2010年04月05日

高知県庁まんが・コンテンツ課にお邪魔してきました。


というわけで、この週末は諸般の事情で高知
県の実家に帰省していたんですが、そのつい
での目的が、4月1日付けで高知県庁内文化
生活部内に新設された、まんが・コンテンツ課
の様子を見てくることでした。

参考・毎日新聞2010年4月2日付け記事
「“まんが王国・土佐”をブランドに! 
 県が『まんが・コンテンツ課』新設」


たまたま帰省のタイミングが合ったので、2日
の午後に高知県庁を訪れ、まんが・コンテンツ
課にお邪魔してみました。
とはいえ、つい昨日発足して部内に机などをや
っと並べたばかりということで、広報用の資料
であったり、課の活動目的・予定を伝えるパン
フレットのようなものは、まだまったく準備され
ていませんでした。当然だと思います。
そんな忙しい中にもかかわらず、課長補佐の方
と少しだけ、お話をする時間をいただけました。


高知県では毎年8月に全国高等学校漫画選手
権大会 ―― 通称「まんが甲子園」(公式サイト)
という大会を開催していて、今年でついに19回
目を迎えるんですが、その実績をふまえて、さら
に発展する形での、マンガやアニメといったコン
テンツの活用を目指していくという基本方針を、
まずは聞かせていただきました。
自分の方からも、日本だけでなく、海外にもマン
ガ家を目指している若い人達はたくさんいるので、
そういった人達が参加出来る「海外枠」みたいな
ものも、いずれ作って欲しいとお願いしたりで。


具体的な今後の計画については、まだまだ煮
詰めが必要のようで、そんなに詳しいことは聞
けなかったんですけど(こちらがそんなことまで
話していい相手なのか、わからないということ
もあったと思います)、可能性がたくさん現実に
花開く活動になって欲しいと思います。
うちのブログの活動を説明するためにプリント
アウトしていった記事がPromiseのものだった
ので、はからずも彼女達の売り込みになってし
まったかもですが(笑)。


あと確認したかったのは、東京都や大阪府で条
例改正やその検討が進んでいるマンガの表現
規制についてだったですが、少なくとも高知県庁
内で、そういう話はまったく出ていないとのこと
で、安心しました。
成立した場合に追随するかどうかは、都や府との
繋がりの中での、高知県の立場がわからないの
でコメント出来ませんが。


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2009年06月17日

いろいろお勉強。

引き続きですがさらに今日届いたのが、

「最後の制服」第3巻 (袴田めら 芳文社)
「暁色の潜伏魔女」全3巻(袴田めら 双葉社)
「ピエタ」全2巻(榛野なな恵 集英社)
「スズナリ!」全2巻(石見翔子 芳文社)
「落花流水」第1巻 (真田一輝 芳文社)
「えむの王国」第1巻(中平凱 芳文社)
「帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!?」第1〜3巻
 (石田あきら 芳文社)
「ようこそ小豆沢美研へ!」(かつまれい 芳文社)
「さつきばれっ!」(真田一輝 芳文社)

などになります。
この辺はもうお勉強モードで、とりあえず読んで
みようということですね。
参考にしているのは、サイト「BLND」のみやきち
さんによるレビューなんですが、やはり違う個人
ということで、向こうの評価が高くても、僕の側は
面白く感じない作品も出てきます。
タイトルは出しませんが、
「天然あるみにゅーむ!」(こむそう 芳文社)
とか、
「わさびアラモードっ!!」(もみじ真魚 芳文社)
とかは、Hなネタが多くて、個人的にはちょっと違
うかなと思いました。っていうかこれだけ読むと、
自分の好みもわかってくる感じです。その辺の話
は……またするかもです。
向こうで高く評価されていない作品を、あえて選
んで購入するというのもリスキーなので、逆のこ
とを試すのは難しいんですけど。


とりあえず思ったのは、特に多いんですが、学園四
コマ作品を続けて読むのは、やめといた方がいい
かもということですね。
学園祭・体育祭・試験、あるいはクリスマス、バレン
タインなどの定番イベントが、ほとんどの作品で登
場するので、飽きるというか、続けてだと全然スペ
シャルなイベントに感じなくなってきて、ウンザリす
るというか(笑)。
そういう行事ネタは、使われるギャグも似てくるから、
続けて読むと、後の作品ほど不利になる、ということ
もありますね。
そういう意味では、あえてイベントネタをほとんど使っ
ていない、「ゆゆ式」(三上小又 芳文社)なんかは新
鮮でしたけど。
それぞれの作品については、短評くらいでしたら、
またいずれ。そろそろ打ち止めですけど、これも読
んでおいたら、という作品がまだありましたら、よろ
しくお願いします。

