2011年03月08日

イタリア・Rai Gulpで3月12〜26日に、「Max Heart 2」「Splash☆Star」「5」のプリキュア映画を三週連続放映

かねてより、欧州では唯一「プリキュア」シリーズの放送展開が活発なイタリアですが、今月も大きな動きが発表されています。
イタリアでは現在、国営放送局RAI(イタリア放送協会)の地上波チャンネルであるRai Due(公式サイト)でシリーズ5作目「Yes!プリキュア5GoGo!」が毎週土曜日と日曜日に、そしてデジタル/衛星チャンネルであるRai Gulp(公式サイト)で、2作目「ふたりはプリキュア Max Heart」と4作目「Yes!プリキュア5」が月〜日曜日の毎日、それぞれ放送されています。
つまり「プリキュア」シリーズの3作品が、地上波と衛星放送で同時に放送されているわけです。日本で例えるなら、NHKの教育テレビとBSチャンネルの両方で、シリーズの新・旧作を展開しているようなものですね。

さらにその衛星チャンネルのRai Gulpでは今月3週間にわたって、劇場版「プリキュア」作品の連続放映が予定されています。放映されるのは、以下の3作品。

3月12日土曜日・午後7時半
映画「ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち」
日本公式サイト

3月19日土曜日・午後7時半
映画「ふたりはプリキュア Splash☆Star チクタク危機一髪!」
日本公式サイト

3月26日土曜日・午後7時半
映画「Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」
日本公式サイト

これらの作品は、以前に地上波のRai Dueでも昨年10〜11月に放送されたのですが、その時は朝の7時台でした。今回は土曜の夜7時半というゴールデンタイムに(イタリアでどう呼ぶのかは知りませんけど)堂々と放送してくれるわけで、さらに見てくれる人も増えるのではと期待します。
おそらくはいずれ、「GoGo!」の劇場版「Yes!プリキュア5 GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪」(日本公式サイト)も放送してくれるのでしょう、きっと。

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ところで先日の記事でもお伝えしたように、フランスでは1月26日にパリで、第7作「ハートキャッチプリキュア!」の劇場版である映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」(日本公式サイト)のプレミア上映イベントが行われました。
けれどフランスでは、プリキュアシリーズの放送はずっと行われていなくて、いきなり最新作「ハートキャッチ」、それもテレビシリーズの設定の理解を前提としている劇場版を見せられたパリの子供達にも、戸惑いが大きかったかもですよね。
映画の舞台であるパリをプレミアの場所に選んだ意図は理解出来ますけれど、既にプリキュアシリーズがずっと放送されていて、それなりの認知が構築されている筈のイタリアでも上映してくれた方が盛り上がったのでは、と想像してしまいます。
「ハートキャッチ」はまだ直接知らなくても、今イタリアでテレビ放送している「Max Heart」や「5」シリーズのプリキュア達の仲間という理解は難しくないでしょうし、それこそパリにブロッサム&マリンが来てくれていたように、ローマかミラノにブラック&ホワイトやドリームに来てもらって、「私達の新しい仲間だよ!!」と紹介してもらえば、ずっとスムーズに受け入れてくれるかもしれないです。
パリでのプレミア上映が成功だったかどうかは、東映アニメーション・ヨーロッパ公式サイトでの「大成功」という言葉を信じていいのか迷うところですけど、プリキュアの視聴者が確実に存在しているイタリアでも、いずれはプリキュア映画が劇場で上映されるようになってもらいたいと思います。

2011年03月04日

フランス・パリでの映画「ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー…ですか!?」プレミア上映(1/26)の模様

ずっと探していた情報ですけれど、さる1月26日午後に、フランスの首都パリ、シャンゼリゼ通りのシアターElysées Biarritzで開催された、映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」(日本公式サイト)の、ヨーロッパ地域プレミア上映会の模様を、アジア文化の話題を専門に配信するインターネット放送局Nolife(公式サイト)内の、日本文化を伝える「Tôkyô Café」というコーナーが2月23日付けで伝えてくれていました。下のリンクから、4分10秒の動画へどうぞ。

Nolife-"Tôkyô Café"(2/23)
"146 - Projection du 9ème film de Pretty Cure à Paris"


・プレスリリース画像

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レポート動画のタイトルは、「9作目のプリキュア映画がパリで上映」くらいの意味だと思います。
上映決定については、当ブログ1月12日付け記事でも報告していましたが、その時の詳しい模様はあまり分からず、ずっと調べてはいたのですけれど、他でもない東映アニメーション・ヨーロッパ公式サイトの、日本での「DX3」映画公開を伝える2月28日付けの英語記事で、この「Tôkyô Café」動画へのリンクが紹介されていたので、自分は知ることが出来ました。
ちょっと変なのは、紹介されているのは英語サイトのみで、上映現地のフランス語側のサイトでは、ニュースになっていないことですね。

ともあれ動画を見ると、映画「ハートキャッチプリキュア!」が上映された劇場の様子がよくわかります。
リリースにも掲載されているように、劇場では日本と同じく、プリキュア達を応援するためのミラクルフラワーライトもきちんと配ってくれていて(レポーターさんは「マジックライト」と仰ってますが)、それなりに振ってくれている子もいるようには見えます。
また、ただ映画を上映しただけではなく、風船や大きなエッフェル塔のお菓子など、様々なデコレーションが施された別のフロアも用意され、楽しいイベントもたくさん行われたようです。
何よりも素晴らしいのは、わざわざ日本からキュアブロッサムとキュアマリンの2人も駆けつけてくれて、写真撮影など、パリの子供達とも直接交流が出来ていることですね。おそらくは生まれて初めてプリキュアに会った子供達の反応は、どうだったんでしょうか。

3分20秒辺りで登場するのは、フランスのアニメ雑誌Animeland(公式サイト)の編集長であるOlivier Fallaixさん。
Animeland公式サイトでも1月28日付け記事で、このイベントについて触れてはいたんですけれど、「行った」ということ以上のことは書いていないようでした。本誌の方では、もっと詳細なレポートが掲載されているのかもしれませんが。

そして、3分43秒辺りからは、フランス語版主題歌「Alright!ハートキャッチプリキュア!」の一部が流れます。今回の上映はフランス語吹替で行われたんですね。
つまり、フランス語吹替・主題歌制作にも、それなりの予算が投じられている筈ですから、このプレミアだけで終わるのではなく、今後の広い展開もそれなりに想定されているとは思うんですが、どうでしょう? 現時点ではなんの情報もありませんけど。
ちなみに、最後のキュアマリンのテンションがやや低めに見えるのは、レポーターさんに「えりかちゃん!!えりかちゃん!!」と呼びかけられて、「えっと今はキュアマリンなんだけど……」と、ちょっと反応に困ってしまったのかもと、個人的には勝手に想像してます(笑)。

