先日、「鋼の錬金術師」英語版での、エドワード・
エルリック役の声優であるVic Mignognaさん
のインタビューを紹介した時に、「向こうのアニ
メ声優さんの話を聞く機会はあまりない」との声
もいただきましたので、今後はそういう情報につ
いても、出来る範囲で調べていきたいと思います。
というわけで、本日は、「鋼」つながりということ
で、英語版でヒロインのウィンリィ・ロックベル嬢
を演じておられる、Caitlin Glassさんのインタビ
ューを紹介してみますね。
参照記事は、少し前になりますけれど、2006年
9月19日付けの、情報サイトActive Anime掲載、
「CAITLIN GLASS INTERVIEW」
からです。
ちょうどアメリカで劇場版「シャンバラを征く者」
が公開された時期で(北米公式サイト)、「鋼」
がアメリカでそこまで成功した喜びと、これで
ウィンリィともお別れになる寂しさが混じった、
ご本人も言うところの、「スィート&ビター」な
内容になっています。
インタビューの収録は、2006年9月6日、テキ
サス州ヒューストンのAlamo West Oaks劇
場で行われた「シャンバラ」の北米プレミアの後
ということですね。
質問3〜9は、その場で収録した音声から、質
問1〜2・10は、後からメールであらためて答
えてもらった文章からになります。
CAITLIN GLASSさんのライブジャーナル
英語版Wikipedia
Anime News Network
Q1.「どうして演劇に関わるようになったんで
すか?」
Caitlin
「私はそもそも、演劇科の学生だったんです
(テキサス大学アーリントン校2004年卒)。
卒業の数ヶ月くらい前に、FUNimationで働い
ている友達から、スタジオの見学に誘われた
んですけど、その時に、ADRディレクターの
Eric Valeさんに出会って、私が演技出来る
ことを知った彼から、『録音ブースに入って、
台詞を読んでみて欲しい』と頼まれたんです。
とりあえずやってみて、ブースから出てみると、
『君を雇うことにしたから』って彼が言うの!
2日後には、『Case Closed(名探偵コナン)』
の仕事をしていました」
Q2.「あなたが舞台女優であるということも伝
え聞いていますけど、舞台での演技について
は、どんな風にキャリアを積んできました?」
Caitlin
「一番最初のお芝居は……3年生の時だった
かな? 学校での、クリスマス行事関連のも
のだったと思いますけど。私が演じたのはバ
レリーナ人形でした。
それから5年生になって、初めての本格的な
お芝居である、『白雪姫』のオーディションを
受けてみたんです。幸いに白雪姫の役を得て、
歌からなにから、何でも頑張りました。
でも、私が真面目に演劇に関わるようになった
のは、中学校の時、親友が地元の演劇界でオ
ーディションを受けるようになってからですね。
彼女の姿を見て、私もすぐに演技の出来る舞
台を探さずにはいられなくなったんです。それ
からずっと、演技から離れたことはありません。
高校では演劇部に所属して、学校の中の行事
全てだけではなく、校外の舞台にも参加するよ
うにしました。
大学に進む頃には、私にとってお芝居が一番大
切なものになっていましたから、何を学ぶかなん
て悩む必要もありませんでした。
大学で無事に単位も取れたから、出来るだけ舞
台の経験も積もうとしているんですけど、アニメ
の収録と、コンベンションのゲスト出演とも両立
させるのは、とっても大変です(笑)」
Q3.「アニメについての一番最初の印象は?