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2009年06月11日

「最後の制服」(袴田めら)第1&2巻、読みました。


続いて、「最後の制服」第1&2巻(袴田めら 
芳文社)を読みました。
先に正直に告白しておくと、この作品、僕はずっ
とアダルトというか、いわゆる成人向きのマンガ
だとばかり思っていたんですね。
タイトルの雰囲気と……、女の子のスカートの短
さが理由でしょうか? 品性の違いが如実にわか
ります(笑)。
なので結構覚悟して注文したのですが、実際に本
を手に取って背表紙を見てみると、「まんがタイム」
のシリーズだとわかり、だったら成人向けということ
もないだろうと、ホッとしました。
物語的必然性があれば、人間同士の関係性の発
展として、そういう描写に進むことは、別に否定しま
せんけれど。全てが全てファンタジーの寸止めでは、
逆につまらないですし、だからこそ昨日取り上げた
「クローバー」の「bitter girl」みたいな「ちゅー」いっ
ぱいなお話も、良かったと思うわけです。


この「最後の制服」は、絵作りで魅せるような種類
の作品ではありませんけれど、これはこれで素朴
なタッチのキャラ達の物語を楽しみました。
こういうキャラ達にふさわしいレベルの、思春期の
日常の切り取りになっているというか。
第2巻第3話のサブタイトル「ベティの死」を目にし
た時は、「死ということは……ここからシリアス・欝
展開になってしまう……?」とも心配してしまった
んですけど、そんなこともありませんでしたね(笑)。
キャラとしてのお気に入りは……やはり樋渡杏さん
になるんでしょうか。「わたしはあなたのもの」なん
かは、一歩間違えたら怖いお話ですけど。
同じようなシチュエーションは、「ひみつの階段」第1
巻(紺野キタ ポプラ社)収録の「Diary」にもあって、
そちらはタイでしたが、こちらはもっと肌に直接触
れる制服上着ということで、生々しくはありますね。
だからこそ、これくらいの絵柄で良かったんだろう
とも思います。


そうですね、僕も思ったのが、物語としての落とし
どころの難しさですね。
全てを思春期の刹那な感情の、閉じたファンタジー
として描くのも、それはそれでありですが、逆にい
うと、それは現実的結論から逃げているということ
でもあって。同性同士の結婚すら、法的に認められ
ていない日本のような国の場合、その現実的結論
を描こうとする場合においての、物語のリアリティの
レベルは、必然的にぶつかるテーマになってしまう
のでしょうけれど、百合といったジャンルを通して、
そのことをどうこう評論する立場には、今の僕はま
だいません。
僕は今回第1&2巻しか購入しなかったんですけれ
ど、そういった関係性の物語の結論に届くだろう、
第3巻もまだあったんですね。既に絶版ということ
で、現在では新刊で入手は難しいみたいなので、
また別の手段を探して、読んでみたいとは思います。
想いは届いた方がいいに決まっているので、幸せ
にまとまるカップルが出るのなら、それは見届けた
いですし。


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2009年06月10日

「クローバー」(乙ひより)、読みました。


昨日届いた本の中から、作者さんにとっては二冊
目の単行本になる、「クローバー」(乙ひより
一迅社 作者さん公式サイト)を読んでみました。
先に一言でいうと、ちょうどこういう物語を味わって
みたかった、という「当たり」な感じですね。
先日読んだ、処女単行本「かわいいあなた」と比較
すると、格段にマンガとしての語り口がレベルアップ
していて、とても楽しく読めました。お薦めしてくれた
りょうさんに、あらためて感謝をしたいです。結局ロザ
リオをちゃんと渡す機会もないままなのは、申し訳な
いなのかなんなのかですけど……。
「かわいいあなた」は、評した通りに、百合コミックと
しての入門編というか、スタンダードなお話ばかり
をまずやってみたんだな、という印象があって、作
者の力量やオリジナリティが問われるのは、この二
冊目になるだろうと思っていたんですが、その期待
に、見事応えてくれていると思います。
作家としての成長が如実に感じられて、読んでいて
気持ちがよかったですね。


その、成長という面で指摘出来るのは、たとえば構
図の効果的な多様化が進んでいることでしょうか。
「かわいいあなた」の頃よりは、視点がより複雑か
つ、物語が求めている文体に対して正しく配置され
ていると感じました。
第1話「彼女の隣」2P目の、電車内の端と端にいる
2人のキャラクターを同時に、ひとつのコマに配置し
た構図なんかは、カットを割らない限り、実写作品で
は不可能な表現ですよね。セットを用意してカメラを
うんと引いて撮ってもいいけど、おそらくはとてもリア
リティに欠いた映像になると思います。
他にも、背景の絵の、必要な解像度の選択といった、
「マンガだからこそ出来る」表現の洗練が進んでい
るのは、作者さんが、マンガ家として、順調に成長
している証明でしょうね。


個人的には好きなお話は……、全部好きですけど、
しいて選ぶなら、第2話「bitter girl」でしょうか。
気持ちよさそうで綺麗な「ちゅー」がたくさんあった
というのが、理由として大きいかもですけど(笑)。
寸止めじゃなくて、意思疎通の手段として必要なキ
スという行為を、2人の関係性の進行・変化と合わ
せて、それぞれ行ってくれるのが、なんだかいいな
あって。
ポンポンもいいです。ポンポン、して欲しいなあ。