ともあれフランスに限らず、プリキュアシリーズの海外での展開については、当ブログ及びTwitterで、定期的に追っかけていますので、またお伝えしますね。

2011年02月13日

イギリス・ロンドン在住の日本人マンガ家轡田千重 Kutsuwada Chieさんの注目作「Hagakure」「The Story of Lee」

昨年後半から今年にかけて、海外のグラフィックノベル書評界で注目を集めているのが、イギリス・ロンドン在住の日本人アーティスト/マンガ家である、轡田千重 Kutsuwada Chieさん(公式ブログ「Secret Garden」 )がマンガ制作を手がけられた2本の作品、「『葉隠』 Hagakure The Code of the Samurai (The Manga Edition)」(講談社インターナショナル)と、「The Story of Lee」第1巻(NBM Publishing)です。
脚色(「Hagakure」)とストーリー(「The Story of Lee」)は共に、英国出身で現在は日本・熊本在住という、轡田さんとは逆転した立場なのが面白い、Sean Michael Wilson ショーン・マイケル・ウィルソンさん(公式ブログ)が担当されています。
ショーンさんは、日本では青林工藝舎が出版しているマンガ雑誌「アックス(AX)」の英語版(Top Shelf Productions社サイト)の編集者でもありますね。

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日本の埼玉県出身の轡田千重さんは、2003年にロンドン芸術大学内カレッジのセントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインを卒業された後、さらに世界最高峰の美術大学院であるロンドン王立芸術学院(Royal College of Art)で学び、2005年の卒業後は、イギリスの現代美術シーンでの活躍を続ける一方、2006年春にはロンドンに拠点を置く日本人マンガ家/アーティスト・グループのUmisen-Yamasen(公式ブログ)での活動も開始されました。
轡田さんのお名前が広くイギリスのマンガシーンで注目されたのは、在英日本大使館が2007年から開催開始したマンガコンテスト「Manga Jiman(漫画自慢)」においてです。その2007年度の第1回大会において、轡田さんは「Moon Light」という作品で6位に入賞します(大使館公式ページの結果発表)。
また同年10月には、Constable & Robinson社(公式サイト)が出版しているマンガ・アンソロジーの「The Mammoth Book of Best New Manga」第2号において、同人誌作品を完結編として描き足した「King of a Miniature Garden」という作品を"Chi-Tan"名義で掲載し、商業デビューを飾ります。
その翌2008年11月には、ウィリアム・シェイクスピアの有名戯曲をマンガ化するシリーズ"Manga Shakespeare"の中の一編、「As You Like It(お気に召すまま)」(出版社 SelfMadeHero公式サイト)を手がけます。轡田さんご自身もお気に入りというこの作品によって、その名前を知った方も日本では多いように思いますね。
そして2010年になり、轡田さんがマンガ制作を担当された作品が、2作相次いで出版されることになりました。

「『葉隠』 Hagakure The Code of the Samurai (The Manga Edition)」
   出版社/講談社インターナショナル−公式サイト


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「Hagakure」は、山本常朝による、武士の心得を説いた江戸時代の著書「葉隠」のマンガ形式によるアダプテーションですね。「武士道」の解説という役割になるでしょうか。
時に凄惨な内容を、時代背景の解説を丁寧にふまえて、ビビッドかつ繊細に描いていると評価がとても高いようです。
出版社は日本の講談社インターナショナルで、現在は英語版のみが出版されているのですが、世界各地のオンラインストアで流通していますね。アメリカのブックフェアの講談社インターナショナルのブースでも、大きくフィーチャーされていました。
ショーンさんのインタビューによると売り上げは好調であり、発売後3ヵ月で増刷が決定したそうです。


「The Story of Lee」第1巻
  出版社/NBM Publishing−公式サイト


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(画像掲載は両作品共に轡田さんのご許可をいただきました)

もう1冊の「The Story of Lee」は、現代の香港に住む中国人女性Leeとイギリス人男性Mattとの出会いと、それによって変化を始めるLeeの家族関係の変化を描くのが、第1巻の主な展開で、物語は舞台を移してさらに続いていくようです。
出版社はアメリカ・ニューヨークに拠点を置くNBM Publishing。公式ホームページ内に、作者お2人の共同ブログも用意されていて、最新情報を直接伝えてくれています。
その2010年12月25日付け記事では、ロンドンで行われた「The Story of Lee」(を含む)の展示会の模様も、写真入りで掲載されていますね。盛況だった模様です。

これら轡田さんの3作品「As You Like It」「Hagakure」「The Story of Lee」第1巻、および「The Mammoth Book of Best New Manga」シリーズは、どれも日本国内でも日本Amazon経由で購入可能になっています。その他紀伊國屋書店など、洋書の扱いがある書店でも、取り寄せが可能な場合があるようですね。

・日本Amazonへのリンク
As You Like it (Manga Shakespeare)
(英文版) 漫画 『葉隠』 - Hagakure: The Code of the Samurai (The Manga Edition)
The Story of Lee 1
The Mammoth Book of Best New Manga Vol.2
The Mammoth Book of Best New Manga Vol.3

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轡田さんの英国での活動で特筆すべきなのは、作品制作だけではなく、多くの一般の方が参加出来る、マンガに関連したワークショップも広く行っていることです。マンガの描き方を子供達に教えたり、マンガを応用した楽しい芸術への関わり方を伝えようとされているんですね。
その中のひとつ、2009年11月14日にロンドンのウィグモアホールで開催された、「若者の日『音楽とマンガ(MUSIC 'N' MANGA)』」については、幸いなことに日本語での記事が紹介されているので、ぜひ目を通してみてください。轡田さんの真摯な活動の一端が理解出来ると思います。

社団法人全日本ピアノ指導者協会サイト内
「ロンドンレポート〜街と人と音楽と」
ウィグモアホールの教育プログラム 第4回 音楽とマンガ

今月もこれから轡田さんは、Umisen-Yamasenのお仲間であるInkoさんとロンドンのクロイドン区の図書館で、19・22・26日の三回、10〜17歳を対象にしたマンガ・ワークショップを開催されるそうです(公式ブログ告知記事)。このワークショップから、新たなイギリス人マンガ家が生まれるかもしれませんね。
また日本語記事では、そのInkoさんへのインタビュー記事もありました。「ロンドン地下鉄の駅を擬人化」という轡田さんとの新しい共同プログラムについても言及があって、とても興味深いですね。

Japan Update Weekly-イギリスに暮らす「マンガ家Inkoさん」

轡田さんは今後もたくさんの作品・活動を予定されているそうで、イギリスの地でのご活躍は、当ブログでもまたレポートしていきたいと思っています。よろしくお願いします!!
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2011年02月06日

TOKYOPOPドイツの週間売り上げランキングで、姫川明さんの「ゼルダの伝説」シリーズが10週連続1位を達成!!