どうしてそんな風に思いましたか?」
Caitlin
「初めてアニメに触れたのは……まだずっと幼い
頃だったと思います。その頃は、まだアニメだな
んてわかりませんでしたけど。アメリカ製のカー
トゥーンはよく見ていましたから、また別のカート
ゥーンだな、くらいで。
高校の時に、『美少女戦士セーラームーン』の大
ファンの友達がいて、彼女を通して、初めてアニ
メのことを理解したと思います。『セーラームーン』
は当時Toonamiで毎日放送されていましたから、
ママと一緒にずっと見るようになりました(笑)。
アニメで気に入っていることは……『違っている』
ということでしょうか。特にストーリーについては、
アメリカ製のカートゥーンとは全然違っています。
カートゥーンは基本的に1話完結で、その日のエ
ピソードが終わってしまえば、お話も終わりです
けど、アニメだと26話をかけて、ずっと続いてい
きます。『セーラームーン』の場合だと、全部で5
シーズンもありますし!
とにかく可愛いと思うし、見ていて熱中してしまう
ものだと思います。特に私の場合、カラフルなカー
トゥーンには、すぐ夢中になってしまうんです。ま
あ、それは私だけかもしれないですけど(笑)」
Q4.「『ガンスリンガーガール』では、トリエラを
演じられたわけですが、暗殺者である10代の
少女を演じなくてはならないと知った時の気持
ちは?」
Caitlin
「すごくクールだと思いました(笑)。演じるのは
楽しみでしたし。確かに難しい役ではありますよ
ね。ものすごく複雑なキャラクターだし、作品自
体も色々入り組んでいます。全部でたった13話
しかない作品だったことを考えると、今では特に。
でも、彼女はとても素敵なキャラだったと思いま
す。主役くらい活躍しますし、演じていて楽しかっ
たですね」
Q5.「『ガンスリンガーガール』は洗練されたスタ
イルで描かれていて、決して暴力だけの作品で
はありませんよね? けれど、北米ではいまだに、
『アニメ』という言葉に対して、間違った認識をして
いる人も多くいます。それについてはどう思いま
すか?」
Caitlin
「今でも、アメリカの主流の人々に対しては、アニ
メがどんなものであるか、よく伝わっていないのが
実情だと思います。
『アニメなんて、とんでもなく暴力的か、大きな胸
をした女の子のセクシーさだけが売り物なんだろ
う?』ということで全てとしか……。
『ガンスリンガーガール』というタイトルを聞いても
きっと、『子供に銃ですって!? とんでもない!』っ
て考えると思います(笑)。『そんなもの、子供達
に見せるわけにはいかない!』って。まあ、小さな
子供にわざわざ『ガンスリンガーガール』を見せる
必要はない、というのも本当だと思いますけど。
でも、作品としては素晴らしく描かれていますし、
ゆったりと語られていくドラマは、様々な角度か
ら楽しめるものです。ただ銃を乱射して、人を殴る
だけの作品ではないですよね。だからタイトルのみ
で、そんな風に反応してしまう人がいるのは残念
ではあります」
Q5.「では、あなたのキャラクターであるウィンリィ・
ロックベルについてうかがいたいと思います。日
本だけでなく、アメリカでもこれだけ大ヒットした作
品のひとつに参加している気持ちは?」
Caitlin
「『鋼の錬金術師』で仕事をするということは――
夢がかなったようなものですね。実際に仕事を
始めるまで、自分にそんな夢があるだなんて、
全然気づいていなかったんですけれど(笑)。
だって私にとっては、メインのキャストを演じさ
せてもらった、まだたった2番目の作品だった
んですし(メインキャストとしてのデビューは、
「スパイラル〜推理の絆〜」の結崎ひよの)。
だからアメリカでも『鋼』の人気がブレイクして
いくのを目撃し、どうして日本でそんなに評価
されている作品なのか理解していくのは、とっ
ても素敵なことでした。
キャストのみんなも、素晴らしい仕事をしてくれ
ましたし、その一員であることを、とても誇りに
思っています」
Q6.「ウィンリィはアニメ作品の中でも、特に
バランスの取れたキャラクターですよね。エド
の頭をレンチで殴ったりすること以外に、自分
が彼女と似ていると思うところはありますか?」
Caitlin
「はは(笑)。残念ながら、レンチで男の人を殴っ
たことはないです。……手で引っぱたいたことは
ありますけど。
そうですね、私とウィンリィは、似たところがたく
さんあると思います。彼女は両親がいなくて、精
神的にはやく大人に成長しなくてはいけなかった。
うちには母親がいましたけれど、シングル・マザ
ーで、よく仕事のために家を空けて、私はいつも
1人でした。だから私も小さい時から、しっかりと
していなくちゃいけませんでした。
それに彼女も私と同じくらいに、とても感情的に
なる時があります。私はよく泣きますし、ウィンリ
ィもそう。ウィンリィが泣いている時は、本当に
私が泣いているような感じなんです。
時に頑固になり過ぎるところも似ていますし、男
の子と上手く付き合えているところもそうかな?