ところで作品内容とは、全然まったく関係ない話で
すが、この作品の主人公姉妹の苗字は、「橘」なん
ですね。
先日楽しく読んだ、「ストロベリーシェイクSweet」
(林家志弦 一迅社)の主人公も、「橘」樹里亜さん。
お馴染みりょうさんの旧名(?)も、「橘」遼さんという
ことで、「橘」って、そういう系に(←どういう系?)、
人気というか、雰囲気の合う名前なのかなーとか、
ダメダメなことを思ったりもしました(笑)。
あと、ちょうど下書きを始めようと思っていた、こち
らの「マリア様がみてる」ファン小説と、文脈こそ違
え、同じシチュエーションが、この「クローバー」の中
で見つかってしまったので、その祐巳さん×瞳子さ
んなお話が、ボツになってしまったのは、個人的に
残念です。


posted by mikikazu at 11:09 | マンガ感想-いろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月30日

「かわいいあなた」(乙ひより)・「星は歌う」(高屋奈月)・「ストロベリーシェイクSweet」(林家志弦)など、読みました。


それから他に読んだのが、まずお気に入りだと
りょうさんにメールで教えてもらっていた、百合コ
ミック短編集の「かわいいあなた」(乙ひより 一
迅社 作者さん公式サイト)。
出版は2007年7月と、少し前ですが、雑誌「コミッ
ク百合姫」
に掲載されていた、女の子同士の恋愛
を描く短編を集めたものです。
ちなみに僕自身は、「百合姫」及びその関連雑誌を
定期購読してはいないので、こうやって作家さん単
位でお薦めされたら、単行本で購入する、という立
場ですね。


収められた6編の作品は、百合作品に詳しいわけ
ではない僕の目からしても、どれも既読感の強い
ストーリーばかりで、女の子同士の恋愛を描く上
でまず思いつく、基本的なフォーマットをそれぞれ
紹介してみせた、という役割色の強い短編集にな
っていると思います。
百合コミックというジャンルの歴史の短さ、市場の
小ささからすれば、ジャンルを紹介する出発点的な、
定番のお話ばかりのこういう短編集も、商品として、
きっと必要なんでしょうし。
そういう意味でオリジナリティは薄いと思うんです
が、それだけどれもシンプルなお話になっているの
で、読みやすいとはいえます。
これが初めての作品集ということで、作者さん個
人のオリジナリティが発揮されているとしたら、次
の作品「クローバー」からでしょうか。
単行本の表題作である「かわいいあなた」が、一
番訴求力がある作品だとは僕も思いますけれど、
それは自己否定から、他者による自己肯定のハッ
ピーエンドという文脈の力強さゆえだと思います。


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高屋奈月さんが新作「星は歌う」を連載されている
ことは、もちろん知っていましたけど、すぐに読もう
としなかったのは、やはり大長編「フルーツバスケット」
の後で、すぐに別の物語に移るのにも、少し気後れ
があったからですね。
でもとりあえず、5巻までまとまったということで、
読んでみることにしました。
語り口のクオリティ的には、「フルーツバスケット」
終盤の雰囲気そのままで、安心して読み進められ
ました。微笑ましいキャラクター達のやりとりを楽し
む一方で、こちらの心を痛く抉るそれぞれの事情が
展開されていくのも同様で、ページをめくるのに、
いい意味での覚悟が必要な作品というのも変わりま
せん。
ファンタジー設定が導入されていた「フルーツバスケ
ット」の場合は、呪いが解けるという、ひとつの救い
というか展開が用意も出来ましたが、それがないこの
「星は歌う」は、本当に生身の人間の出来ることだけ
で事態に立ち向かわなくてはいけないというシビア
さが明確なので、「フルーツバスケット」の次にやる
作品としては、正解だと思います。


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文字通り息を詰めて読み進めなくてはならない
「星は歌う」の後だと、その馬鹿馬鹿しいテンション
の高さが、いい意味で救いというか気分転換になっ
てくれたのが、「ストロベリーシェイクSweet」全2巻
(林家志弦 一迅社)ですね。
これは、「かわいいあなた」と同じく「百合姫」(と今
は亡き「百合姉妹」)掲載作品ですが、僕が読もうと
思ったのは、同じ作者さんの「はやて×ブレード」が
面白かったからです。


一応学園バトル物の体裁をとっている「はやて×ブ
レード」では、女の子同士の関係は、戦うパートナ
ーあるいは敵としてのものが、まず前提でしたが、
こちらの作品は、正面から、恋愛感情を主体として
描いています。
バトル物でないのに、こんなにも女の子が鼻血を出
す作品はスゴイとは、確かに思いましたけど(笑)。
ギャグ四コマがメインの第1巻と違って、ストーリー
モードがメインとなる第2巻では、主役2人の恋愛
関係も、それなりにシリアスに進んで、読み応えは
あると思います。
「はやて×ブレード」がそういう意味では寸止めなの
で、逆に直球の恋愛心情物語を、とことん満喫出来
るというか。
少しずつ歩み寄り始める2人の恋心の描きようが、
微笑ましく嬉しい物語です。