Twitterの方では昨夜のうちにご報告しておきましたけれど、あらためて情報を整理しておきますね。
姫川明さん(公式サイト)の「ゼルダの伝説」シリーズ(既刊10巻 小学館)は、百万部を突破した日本だけでなく海外でも評価を得ていて、現在各国語版が出版進行中なのですけれど、その内の一国であるドイツからは、特に高い人気が伝えられています。
姫川さんのサイトのニュース欄でもご報告されていますが、昨年10月開催されたフランクフルトブックフェアでは、「時のオカリナ」上巻が、ソンダーマン読者賞マンガ部門でベストマンガ賞を受賞しています。
投票によって選ばれるこの賞の、日本マンガでのライバルは世界的人気作「NARUTO」で、それを打ち破っての堂々の受賞は、彼の地でも注目されていました(フェア公式サイトでの受賞告知ページ)。
また2010年7月30〜8月1日に行われたドイツ最大のアニメコンベンションAnimagiC(公式サイト)にも、姫川さんのお2人はゲストとして招待され、現地ファン・メディアの大歓迎を受けたそうです。


ドイツでの姫川明さんの「ゼルダの伝説」シリーズ出版元は、北米のマンガ出版社であるTOKYOPOPのドイツ支社、TOKYOPOPドイツ(公式サイト)。同じ姫川さんの「556ラボ」「ぼくらの翼 国境なき路上の子供たち」のドイツ語版翻訳出版も手がけています。
他の日本マンガでは、「Bleach」「バクマン。」「D. Gray-Man」といった、日本では売れ筋の少年ジャンプ作品も出版している会社です。
そのTOKYOPOPドイツの公式フォーラムでは毎週、"TOKYOPOP-Hits 2011"と題したスレッドで、自社の週間売り上げ作品TOP20ランキングが発表されているのですが、その最新版である2011年度第四週の1位は、姫川明さんの「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」でした。
これは、「神々のトライフォース」の先週初登場に続く連続1位というだけではなく、2010年度第47週の「4つの剣+」下巻の初登場1位から、「ふしぎのぼうし」を経て続いている、姫川さんの「ゼルダの伝説」シリーズによる、堂々10連続首位独占という快挙になるわけです!!
まとめてみると、

1.2010年度第47週 第1位 「ゼルダの伝説 4つの剣+」下巻
(初登場)

2.2010年度第48週 第1位 「ゼルダの伝説 4つの剣+」下巻
3.2010年度第49週 第1位 「ゼルダの伝説 4つの剣+」下巻
4.2010年度第50週 第1位 「ゼルダの伝説 4つの剣+」下巻
5.2010年度第51週 第1位 「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」
(初登場)

6.2010年度第52週 第1位 「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」
7.2011年度第01週 第1位 「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」
8.2011年度第02週 第1位 「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」
9.2011年度第03週 第1位 「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」
(初登場)

10.2012年度第04週 第1位 「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」

という1位独占が昨年からずっと続いている状態になっていて、「神々のトライフォース」の人気も続きそうですし、2月10日にはさらにシリーズ第10作「夢幻の砂時計」も発売されますから、この記録はまだまだ続きそうです。おめでとうございます!!


これらドイツ語版「ゼルダの伝説」の中身の一部は、TOKYOPOPドイツ公式サイト内に用意されたツール"MANGA PLAYER"で試し読みすることが出来ます。
"MANGA PLAYER STARTEN"の画像をクリックすれば、プレイヤーが起動しますので、左上のメニューバーから、"The Legend of Zelda"の各シリーズを選択してください。"anzeigen"(読む)をクリックすると、ページが表示されます。後は下部の"weiter"(次へ)をクリックすれば、ページが進んでいけます。
現在試し読み出来るのは、「時のオカリナ」「ふしぎのぼうし」「神々のトライフォース」「夢幻の砂時計」、そして他の姫川明さん作品「556ラボ」です。

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・ドイツ語版「ゼルダの伝説 ふしぎの帽子」


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・ドイツ語版「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」


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・ドイツ語版「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」


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このTOKYOPOPドイツでの、姫川さんの「ゼルダ」シリーズのセールス好調は第1巻からずっと続いているもので、売り上げトップになるのも、珍しいことではありません。
ドイツでの出版スケジュールは、

第1巻「時のオカリナ」上        (2009年8月3日)
第2巻「時のオカリナ」下        (2009年9月21日)
第3巻「ムジュラの仮面」        (2009年11月25日)
第4巻「ふしぎの木の実 大地の章」   (2010年1月28日)
第5巻「ふしぎの木の実 時空の章」   (2010年3月19日)
第6巻「4つの剣+」上         (2010年10月21日)
第7巻「4つの剣+」下         (2010年11月18日)
第8巻「ふしぎのぼうし」        (2010年12月16日)
第9巻「神々のトライフォース」     (2011年1月13日)
第10巻「夢幻の砂時計」         (2011年2月10日)

というものになっているのですけど、これらの作品がTOKYOPOPドイツの週間売り上げランキングで首位を獲得した週を並べてみると、

2009年第32〜37週      第1巻「時のオカリナ」上
2009年第38〜47週      第2巻「時のオカリナ」下
2009年第48〜53週      第3巻「ムジュラの仮面」
2009年第54週        第1巻「時のオカリナ」上
2010年第01〜02週      第3巻「ムジュラの仮面」
2010年第04〜7・10週     第4巻「ふしぎの木の実 大地の章」
2010年第12〜15週      第5巻「ふしぎの木の実 時空の章」
2010年第47〜50週       第7巻「4つの剣+」下
2010年第51〜2011年第02週  第8巻「ふしぎのぼうし」
2011年第03〜04週      第9巻「神々のトライフォース」

