「素晴らしいね。じゃあ、日本のどんなところが気に入
ったのかな」
(略)
「古い日本と新しい日本のコントラストかしら。そうね…
…、相撲と狂言……、それと、新幹線とアニメみたいに」
(P63)
というわけで飛行機も落ちず(笑)、無事に帰ってきました。
今回の帰省の移動中にずっと読んでいたのが、西梅田の
ジュンク堂の洋書コーナーで目に入った、イギリス人作家
Susan Barkerスーザン・バーカーさんの小説「Sayonara
Bar」です。
イギリス本国でのハードカバー版の出版は昨年2月頃のよ
うですが、僕が購入したのは、今年になって発売されたペ
ーパーバック版です。
後者の表紙を見てもらえれば、僕の目を引いた理由はわ
かると思います。大友克洋(江口寿史?)風のイラストを
描いているのは、Kanako Damerum&Yuzuru Takaskiさん
というクレジットになっていますね。
東京とロンドンに住まいを分けて、非日本語圏を対象に活
動されている姉妹のユニット、「Manga Media」さん、との
ことです。
「Manga Media」公式サイト
http://www.manga-media.com/
インタビュー記事
http://www.creativebehavior.com/index.php?PID=166
もちろん、興味を引いたのは表紙だけではなく、タイトルか
ら想像出来るように、この小説は日本の、それも僕が現在
住んでいる大阪を舞台にしていたんですね。
タイトルの「Sayonara Bar」は、大阪・心斎橋にある、外国人
ホステスバーで、主人公の1人Maryメアリーは、イギリス出
身のホステスです。
彼女に加えて、京大をドロップアウトし、「Sayonara Bar」で
コックとして働く19歳のWatanabe、Daiwa Trading(大和実業
?) に勤めるサラリーマンのMr Satoが主人公ですね。
それぞれの名前が冠された章では、各人の主観による一人
称の記述がなされ、物語が進むにつれ、3人の視点が重なっ
ていく構成になっている、と思います。まだ全体(430ページ)
の半分しか読んでいないので、断言は出来ませんが。
実際に現地に住んでいる者の目からしても、この小説の大
阪の記述は、そのディテールにおいて正確で、人物描写も
含めて、よくある「こんなの日本じゃない。西洋視点からの、
こうあって欲しい幻想のエキゾチック・ジャパンだ」というよ
うな気持ちには、ほとんどなりません。「お客さん」視点じゃ
ない、とも言えます。
それもその筈、著者のスーザン・バーカーさんは、この小説
を書く前に2年間、日本の中学校で、英語教師として教壇
に立っていた経験があるそうなんですね。
その後イギリスに戻って、マンチェスター大学のMA(Master
of Arts:文学修士号)課程で小説を学び、この「Sayonara
Bar」でデビューを果たした、ということです。
日本にいる頃から、小説を書く準備をしていたそうですから
(授業にも熱心だったことを祈ります)、かなり直接のリサー
チもしていたんでしょうね。
ただもちろん、僕は日本人で、かつ大阪に住んでいるから、
作中で描かれる梅田・難波・心斎橋・アメリカ村・十三とい
った街の雰囲気は自分で補完出来ますし、ローソンやサー
クルKやユニクロやビッグエコー(カラオケ)のことも、解説
無しに理解出来ますが、外国人の、それこそイギリス人が
読んで、どこまで情景を想像出来るのかは、わかりません。
ストーリーの種類としては、一応ハードボイルド……風とい
っていいのかな? ちょっとオカルト風味も入っていて、今
後どう転ぶか予断を許しませんが。
ラストは、メアリー嬢が大阪ヤクザを相手に両手拳銃で大
立ち回り……くらい派手になって欲しいかも(笑)。
いわゆるオタク風味というのは、まだあんまりありませんけ
れど、特にWatanabeの描写に、彼女の教え子だった日本の
若者とその文化が影響を与えてもいるそうですから、三次元
を超越した四次元のハイパースペースから他人を見通せる
――彼の幻想の中では――Watanabe君の活躍(?)にも期
待なんでしょうか。
とりあえず、後半も読み進めます。
著者スーザン・バーカーさんへのインタビュー記事
ヨーロッパ版TIMEの書評記事
あ、上の記事にもありますが、当初の予定だと小説と
舞台のバーの名前は「Tsunami Bar」だったそうですが、
2004年12月にインド洋で発生し、各アジア地域を襲った
津波の影響で、「Sayonara Bar」になった、とのことです。