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マンガ版に限定してなんですけど、「マリア様が
みてる」(長沢智 集英社)で一番可愛いと思った
キャラは、実は祥子さんかもなんですね。
これは絵柄の影響が大きいんでしょうけれど、
いい意味で不器用な、表情と感情の多彩さが楽し
めるという感じで、キャラが生きていると思いました。
由乃さんもいい子ですけど、まあ担当が令さんと
して、はっきりしてますし(笑)。変に堅苦しくない、
祐巳さんとのまっすぐな友情も素敵ですよね。
ともあれ、お気遣いありがとうでした。ぼちぼち
出来る範囲で頑張っていきます。

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2009年05月29日

マンガ版「マリア様がみてる」(長沢智)全8巻、読みました。


とりあえず、更新するくらいの元気は戻ってきた
ようなので、少しだけ。
更新しようとPCを立ち上げても、なんだか眩暈が
して、そのままベッドに倒れこみたくなる、みたい
な感じがちょっと続いていました。今後も更新は
体調と気分次第だと思います……。
すぐに死んだりは多分しないでしょうけど、だから
こそ面倒ですけど、根本的な、体質改善が必要な
んでしょうね。気をつけたいです。
情報検索もあまり出来なかったので、海外事情に
も疎くなってしまって、ダメですね。


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休んでいる間に何をしていたかというと、これまで
読む機会をつくれなかった、お薦めの作品を読む
時間にしていました。どかっとまとめて注文して、
一気読みするっていう。横になりながらで出来ます
し、現実逃避といえばそうですけど。
ええっと、その中のひとつは、例えばマンガ版「マ
リア様がみてる」(長沢智 集英社)全8巻です。
今野緒雪さんによる原作小説は、だいぶ前に第1
巻だけ目を通して、それっきりだったんですけど、
お薦めするならマンガ版というりょうさんの言葉を
思い出して、今回全8巻を、まとめて取り寄せてみ
ました。今まで放置のかたちになっていて、すみま
せん。そんなの多過ぎで、申し訳ないです。


そうですね、こういうお話なら、このマンガ版くらい
のボリュームと濃さが、語り口としてちょうどだろう
とは、僕も思いました。
絵柄もソフトでいい感じで。例えばアニメ版(公式
サイト
)の祥子さんなんかは、ちょっとお姉さん過ぎ
る?雰囲気があったんですが、このマンガ版の、
前髪が中分けの祥子さんは、まだ上に三年生のロ
サ・キネンシス――蓉子さんがいる立場の、ちょう
どふさわしい容姿かもと、頭身も含めて、一番に思
ったキャラです。
アニメ版のデザインだと、このマンガ版にあった、
色々お茶目でコミカルな、時に照れてもくれる、
微笑ましい歳相応な表情なんかも、ちょっと難しい
かもと想像したり。あ、アニメ版については、AT-X
で放送していたのをちらちらと見たくらいです。
アニメ版は全般的に、どのキャラもデザイン・ライ
ンが硬い、という印象があるんですけど、声の演
技とも合わせて、どういう結果だったんでしょう。


あとまあ、どのお姉さまもそれぞれでちゃんとして
いて、こっちの「お兄さま」は、比較すると全然なん
にもちゃんと出来ていないなあ、といささか落ち込
んだりもして(笑)。きっと何の役にも立てずに心配
させていてばかりですね。そろそろ10年間(!)にな
るお付き合いで、それはないっていうか、ダメダメっ
ていうか、愛想尽かされても仕方ないっていうか……。
聖さんのお姉さまくらいの器量と心の広さが欲しい
ものです。


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このマンガ版の物語的には、上の蓉子さんが卒業
して、祐巳さんと祥子さんの2人の関係という、本
筋が始まる直前で終わるのがもったいないとは思い
ます。この語り口で、ずっと読み続けていたかった
とは、正直に感じました。
――あ、祐巳さんの「妹」というのも、当然出てくる
んでしょうけど、現状の祐巳さんが「祐巳お姉さま」
になるのは、あんまり想像出来ないっていうか(笑)。
それはそれで、大きな物語になってしまうんでしょう
ね。祥子さんとの関係をスポイルせずに、その「妹」
との関係を、どう構築していくかは作者さんの、物語
作家としての腕の見せ所でしょう。
原作ファンからすれば、それこそ祥子さんの髪型も
含めた、改変やアレンジなどで、賛否両論はあった
かもしれないこのマンガ版ですけど、僕としては、
「マリア様がみてる」は、これでいい、です。


他の作品についても色々書きたいとこですが(「か
わいいあなた」(乙ひより)とか「ストロベリーシェイ
クSweet」(林家志弦)とか、「星は歌う」(高屋奈月)
とか)、今日はここまでで、力尽きました。また明日、
かもです。