という結果になっていて、実は連続週記録ということなら、2009年第32週1位の「時のオカリナ」上巻から、2010年第2週1位の「ムジュラの仮面」まで、姫川さんの「ゼルダ」シリーズは既に24週連続1位という記録も達成済なんですね。1年が50週程度として、TOKYOPOPドイツというひとつのマンガ出版社の売り上げトップの座を、1年間のほぼ半分、「ゼルダ」が連続して占めていたことになります。
第6巻「4つの剣+」上巻だけは1位を獲得していませんが、この時期の首位は、ドイツではさらに絶大な人気を誇る、種村有菜さんの「桜姫華伝」第4巻が独走しており、「4つの剣+」上巻は第42週から46週までの第2位が最上位でした。
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2011年01月14日

米国図書館協会部会のヤングアダルト図書館サービス協会による、2011年度10代向け推薦グラフィックノベルTOP10に「土星マンション」(岩岡ヒサエ)

フォローし始めてから、今年で5年目の話題ですね。
米国図書館協会(ALA-American Library Association 公式サイト)の部会であるヤングアダルト図書館サービス協会(YALSA-Young Adult Library Services Association 公式サイト)は毎年この時期に、

"Great Graphic Novels for Teens"
(10代にふさわしいグラフィックノベル推薦リスト)

を選出しています。10代というのは12〜18歳で、日本でいう中学・高校生くらいが対象と考えていいと思います。
リスト作成が始まった2007年度以降、そのTOP10には毎年日本マンガが含まれていて、これまでのラインナップは、

2007年度
「DEATH NOTE」第1〜3巻
 (作・大場つぐみ/画・小畑健 VIZ Media)

2008年度
「いばらの王」第1〜2巻
 (岩原祐二 TOKYOPOP)
「放課後保健室」第1〜5巻
 (水城せとな Go Comi!)
「エマ」第1〜5巻
 (森薫 DC Comics / CMX)

2009年度
「砂時計」第1〜3巻
 (芦原妃名子 VIZ Media)
「リアル」第1〜2巻
 (井上雄彦 VIZ Media)
「うずまき」第1巻
 (伊藤潤二 VIZ Media)

2010年度
「海獣の子供」第1巻
 (五十嵐大介 VIZ Media)
「PLUTO」第1〜3巻
 (手塚治虫/浦沢直樹/長崎尚志 VIZ Media)
「大奥」第1巻
 (よしながふみ VIZ Media)


というものになっています。
初年度に、いずれアメリカの大統領まで殺してしまう「DEATH NOTE」をいきなり選んでくれる辺り、太っ腹な「見る目のある」リストだと思ったりしました。
ここ数年はずっと10作品中3作品ですから、図書館に置くべき本としての、manga作品への高評価がわかります。


今年2011年度も、エントリーされた作品から、選出委員会が選んだ推薦リストが先日発表され、今年のTOP10には、

「土星マンション」第1巻
 (岩岡ヒサエ VIZ Media)
 ・作者公式サイト

1作のみの、日本マンガ選出となりました。
北米では「土星マンション」は、サンフランシスコに本社を置くVIZ Media(公式サイト)から英語翻訳出版されていて、現在までに第1巻第2巻が刊行済みで、第3巻も5月17日に発売予定です。
また、VIZ Mediaがオンライン・マガジンとして展開している英語版「IKKI」にも掲載されていて、日本からでも英語版の内容を一部読むことが出来ます。
「IKKI」掲載作品としては、昨年の「海獣の子供」(五十嵐大介)に続くものですね。 
これまで、北米でのセールスで特に目立った動きがあった作品ではありませんが、今回の選出で、特に図書館向けの売り上げが増える可能性はあると思います。ともあれ、おめでとうございました!


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推薦リスト63作品の、TOP10以外に含まれている日本マンガは、

「クロスゲーム」第1巻(あだち充 VIZ Media)
「ARISA」第1巻(安藤なつみ Del Rey)
「図書館戦争」第1巻(有川浩/弓きいろ VIZ Media)
「魔王 JUVENILE REMIX」第1巻(伊坂幸太郎/大須賀めぐみ VIZ Media)
「ぼくらの」第1巻(鬼頭莫宏 VIZ Media)
「夏目友人帳」第1巻(緑川ゆき VIZ Media)
「BIOMEGA」第1巻(弐瓶勉 VIZ Media)
「さらい屋五葉」第1巻(オトナツメ VIZ Media)
「not simple」(オトナツメ VIZ Media)
「放課後のカリスマ」第1巻(スエカネクミコ VIZ Media)
「イタズラなkiss」第1巻(多田かおる Digital Manga Publishing)
「70億の針」第1巻(多田乃伸明 Vertical)
「黒執事」第1巻(枢やな Yen Press)
「ふたつのスピカ」第1巻(柳沼行 Vertical)

という14作品のラインナップです。
日本人作者でないマンガ作品としては、

「Destiny's Hand Omnibus」
(Nunzio DeFillipis & Christina Weir Seven Seas)
「Time and Again」
(JiUn Yun Yen Press)

も加わることになります。
ここでは、北米マンガ市場でシェア第2位の地位にあった筈のTOKYOPOP作品が、ついに姿を消してしまっていますね。
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2011年01月12日

フランス・パリで映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」のヨーロッパプレミア上映が1月26日に開催

日本での劇場公開時にも話題にされていましたけれど、映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」(日本公式サイト)の、物語の舞台でもあるフランス・パリでのヨーロッパ地域プレミア上映日が、1月26日に決定したようです。

プレスリリース

東映アニメーションヨーロッパ公式サイト内
 映画「ハートキャッチプリキュア」ページ


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1月10日付けで告知された、プレミア上映イベント告知によると、日時は1月26日の午後3〜5時、場所はパリ・シャンゼリゼ通りのシアターElysées Biarritz。ハリウッド映画などのプレミアも行われている場所のようですね。
観客の対象年齢は、日本と同じくらいの5歳以上ということになっており、上記の告知のように、日本での劇場公開時と同じく、プリキュアを応援するためのミラクルフラワーライトも配ってくれるようです。
ただしこの映画、恒例だった本編開始前の、ライトの使い方説明のコーナーが省かれてしまったこともあり、どういうタイミングでライトを使ってプリキュア達を応援すればいいのか分かりづらかった、とも不評でしたので、その辺りはパリの子供達が戸惑わないように、現地のスタッフさん達がきちんと説明してくれるといいですね。
映画の上映だけでなく、内容に合わせてファッション・ショーなども同時に行われるようですから、楽しいイベントになりそうです。
それこそ、TV本編と同じく挿入歌「HEART GOES ON」が流れたりしたら、知っている人は大盛り上がりなんですけど(笑)。