私には兄弟はいませんけれど、男のいとこがたく
さんいて、とても仲良くやっていますし。
確かに私達には似たところがあって、無理に結び
つける必要はなかったんですけれど、今では自然
にそう思えるようになりました」
Q7.「ウィンリィを演じる上で、一番難しい点は?」
Caitlin
「彼女が本当の感情を露わにする時全てでしょ
うか。
彼女の出番が最初に一番多かったエピソードで
は、お話の半分くらい、彼女はずっと泣いてい
ました。誰も演じている私の姿を見られるわけ
ではないから、私はただ泣いている真似をする
だけでもよかった。でも、やがてこの作品がど
れだけ素晴らしいものか理解するようになって、
私に出来ることは全て捧げて、ウィンリィを演じ
てみようと思うようになったんです。
そんなプレッシャーもあって、第3話の収録で
は、私自身が本当に泣いてしまったんです。そ
こまで自分を追いつめて……。それくらいのハ
ードルを、全てのエピソードで、自分自身に課
すようにしていたんですね。
でも、私とウィンリィは結局上手くやれて、次第
に演じるのを楽しめるようにもなりました。毎回
の収録が、本当の友達に会いに行くような感じ
になっていったんです。彼女のことを自然に演じ
られ、命を吹き込んでいけるようになりました」
Q8.「『鋼』はこの『シャンバラ』で終わってしまう
わけですけど、一番最後の台詞を言い終えて、
ウィンリィと共に歩んできた旅もこれで終わりだ
と思いつつ、ブースから出てきた時、どんな気持
ちでした?」
Caitlin
「もちろん寂しかったわ! そんな風に訊かれる
だけで、またもっと落ち込んでしまいそう……。
『鋼』に関わったキャストはみんな幸運だったと
思います。というのも大抵のアニメ作品は26話で
終わりで、運がよければ52話――『鋼』の場合は
全51話でしたけど――まで演じていられます。
それが、9ヵ月も過ぎてから、今度は映画のため
にまた役に戻れるのは……嬉しくもあり寂しくもあ
る、複雑な気持ちでした。
大好きだったキャラをまた演じられるのはとって
も嬉しかったですけれど、その一方で、台詞を言
うたびに、今度は本当に永遠の、そのキャラとお
別れしなくちゃいけない時間が近づいているんだ
と感じるのは、とても辛かったですね」
Q10.「『鋼』ファンと、アニメファン全般に、メッ
セージがありましたら」
Caitlin
「みなさんは全員、これまでで最も素晴らしい
ファンです! 私達声優と、作品に対して捧げ
続けてくれた、愛と応援の気持ちに、感謝した
いと思います。あなた達は最高!」
という感じです。大雑把な訳ですみません。
もっと長いインタビューを読んでみたいという
方には、さらに時期をさかのぼりますけれど、
AnimeOnDVD2005年9月13日掲載のイ
ンタビューなんかもどうぞ。
アニメ声優の仕事を始めてまだ一年と半年しか
経っていないという、Caitlinさんの初々しい発言
が読めます。
posted by mikikazu at 13:33
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「鋼の錬金術師」情報
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