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2009年05月21日

「かんなぎ」(武梨えり)は、第6巻まで読みました。


というわけで引き続き、「かんなぎ」(武梨えり 
一迅社 公式サイト)を、第1巻から、最新刊の
第6巻まで読んでみました。
この作品を選んだのは……、タイトルに聞き覚え
のある、確かアニメ化もされていた、最近の人気
作みたいだから、以上の理由ではありません。
ヒロインであるナギさんの前髪の揃い具合がいい
なあと、ずっきゅんと本屋さんで感じて、つい全巻
衝動買いしてしまったとか、そんなことはけっして
ありません。


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マンガ作品の場合、僕は基本的にどんなジャンル
でも読む人間で、積極的に読まないのは、BL/やお
いくらいですね。百合についてもそうであるように、
良い作品だというお薦めがあれば、読むのは決して
やぶさかではないですけど。
この「かんなぎ」という作品の場合、事前に知って
いたのは、「美少女姿の人間になった神様が、主
人公宅に居候することになる」ということ程度で、
それだけを聞くと、典型的な押しかけヒロイン物の
設定ですよね。
同じような設定が最近あったなあと思い出したのは、
アニメ春新番で第1話だけ見た、「タユタマ -Kiss
on my Deity-」(公式サイト)ですか。


80年代に「うる星やつら」があって、以降にも「ああっ
女神さまっ」や「天地無用!」があったように、押しかけ
ヒロイン物は、その時代時代でニーズがあり続ける
ジャンルだろうとは思います。
可愛い男の子が、女の子の家に押しかけて居候す
るという、逆の設定の作品については、どうでしょう。
この「かんなぎ」もそうですが、物語を都合よくする
ために、思春期年齢の主人公を1人暮らしさせると
いうのは、女の子の場合、男の子に比べて難しいで
しょうから、女子大生やOLさんくらいの年齢なら出
来るかもですけど。あるのなら、読んではみたいで
すね。


ともあれこの「かんなぎ」、第1〜2巻までは、正直
あまり内容的にまとまっていないというか、エピソー
ドごとに方向性が散発的で、あまり面白いとは感じま
せんでした。珍しく、「外れ」かなって。
作品としてクオリティが格段に向上するのは、ナギさ
んの、神様としてのアイデンティティ探しという、本筋
の物語がやっと始まる、第3巻になってからですね。
作画的にも一気に解像度が上がり、アシスタント・チ
ームが補強されたのかな、とも想像しました。
第1〜2巻までは、わりにコメディ色が強くて、ナギ
さんのファンクラブが出来るみたいなナンセンスなお
話も、それはそれでいいんでしょうけれど、個人的に
は物足りない感じでした。
だから、物語がシリアスな方向に動き出してから、や
っと読みたかった物語が始まってくれた、という気持
ちになれましたね。


本筋が始まってからは、それぞれのキャラクターの、
思春期ならではの心の揺らぎが、もどかしくもそれな
りにリアルで、引き込まれていきます。
仁君も、ナギさんのことだけではなく、つぐみさんや
白亜さんからの気持ちなど、いずれは向き合わなくて
はならない問題があるのですけど、現状ではナギさん
のことだけでいっぱいいっぱいという、高校1年生の
少年としての行動と気持ちのキャパシティが、語り口
の核になっていますね。彼にしても他のキャラにして
も、出来ることしか出来ないという限界が明確で、
ゆえに描ける物語の幅、世界観がしっかりとしている
といいますか。


シリアスな語り口が踏み込む領域のレベルも、個人的
には受け入れられる範囲だったので、安心しました。
世の中には、キャラの心を捻じ曲げたり、壊すことが
シリアスな展開だと考える作り手さんもいて、そういう
思想とは、僕は相容れられないのですけど、この作品
の場合は、特に白亜さんの過去話でドキドキもしまし
たが、まだまだ大丈夫というか、未来に進めていけそ
うな感じです。
メイド喫茶とか同人誌とかいうオタクネタは、必要かど
うかはわかりませんが、これは時代の要請もあるでし
ょうか……。


この作品について、他に知っていたことというと、作者
の武梨えりさんが、昨年病気をされて、現在連載を中
断しているということもありました。
こうやって、作品を購入することがエールになればいい
とも思います。最後まで読み遂げたい物語ではあるので、
体調の完全回復を、心から祈っています。お大事に。


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先に読んだ「さよなら絶望先生」や「げんしけん」など
の作品の場合だと、アニメ化されてはいても、全くそれ
らを見る必要は感じませんでした。
マンガ自体が、「この物語はこう語る・映す」という、
確固たる文体を構築しているので、それで満足出来ま
したから、他のクリエイターによる映像解釈を、わざわ
ざ繰り返して試そうとは思わなかったんですね。
実写映画でいうと、小津安二郎作品を、誰もリメイクし
ようとは思わないでしょう?みたいな。
一方この「かんなぎ」の場合は、わりにプレーンな語り
口ですから、逆にアニメで語れることが多そうだとは感
じました。色合いにしても空気感にしても、作品世界内
にカメラを置いて、映せる領域がたくさんある、と思い
ます。
だから、作品の舞台をしっかりと設定して、実際にどこ
かの街でロケしたように作りこめば、とても素晴らしい
作品に仕上がる可能性は秘めていると思います。
幸いに、現在アニマックスで連日リピート放送中です
から、途中からですけど、雰囲気だけでも確認してみ
たいですね。