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いま現在ヨーロッパで放送されているプリキュアシリーズは、イギリスの女の子向け衛星チャンネルPopGirlでの1作目「ふたりはプリキュア」、イタリアの国営放送地上波Rai Dueでの5作目「Yes!プリキュア5GoGo!」、同衛星チャンネルRai Gulpでの3作目「ふたりはプリキュア Splash☆Star」になります。
残念ながらこれまでのシリーズが、フランスで放送・公開されたことはなく、フランスでのプリキュアの知名度というと、正直よくわからないのですが、この映画のプレミア上映がきっかけになって、広まっていけばいいと願っています。


あ、映画の公開記念として企画された、JALによる「花の都パリ6・7・8日間」ツアーですが、日本を20日に発つ8日間のコースをチョイスすれば、26日のプレミア上映は見られるかもしれません。
どうせなら、プレミアとセットにしたツアーにしていれば、それ目当てのお客さんは参加しやすかったんでしょうけど。ゲストも登場するとは記載してあるので、ひょっとして日本からも誰か行くんでしょうか? 

2011年01月11日

北米の百合振興団体Yuricon代表エリカ・フリードマンさんからの、マンガ翻訳出版を目指す人達へのアドバイス

2000年から活動を続けている、北米の百合振興団体Yuricon及び、百合マンガ専門出版社ALC Publishing(公式サイト)の代表であるErica Friedman エリカ・フリードマンさんは、彼女の個人ブログOkazuにおいて、百合をテーマとしたマンガやアニメ、ライトノベル作品のレビューを精力的に執筆しています。
最新のレビューは、「まんがの作り方」第4巻(平尾アウリ 徳間書店)で、
Story - Zzzzz
Character - Grrrr
Yuri - Ugh
Overall - Whatever
という感じの、申し訳ないですが「酷評」でした。


1月9日に掲載された"Licensing Manga - the Miracle, the Message, the Moral of the Story"と題された記事は、いつもと少し趣きを変えて、アメリカでマンガの翻訳出版を夢見ている人達への、先輩からのアドバイス、という内容のエッセイでした。
Yuriconの立ち上げについての、当事者からの回想でもあるので、日本の方々にYuriconとエリカさんについて紹介する良い機会と思い、エリカさんの許可を得て、その日本語訳を掲載しておきます。


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Licensing Manga - the Miracle, the Message, the Moral of the Story
(マンガをライセンスするには − 奇跡、メッセージ、教訓)

時折私は、どのようにマンガをライセンスして、出版し始めるようになったかについて質問してくるメールをいただくことがあります。
つい最近も、ある常連の読者さんから微笑ましいメールをいただいて、簡単にいうと、「どれくらい難しくて複雑なんですか? 他の人にも薦めます?」という内容でした。
「日曜版」としてその質問に、このOkazuブログでお答えしてみたいと思う理由は、私達はコミュニケーションの自由における前例のない時代にあって、版もまた、急速な勢いで大きな変化を経ようとしているからです。

それをふまえて、話を始めてみますね。

10年と少し前頃に私は、現在ほとんどの人に「百合」と呼ばれているものに、興味を抱き始めるようになりました。
UseNETには、様々な作品における百合について語り合っているグループがいくつか存在していて、百合について広く会話がされているような場所もありました。けれどそれらのほとんどは、二つの種類に分けられました。レズビアン・ポルノか、あり得ないカップリング(つまり、まったくの異性愛者である女の子が、他の女の子にもたれかかっている、目を惹くようなイラストが1枚あるだけで、2人はカップルだといきなり決め付けられてしまうような!)です。
さらにいくつかのグループは、現実のレズビアン達が関心を寄せてくることに、はっきりとした敵意を向けていました。
だから私は、百合を好きな人なら、誰でも歓迎するようなグループを作ろうと決意したのです。

そしてその数年後、ある考えを思いつきました。ニューヨーク市のレズビアン・バーで、バレンタイン・デイを祝うイベントを開催しよう、というものです。
映画「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」を上映して、オタクっぽい趣味をみんなでまったり楽しもうという趣旨ですね。結局それが、初めて実際に開催されたYuriconのイベントになりました。今でも、その時の私をなにが衝き動かしていたのか、全くわかりません。
そのお店Meow Mixに足を踏み入れる時まで、私はそれまでの人生でレズビアン・バーに入ったことはありませんでしたし、バーそのものにも、数度しか行ったことがありませんでした。
私自身はイベントを主催した経験はなかったのですけれど、自己満足に終わっても構いませんでしたし、私の家族が積極的にボランティア活動に参加していたこともあって、過去たくさんのイベント運営にしっかり関わってはいました。
Meow Mixを選んだのは、以前に「ジーナ」(95〜01年に放送されたファンタジーTVドラマ:訳注)のイベントも開催していて、また違う種類のオタクっぽいイベントもクールかも、と考えたからですね。

そして、奇跡が起きたのです。

2人の日本人女性がそのレズビアン・バーに入ってきました。その内の1人が、情報サイトTime Out New Yorkでの告知をたまたま見つけて、友達と来ることに決めたのです。
その人物が、高嶋リカさんだったのでした。リカさんと私はこれを書いている2日前の晩にも、なんて奇跡だったんだろうとお互いを不思議な気持ちで見つめ合ったところです。
私達は友達になり、ある時、彼女のマンガ(「リカってかんじ?!」)の英語出版について申し出てみました。それが私にとって最初のライセンスになったのです。

リカさんと私は日本のコミケに行って、そこでとてもお気に入りのマンガ家さんと会い、お礼を述べることが出来ました。それから彼女を私が開催しているイベントにも招待し、結果として蓼野絵理子さんの作品集「WORKS」を出版することになりました。それが私にとって2番目のライセンスです。

おわかりになるように-私が百合マンガ出版においてやってきたこと全てが、奇跡から始まっているのです。それがあなたにも起こるように願うのはちょっと変ではありますが、話はまだ続きます。

