったAMVがあふれてし
まった今、優れた作品は本当に減ってしまったのでしょうか。
実際に目にすることが出来なくなってしまったと強調する
Rymさんは、その原因が、コンベンションのAMVコンテスト
にあるのではないかと推察します。
え? でも、さっきコンベンションのAMVコンテストは盛況で
大人気だといいましたよね?
Rymさんの解説はこうです。
ひとつは、コンテストに応募される作品があまりに多く、また
主催者側もその全てを上映しようとするために、優れた作品
がその山の中に埋もれてしまうのではないか。
もうひとつの、そしてメインの理由は、多くのコンベンションが、
一度賞を得た作品の応募を禁止しているため、賞を得るよ
うな優れた作品は、賞を得た時点で、一般への露出が終わっ
てしまうからではないか、ということですね。
それに加えて、優れたAMVを作る人は、評価の場として、コン
テストのみを対象にするようになり、それ以外での露出を嫌う
ことが、その傾向に拍車をかけているのではないかと。
確かに、コンテストの審査の際に、「あ、ネットでよく見る作品
だね」と思われてしまっては、新鮮さとそれに伴う驚きという
点で不利になる、と考えるのはわからなくもありません。
なので逆に、「過去に賞を得た作品だけ参加出来るコンテス
ト」があれば面白いかも、とRymさんは提案し、ジェフさんも
賛成します。


この推察がどこまで正しいのか、僕に確かめる術はありませ
んけれど、ともあれ今回は、世代の違うGeekNightsのホスト
2人とジェフさんの(RymさんとScottさんは1982年生まれ。
ジェフさんがAMVを作り始めた時は、まだ七才)、同じテーマ
をめぐる会話が、とても勉強になったエピソードでもありました。
posted by mikikazu at 09:25 | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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