次に読むのは、同じ押しかけヒロイン物繋がりで、
「パンゲアの娘 KUNIE」全5巻(ゆうきまさみ 小学館)
になりそうです。

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2009年05月20日

「はやて×ブレード」は、第9巻まで読みました。


作品の順序は予定と違ってしまいましたけれど、
引き続き「はやて×ブレード」(林家志弦 集英社 
公式サイト)を、新装版の最新刊である、第9巻ま
で読んでみました。
この作品を読んでみようと思ったのは、お馴染み
Yuriconの代表であるエリカ・フリードマンさんが、
そのブログOkazuでのレビューで、常に高く評価
されていたからですね。
エリカさんは、ご自身でも時に「sharky」と表現す
るくらいに辛口な評をされることもあるんですが、
この「はやて×ブレード」においては、いつも総評
で8〜9の高得点を与えているので、ずっと気に
なっていました。
ちなみに英語版マンガは、百合系作品に強いSeven
Seas Entertainment
から、メディアワークスによ
る旧版の装丁で、第3巻(2009年4月)まで、現在
出版されています。
以降の巻も、一応出版予定がリストアップされて
はいるのですが、日本での出版社変更がどのよう
に影響を与えるのかは、よくわかりません。どうなる
でしょう。


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ともあれ内容的には最高でした。とてもとても楽し
んで読めたと思います。
確かにプロットの基本には、チャンバラというか剣
戟があるのですが、単純な勝負論以上に、剣待生
同士のバトル――「星奪り」のルールが、「天」と
「地」の2人のペアで戦うことを義務付けているた
めに、物語の主体は、常にキャラの関係性にあり
ます。
勝った負けたよりも、どうしてその相手と組んで戦
うのか、その人と組んで誰と戦うのかという関係性
の確認・発展のドラマの方が、重要なんですね。
それは、勝った方がいいですけど、負けたからとい
って、そのペアの物語が終わるわけではないし、物
語から排除されるわけでもない。
強さだけが物語の中で絶対視され過ぎると、いわゆ
る強さのインフレみたいな問題も起きてしまいます
が、この作品の場合は、バトル物でありながらも、
その辺が上手く調節されています。


まあ理屈はともかく、最大の魅力は、2人の女の子
達が、パートナーとして力を合わせ、一生懸命に頑
張る姿のバリエーションが、それぞれたくさん楽しめ
るということになると思います。
なんやかやで皆さん仲が良いのが微笑ましいです。
それを百合恋愛的といっていいのかは、僕にはよく
わかりませんけれど、バトルの緊張感が甘さをほど
よく緩和し、また物語の方向性も明確にしていると
評していいでしょう。
何故2人はパートナーとしてお互いを認め、力を合
わせなくてはいけないのかという、フィクション物語
としての理由付けがまず確立されているので、それ
を受け入れてしまえれば、楽しめると思います。


個人的なお気に入りキャラは、やはり犬神五十鈴さ
んになるんでしょうね。
「わんわん」とか「わんこ」とか「犬っ子」とか、愛称
はちょっとアレで気の毒ですけど(笑)、桃香さんへ
の一途な気持ちは、登場キャラの中でも一番わか
りやすいし、応援したくなるような? 誰に対しても
敬語なのも、ポイント高いですし。第2巻の表紙は、
中身読むまで誰だかわかりませんでした、という驚
きも微笑ましかったです。
僕はキャラCD(公式サイト)とかには、あまり興味が
ない方ですが、この五十鈴さんの担当声優は、オド
オドな敬語キャラということでも適格な、天下の能登
麻美子さんとのことで、聞かないわけにはいかない
かも、ですね。


次に読むのは……到着順にもよりますが、「かんなぎ」
(武梨えり 一迅社)第1〜6巻になりそうです。

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2009年05月19日

「げんしけん」全9巻、読みました。


スピンオフの「くじびきアンバランス」も含めて、
アニメ化されているのに、読む機会がなかった
超有名マンガの「げんしけん」(木尾士目 講談社)
全9巻を読みました。
木尾さんのデビュー単行本になる「陽炎日記」は、
出版当時の95年頃に読んでいる筈ですが、読ん
だという記憶以外には、何も残っていません。すみ
ません。耳年増なOLさんが主役だったような?