私はYuriconを、ソーシャルメディアがそう名付けられる以前に、その中において立ち上げました。UseNET、メーリングリスト、Yahooグループ。
やがて徐々にですが、コミケに参加しながら、私はお気に入りとなる、また別のサークルを見つけるようになり、メールで連絡を取って、数年前に描いたような古い作品を出版出来ないかどうか訊ねてみました。
それには理由があって、ほとんどのマンガ家は古い作品のことは気に留めなくるし、そういった作品は誰からもライセンスされたり、思い出されたりすることもないからです。新しい作品は大事だけれども、8年前の作品なら……ああ、好きにしていいよ、という風に。

私は何をすべきか全くわからぬまま、ライセンスや出版をしていくようになったのです。
まるで知識がなかった出版とライセンス双方の面で、私は厳しい学習局面を経てきました(特に出版については、当初「同人誌」を出版するコンセプトをアメリカで再構築しようとしていた計画が、突然実際の「本」を出版することに変わっていきましたから)。

この種のことにおいて、私は最悪のお手本でしょうけれど、私はいつもこうなんです。やり方など知らないうちに事を始めて、それからやり方自体を新しく考え出していく。他人に訊きたくないのではなく、そもそも他の人達と同じことをやっているわけではないのですから。そして全て理解する頃には、ルール自体を変えてしまうのです。なぜなら同じことを何度も何度も繰り返すのは嫌いだからです。

けれど今は、私が変えてしまえるようになるのよりも早く、ルール自体が変化していっています。だからここでメッセージがあります。
「訊いて失うものは何もない」のです。
たくさんのマンガ家さんがTwitterで発言していますし、ブログも持っていれば、メールでも連絡が取れます。大好きなマンガ家に連絡をして、作品を出版出来るかどうか訊ねることで失うものは、「何もない」のです。
起こり得る一番最悪のことは、返事がもらえなかったり、もらえても断られてしまうことです。そうすれば落ち込んでもしまうでしょうけれど、気を取り直して、また進んでいけばいいのです。

奇跡は助けになりますけれど、自分自身で奇跡を作り出していくことも出来ます。
イベントに参加し……いえ、開催しましょう。描いて書いて、どうやって本が出版されるのかを学び、ライセンシングについて勉強し、インターンとして企業に赴き、コミケに行って、マンガ家さんに自分を紹介しなさい。彼らとコミュニケートするのです。関係を築くのです。人々と会話をしなさい。あなたに力を貸してくれる人が、きっとたくさん必要になります。
私も今やっていることを、自分だけでやっているわけではないのです。私には、助力してくれる最高に素晴らしい人達がいてくれるのです。リカさんはもちろんですが、Erin S.、Mari Morimotoさん, Komatsuさん、そしてAnaのような人々、マンガ家ご自身達、私のスタッフや編集者さん達、果てのない様々な私の話に耳を傾けなくてはならない友人達、それから当然、私のパートナー、世界中の貢献してくれるみなさん。
私がやってきたどんなことも、ただひとつさえ、私1人で成し遂げたものではありません。
全て「私達みんな」で成し遂げてきたことなのです。共に力を合わせて。

ALC Publishingは小さな小さな出版社だということを考えてみてください。私達はけっして大企業ではありませんし、ほんのわずかの予算で働かなくてはならないこともしばしばです。このストーリーはVIZ MediaやTOKYOPOPのお話ではありません。あなた自身が主人公になれるストーリーなのです。

マンガをライセンスするのは難しくて複雑ですか? その通りです。
誰かに薦めますか? もちろんです。

今回の教訓-
「もしあなたが世界を変えなければ、他の誰かが変えてしまうでしょう。
どうしてそれがあなたではいけないのでしょう? 訊ねてみて失うものなど、何もないのですから」


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ALC Publishingは今年、エッセイにも登場する高嶋リカさんの作品「リカってかんじ?!」のオムニバス版の出版を計画しています。
日本でも現在入手が難しい作品ですが、アメリカでも第3版までが品切れとなり、再版が望まれていました。
北米地域での百合マンガの出版に興味がある方は、ALC Publishingと連絡を取ってみてはどうでしょうか。
posted by mikikazu at 13:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月07日

調査・アメリカのアニメコンベンション参加者は増えたのか減ったのか?(2010年1月〜11月期)

ずっと続けている調査の最新版になります。
今年2010年度も、アメリカでのアニメ・マンガ市場については、厳しい落ち込みの話ばかりが届いています。
コミック・ゲーム・アニメなどの、アメリカにおけるポップカルチャー業界情報を伝えるICv2による10月の発表によると、北米でのマンガ売り上げは、2010年度前半で前年比9%、年度全体では20%の落ち込みになるだろうと推測されていました。この3年間で半減という下降線が続いています。
またアニメ市場についても、「2005年から2010年の市場の縮小幅は6割超」という、厳しい情報が伝えられている現状です(アニメ!アニメ!ビズ 2010年10月7日付け記事)。


ということは、売り上げが落ちているのだから、北米でのアニメ・マンガファンの数自体も、やはり減っているんでしょうか? 
そう思って、当ブログでは2008年頃から、北米のアニメコンベンションの参加者数のデータを見守ってきました。

2009年1月5日付け記事
「2008年、アメリカのアニメ・マンガファンは増えたのか減ったのか?」

2009年8月22日付け記事
「調査・アメリカのアニメコンベンション参加者は増えたのか減ったのか?
 (2009年1〜7月期)」


2010年1月2日付け記事
「調査・アメリカのアニメコンベンション参加者は増えたのか減ったのか?
 (2009年7月〜11月期)」


これらの調査でわかったのは、北米のアニメ・マンガ市場がどんどんと縮小を続けているこの数年間でも、ほとんどのアニメコンベンションで、参加者の数は増え続けているという状況でした。
アニメコンペンションに参加している人達を「アニメ・マンガファン」と定義してよいのなら、市場の落ち込みとは逆に、北米でのアニメ・マンガファンは増え続けている、という判断になります。

その状況は、今年2010年度でも続いているんでしょうか。
例によって、2010年1月から11月の間にアメリカで開催されたアニメコンベンションから、参加者数データが公表されているもののリストを並べてみたいと思います。ソースは主に、アニメコンベンション情報専門サイトのAnimeCons.comです。一部不明のものは、Wikipediaからも引用しました。
わかりやすいように、黒字が前年度から参加者数が増加しているもの、赤字が減っているものにしておきますね。では、いきます。


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・Ikkicon
 (テキサス州ダラス 1月1〜3日)
 2009年・4000人 → 2010年4200人に増加(推定有料参加者数)

・Animé Los Angeles
 (カリフォルニア州ロサンゼルス 1月8〜10日)
 2009年・2851人 → 2010年3207人に増加

・Ohayocon
 (オハイオ州コロンバス 1月29〜31日)
 2009年・7357人 → 2010年・10120人に増加

・Naka-Kon
 (ミズーリ州カンザスシティ 2月19〜21日)
 2009年・2915人 → 2010年・3862人に増加(有料参加者数)

・Anime Milwaukee
 (ウィスコンシン州ミルウォーキー 3月12〜14日)
 2009年・約800人 → 2010年約2100人に増加

・Anime Boston
 (マサチューセッツ州ボストン 4月2〜4日)
 2009年・15438人 → 2010年・17236人に増加

・Anime Punch!
 (オハイオ州コロンバス 4月2〜4日)
 2009年・1109人 → 2010年・1206人に増加(有料入場者数)

・Sakura-Con
 (ワシントン州シアトル 4月2〜4日)
 2009年・16586人 → 2010年・18002人に増加

・Tekkoshocon
 (ペンシルバニア州ピッツバーグ 4月8〜11日)
 2009年・3239人 → 2010年・3522人(有料入場者数)に増加

・Kawaii Kon
 (ハワイ州ホノルル 4月10〜12日)
 2009年・4743人(4479人が有料) → 2010年・4877人に増加

・Anime St. Louis
 (イリノイ州コリンズビル 4月23〜25日)
 2009年・1750人 → 2010年・1660人に減少(有料入場者数)


・Middle Tennessee Anime Convention
 (テネシー州ナッシュビル 4月30日〜5月2日)
 2009年・約4200人 → 2010年・参加者数約4200人

・Anime Central
 (イリノイ州ロズモント 5月14〜16日)
 2009年・15463人 → 2010年・19511人に増加

・Animazement
 (ノースカロライナ州ローリー 5月28〜30日)
 2009年・5964人 → 2010年・7070人に増加

・A-Kon
 (テキサス州ダラス 6月4〜6日)
 2009年・16037人 → 2010年・17596人に増加

・AnimeNEXT
 (ニュージャージー州サマーセット 6月18〜20日)
 2008年・7950人 → 2010年・8159人に増加

・PortConMaine
 (メイン州サウスポートランド 6月24〜27日)
 2009年・1804人 → 2010年・2072人に増加

・Anime Expo
 (カリフォルニア州ロサンゼルス 7月1〜4日)
 2009年・10万9000人 → 2010年・10万5000人に減少
 (4日間での延べ参加者数)


・San Japan
 (テキサス州サンアントニオ 7月9〜11日)
 2009年・4003人 → 2010年・5049人に増加

・GarasuNoShiCon
 (オハイオ州ペリーズバーグ 7月17〜18日)
 2009年・約500人 → 2010年・1100人(有料入場者数)に増加


・Fieldcon
 (オハイオ州モーガン・カウンティ 7月25〜27日)
 2009年・60人 → 2010年・50人(有料入場者数)に減少


・AnimeIowa
 (アイオワ州コーラルビル 7月30日〜8月1日)
 2009年・2700+人 → 2010年・2800人に増加

・Otakon
 (メリーランド州ボルチモア 7月30日〜8月1日)
 2009年・26350人 → 2010年・29274人に増加(有料入場者数)

・Anime Overload
 (テキサス州オースティン 8月6〜8日)
 2009年・420人 → 2010年・約1000人増加

・Kumoricon
 (オレゴン州ポートランド 9月4〜6日)
 2009年・4558人 → 2010年・4055人に減少


・Tsubasacon
 (ウェストバージニア州ハンティントン 10月1〜3日)
 2009年・約900人 → 2010年・1105人に増加(有料入場者数)

・Anime Banzai
 (ユタ州レイトン 10月8〜10日)
 2009年・3000人 → 2010年 3200人に増加

・Bakuretsu Con
 (バーモント州コルチェスター 10月21〜24日)
 2009年・473人 → 2010年・468人に減少(有料入場者数)


・Youmacon
 (ミシガン州デトロイト 10月28〜31日)
 2009年・6200人 → 2010年・9000+人に増加

・MangaNEXT
 (ニュージャージー州イーストブランズウィック 10月29〜31日)
 2009年・1085人 → 2010年・1195人に増加

・Nekocon
 (ヴァージニア州ハンプトン 11月5〜7日)
 2009年・3429人 → 2010年・3788人に増加


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という結果でした。
いわゆる「主催者発表」であることは念頭に置いておく必要はありますけれど、これらの数字を信じるなら、引き続き全米各地で開催されているアニメコンベンションの多く(31中25)で、参加者増加の傾向が続いてるのがわかります。
「アニメコンベンションの参加者=アニメ・マンガファン」と定義していいのなら、やはり2010年度中も、世代の入れ替わりはあるかもですが、アメリカでアニメ・マンガファンの総数は増え続けている、と判断してよさそうですね。
にもかかわらず、アメリカを含む北米地域で、アニメ・マンガ市場がずっと縮小傾向にあるという矛盾した状況は、北米でのアニメ・マンガビジネスに関わっている方達にとって、とても歯がゆいものであることは想像に難くありません。
posted by mikikazu at 16:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月18日

アカデミー賞長編アニメ部門の選考対象となった「サマーウォーズ」は、日本語オリジナル版ではなく、英語吹替版

米・アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーが11月15日に、長編アニメ部門にエントリーした15作品を発表してから(プレスリリース)、ずっと気になって調べていたのが、唯一エントリーしている日本アニメ作品の「サマーウォーズ」(細田守監督 日本公式サイト)が、オリジナルの日本語版なのか、それとも英語吹替版なのか、ということでした。


というのも、今でも日本のほとんどの方が、「2002年のアカデミー賞長編アニメ賞を、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が受賞した」と思っていますよね。
でも厳密に言うと、実際にアカデミー賞を受賞したのは、日本語オリジナル版の「千と千尋の神隠し」ではなく、ピクサー・アニメーション・スタジオのジョン・ラセター氏が監修した、英語吹替版の「Spirited Away」という作品になるのではないでしょうか?
つまり、アカデミー賞受賞における評価対象には、日本語版の声優さんの演技や、それらに対する演出行為は含まれていないことになります。
アカデミーには外国語映画部門もありますが、長編アニメ部門にエントリーするには、英語に吹替する義務があるわけではなく、2004年には今敏監督の「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」が共に、日本語音声のままで(英語字幕付き)選考対象へのエントリーを認められています。