そうですね、物語自体は、まあそれなりに皆さん
幸せな結末で良かったですねと安堵しました。
後半の笹原君と荻上さんのシリアスな展開も、逃
げないであえて描いてよかったと思いますし。
こういう生活のある大学経験なら、それはそれで
幸せだったかもですね、とも落ち込みましたけど。
うちの大学にもアニ研みたいなのはあって、一応
顔を出してはみたんですけど、女の子しかメンバ
ーがいない同好会で、結局人間関係的に、上手く
いかなかったですね。みなさん良い人でした、と
は強調しておきます。
別にやおい/BL作品だけに目的が集中していたと
かでもなくて、僕自身の、人間的な未熟さ、至らな
さが原因だったんでしょうけど。結局救われなかっ
た荻上さん、というのが、僕の一番近い立場だった
わけですが、それは自業自得です、はい。合宿とか
二日酔いとか、記憶に痛過ぎです(笑)。青春なんて、
そんなに上手くまとまるものでもないんですっ。
はは、この辺の話は、それこそお酒でも入らないと
語るようなことではないし、その気もないです(笑)。
ともあれ結果として、トラウマというと大げさですけ
ど、その後リアルでは、マンガ・アニメを主体とし
た、オタク的な会話を生身の方々とする機会から
は遠ざかってしまい、現在までに、長い長い時間が
ただ過ぎてしまいましたね。どうやって話をすれば
いいのかも、もうわからなくなってしまったと思いま
すし。……もう、その資格もないのでしょう。
そういう意味で、古傷を抉られたり癒されたりで、
思うところの色々ある作品でした。
次に読むのは、「じゃじゃ馬グルーミン・UP!」
全26巻(ゆうきまさみ 小学館)の予定です


posted by mikikazu at 13:30 | TrackBack(0) | マンガ感想-いろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月18日

「おおきく振りかぶって」原作マンガは、第11巻まで読みました。


僕も現在は大阪府民なんですけど、瞬殺という感
じで、この2日ほどであらゆるお店の棚からマスク
が消えて、入手が不可能という状況に、あっという
間になってしまいましたね。まさしく「はやっ」という
表現になります。
僕も結局ひとつも買えなくて、まあ僕なんかはとも
かく、知人の、身体の弱い高齢の方やお子さんが
家族にいる人は、やはり不安を感じているようです。


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こういう時は無理に出かけずに、本でも読んでいる
のがいいかもということで、「おおきく振りかぶって」
(ひぐちアサ 講談社)を、第1巻から、最新刊である
第11巻まで読んでみました。
アニメ版の感想については全文削除しましたが、と
りあえずその続きがあるということなので。


格闘マンガ「修羅の門」(川原正敏 講談社)を引き
合いに出すなら、ほとんど陸奥圓明流について知ら
れぬままに、主人公・陸奥九十九が戦えた第二部の
全日本異種格闘技選手権編は、新設部ゆえに、他
校に全くデータが知られぬまま西浦が戦えた、桐青
高校戦に呼応します。
ボクシング編を挟んでのヴァーリ・トゥード編では、ボ
クシング世界ヘビー級王座までにのぼりつめた九十
九のことは、対戦者達にも研究されていて、苦戦を余
儀なくされつつも、さらなる陸奥圓明流からの引き出し
を九十九は用意出来たわけですが、同じように研究さ
れてしまっている、西浦の美丞大狭山戦では、リアリ
ズムの規制もあって、さらなる引き出しを安易に用意
させることは出来ません。それこそ三橋君が、敵の知
らない新たな変化球をいきなり投げる、みたいな展開
は、この作品では無理ですよね。


そういうリアリズムが徹底されているのは、もちろん
正しい処置なので、ではそのリアリズムの枠内でどう
するか、ということが、作者さんの腕の見せ所でしょう
し、僕的にも、作品の面白みとして、もっとも期待する
ところではあります。
ただ、連載が始まって5年と半年で、まだ県内大会
の5回戦ですから、さすがに長過ぎるとも思うので、
いったん西浦を負けさせるなら、この試合かなとも
思ってます。まだ1年の夏の大会ですし、西浦にとっ
ても、負け試合のドラマは、経験として必要でしょう。


現状の語り口のペースを守りながら、このまま決勝ま
で勝ち進んで、さらに甲子園まで描くとなると、月刊
連載ペースでは、先が長過ぎると個人的に感じてい
るのも事実です。
そういう連載期間の長さに対して、作中で流れている
時間はまだ短いので(まだ4ヵ月ですか?)、キャラク
ター達のドラマも、なかなか展開させられない、成長
もさせられないという難しさがあるんですね。
戦術と同じく、キャラがいきなり精神的に悟りを開いた
りすることは、決してないでしょうし、三橋君と安部君
の関係に代表される、その辺の関係性のもどかしさを、
魅力とする見方もあるでしょうけど。
作者さんも5年あれば、色々と作家として変化してい
るでしょうし、それは読者さんも同じですし、現実の高
校野球の技術・戦術レベルも変わっているでしょう。
高校野球のリアリズムと、その中のキャラクターの人
間感情のリアリズム、そしてフィクションのドラマと
しての面白みのバランスが、どんどんと難しくなって
いく種類の作品なので、大変だろうとは思います。


posted by mikikazu at 10:59 | TrackBack(0) | マンガ感想-いろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月08日