なので、少し前から、エントリーのための手続きを進めていると伝えられていた「サマーウォーズ」の場合はどうなるのだろうと思っていたのですけど、16日付けで出されたプレスリリースの文面によれば、「この細田守作品の提出では、Michael SinterniklaasとBrina Palenciaが主演し、Mike McFarlandがADRディレクターを務めた英語音声トラックがフィーチャーされている」と記載されていますので、FUNimationが提出し、アカデミーによる選考対象作品となったのは、日本語音声のオリジナル版「サマーウォーズ」ではなく、英語吹替版の「Summer Wars」であると判断していいと思います。
ですから、今後の経過がどうであれ、アカデミーで評価の対象になっているのは、日本の観客が知っている日本語版そのままの「サマーウォーズ」ではない、ということは理解しておく必要があるでしょう。
映像そのものに修正・削除はないと思いますが、例えば予告編で見た範囲でも、主人公の健二君が、ヒロインの夏希さんを最初の部室のシーンから、「先輩」付けではなく「Natsuki」と呼び捨てにしている、といった違いが確認出来ました。


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個人的な意見を言えば、映画賞という場で、外国語映画をオリジナルの形ではなく、自国の言語に吹替えたバージョンで評価しようというのは、論外だと思います。
逆に考えて、日本の映画賞で、例えアニメーションであっても外国作品を、日本語吹替版で評価しようとしたら、賞としての権威が失われるような、失笑行為になるでしょう。
英語圏であるアメリカの映画賞が、日本語での演技を評価出来るのか?という意見もあると思いますけど、国際アニメーション協会のロサンゼルス支部が主催するアニー賞では、2003年の長編声優部門で、「千年女優」の主人公・藤原千代子を(もちろん日本語で)演じた荘司美代子さんがノミネートされた、という事実もあります。
アカデミー賞の商業的価値を利用するためには、英語吹替での応募も必要である、という考えに反対はしませんが、その英語吹替制作が、日本側のクリエイターさんの意向がきちんと理解され尊重されたものであること、可能なら直接監修してもらったものであることを、祈るばかりです。
posted by mikikazu at 15:19 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月02日

イタリアの国営放送局RaiDueで、11月6日に映画「ふたりはプリキュア Splash☆Star チクタク危機一髪」、7日に「Yes! プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」放送決定!

イタリアでは現在、民放最大手局のItalia 1で平日夕方枠に再放送中の、「美少女戦士セーラームーン」が(局公式サイト内番組コーナー)、新作の「ONE PIECE」と共に、時には視聴者数が100万人を超えるほどのリバイバル人気を博している最中なんですが、同じ東映アニメ
ーション作品では、日本での稼ぎ頭のひとつであるプリキュアシリーズも、負けずに広く展開されつつあります。


前回の記事で、国営放送局RaiDue(公式サイト)による、奇しくも日本での最新映画「ハートキャッチプリキュア! の都でファッションショー…ですか!?」公開と同日になった10月30日の、プリキュア映画第2作「ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち」の放送についてお伝えしましたけれど、Raiグループのプリキュアプッシュは続いていくようです。


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まず、RaiDue公式サイトの番組表で確認出来ますけれど、11月6日午前7時45分からは、"Pretty Cure Splash Star - Le leggendarie"こと、映画「ふたりはプリキュア
Splash Star チクタク危機一髪!」(日本公式サイト)の放送が予定されています。
シリーズ第3作「Splash☆Star」のTVシリーズは、イタリアでは同局で2008年夏に放送されていて、ヨーロッパでは現在唯一の放送国ですね。アジア地域だと、香港と台湾で放送済みです。
この「チクタク危機一髪!」が、「Max Heart 2」と共に、イタリア語吹替版も制作されていることは、当時から伝えられていて、放送も近いかもとは想像していたんですが、意外に早かったです。


さらに続く7日・日曜日の午前7時20分からは、"Le Pretty Cure nel regno degli specchi"こと、映画「「Yes! プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」(日本公式サイト)の放送も予定されています。
2日続けてのプリキュア映画放送というプログラムは、イタリア現地のプリキュアファンには嬉しいプレゼントですよね。
イタリアRaiDueでの「5」TVシリーズの放送は、「S☆S」の1年後になる2009年5月から。やはりヨーロッパではイタリアが唯一の放送国で、また現在までにイタリアで放送された、最後のプリキュアシリーズになっています。


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さらに、これは現在公式な番組表ではまだ確認されていなくて、ファンサイトのフォーラムで報告されている情報なんですが、「5」に続くシリーズ第5作の「Yes! プリキュア5 GoGo!」も、RaiDueで翌週土曜日の11月13日午前8時10分から放送開始予定、という話も出ています。
RaiDueで昨年8月に「5」の最終話が放送された際に、「GoGo!」の予告も放送されたことで、その放送は確実と思われていたんですが、近年は夏だった、プリキュアシリーズの放送時期が過ぎても音沙汰はなく、秋には放送するとは言われつつも、10月が過ぎてしまいで、イタリアのプリキュアファンが、不安になっていたところでした。


そのフォーラムでの情報を信じるなら、今回の「GoGo!」の放送が近作と異なるのは放送時期だけではなくて、スケジュールも変わりそうです。
「S☆S」「5」はずっと、平日朝の時間帯で連日放送し、数ヶ月程度で全話の放送を消化していたんですが、「GoGo!」は土曜日朝の一度だけ、つまり日本と同じように1年間かけて放送するらしい、と伝えられています。
イタリアのプリキュアファンの不満のひとつは、放送が日本から二年遅れということだけでなく、キャラクター商品などのマーチャンダイジング展開が近年皆無ということでした。
正確にいうと、1作目の「ふたりはプリキュア」放送時は、人形や文具などの展開はあったんですが、それ以降のシリーズではないようで、慌しく数ヶ月で放送を終えるだけ、という状況でした。
けれど今回の「GoGo!」が1年間の放送期間を用意しているのなら、じっくりとした商品展開も予定されているのかもしれません。


ともあれ11月のイタリアは、地上波RaiDueで「Splash☆Star」「5」映画、「5GoGo!」TVシリーズ、衛星チャンネルRai Gulpで「ふたりはプリキュア Max Heart」の再放送と、プリキュアがたくさんな月になりそうですね。
来年2月からのフランスでの「ハートキャッチプリキュア!」放送と合わせて、1作目放送時はイマイチだった模様の、ヨーロッパへのプリキュア進出が成功して欲しいです。
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