フェリーぺ・スミスさんの「MBQ -テイルズ・オブ・LA-」第1巻、読みました。


注文しておいた、フェリーぺ・スミスさんの「MBQ
-テイルズ・オブ・LA-」
第1巻(ソフトバンククリエ
イティブ)と、「PEEPO CHOO ピポチュー」第1巻
(講談社)が届いたので、さっそく読んでみました。
まず「ピポチュー」の方は、評価の対象とすべき
物語の本筋となるのが、アメリカ組と日本組の
キャラ達が本格的に関わり始める、第2巻以降
のエピソードからだろうと想像します。
なので、現時点で作品に対して評価をくだすのは
時期尚早でしょうから、コメントはまだ出しません。
すみません。
「MBQ」の方も、全3巻のうちの1巻だけで、どう
こう語るのはフェアではないかもしれませんが、
とりあえずでよければ、感想を少しだけ述べてお
きますね。


参考・
英語で!アニメ・マンガ 2009年4月16日付け記事
「『モーニング・ツー』連載中フェリーぺ・スミス
『ピポチュー』単行本+作者の過去作品『MBQ』
単行本発売!更にNHK『マンガノゲンバ』出演!!」



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オリジナル通りの左開きのままの出版ということ
で、最初は少し戸惑いもありましたが、読み進め
るうちにすぐに慣れました。 
左開きのコミックに慣れた北米の人が、右開きの
日本マンガに触れるのと、ちょうど逆の体験ですね。
台詞についても、横書きの翻訳のトーンには、す
ぐに慣れるでしょう。


内容的なことについて言うなら、抽象的な表現で
すけれど、とてもよく「わかる」作品になっていると
思いました。
もちろん僕は、作品の舞台になっているロサンゼ
ルスで生活をしたことはありませんが、映画やテ
レビドラマで見知っている街の雰囲気とは違うレ
ベルでの、キャラクター達の生活の空気を感じら
れたんですね。
それがリアルとかリアルではないとかいうことでは
なく、ひとつの作品世界としてのレベルに達してい
るということです。
マンガ家志望者からファーストフード店の店員、警
官からギャングまで、それぞれのキャラで、全くそ
の中身は違いますけれど、この作品世界で彼らなり
に生きているという感覚が伝わってくるのは、読ん
でいて、とても心地よいです。彼らの視点の高さを
共有出来るというか。
描写としての誇張はたくさんありますけれど、それ
がナンセンスにいたらず、ギリギリにキャラクターの
リアルを保っている筆致のセンスには才能を感じ
ますし、素直に、このキャラクター達の物語の続き
を読みたいと思いました。


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もうひとつ評価出来るのは、この作品が、誰にでも
一度はチャンス出来る種類の物語であり、そのチャ
ンスを見事にものにしている作品だ、ということで
すね。
後書きによると、この作品に登場するキャラも背景
も、作者の知っている実際のロスにモデルがある、
とのことです。
モデルがあること自体には、何の価値もありません
が、作者が知っていることを、作品のかたちで練り
直して再構築し、読者に伝わるものとして作り上げ
るのには、それなりの技術とセンスが必要だと思い
ます。


僕はかつて自主映画制作の世界に、首を少しだけ
つっこんでいたことがありますけど、特にドキュメン
タリー作品において、何かを撮れと言われた時に
は、どんな人でも、自分や自分の身の回りの人間、
家族や友達、恋人を題材にして、一本くらいは作品
を撮れてしまうものです。
出来は別にして、よく知った相手は素材として楽な
わけです。続けて作品を撮り続けられるかはどうか
は、本人の中の引き出しの数の問題ですけど。


この「MBQ」にある、語り口の視点の細かさ、空気の
描き方にリアルを感じるとするなら、それはモデル
があるからだと結論付けるのは簡単ですが、モデル
があることと、それを見つめていた作者の視点を、
作品のかたちで再構築し、読者に伝わるように提示
するのは、全然別のことだと思います。
モデルがあるから価値があるのではなく、結果とし
ての作品が、ひとつのリアルを構築しているからこ
そ、価値があるのです。
幸いにして、この「MBQ」は、そのレベルに達してい
る作品です。
作者にだけ見えるロスの世界が、そこにあるものと
して、読者としての僕にも伝わってくるのです。
自転車に乗って、オーバーランド・アベニューの坂
を駆け下りるオマリオの頬を撫でていく空気の感触
が、わかるのです。
コミックなのかマンガなのかというくだらない問いと
は別次元の話として、物語世界が構築出来ている
と思うんですね。それでいいと思います。


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なので「MBQ」については、当然続きも読んでみたい
のですが、たぶんフェリーぺさんのエージェントとしての、
椎名ゆかりさんの功績が評価されるとしたら、やはり
それは日本語版の売り上げの数字からになると思うの
で、原書購入ではなく、日本語版の続刊出版を、おとな
しく待ちたいと思います。今後もよろしくお願いします。
作者がアメリカ人だからということとは関係なく、
ロスを舞台にしたひとつの作品として、とてもお薦め
です。


posted by mikikazu at 12:19 | TrackBack(0) | マンガ感想-いろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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