今年9月後半に、アメリカの劇場約250館で、アニメ
作品を集中上映するプロジェクト「Anime Bento
Festival」というものが開催されました。
「Anime Bento Festival」公式ページ
「アニメ!アニメ!」2007年7月29日付け記事
「全米250館で 『カリオスロの城』『ハガレン』『鴉』
を集中上映」
上映された作品は、
「Robotech: The Shadow Chronicles」(9月19日)
「鋼の錬金術師 シャンバラを往く者」(9月20日)
「ルパン3世 カリオストロの城」(9月26日)
「鴉 -KARAS-」(9月27日)
になります。

フロリダ発の人気アニメ・マンガポッドキャスト
Anime World Order――以下AWO――のメン
バーであるジェラルドさんとクラリッサさんも、名作
を大スクリーンで観られる貴重な機会だと、9月26
日の「カリオストロの城」の上映に足を運んだんです
ね(クラリッサさんは、フロリダ州オーランド在住)。
ところが、劇場に集まっていたのは、わずかに7〜
8人の観客だけで、同行した番組リスナー氏によ
ると、それでも、その前週の「シャンバラを往く者」よ
りは多い、とのことでした。
このガラガラの状況に驚いた2人は、番組を通じて
全米のリスナーに、それぞれの地域での、「Anime
Bento Festival」の状況はどうだったのか、レポー
トして欲しいとお願いしていました。
少々時間が過ぎてしまいましたが、11月28日に配
信開始された最新エピソード第62回内で、その調査
結果が報告されています(26分37秒〜36分04秒)。
端的に言ってしまうと、全米各地から寄せられたメ
ールが伝えている状況は、ジェラルドさんとクラリッ
サさんがフロリダで目にしたのと同様なものばかり
で、あまりの客入りの悪さに、プロジェクトを途中で
キャンセルしてしまった地域もあったようです。
それらの報告を基にジェラルドさんは、この「Anime
Bento Festival」は失敗だった、と判断しました。
番組内では、寄せられたレポートの数や地域の詳
細については語られませんでしたから、データとし
ては明瞭なものではありませんが、AWOは北米
から発信されているアニメ・マンガ系ポッドキャスト
では、飛びぬけたトップの人気を誇っていますから、
それなりの数が寄せられたのだろうと想像します。
このプロジェクトが失敗した(と思われる)理由はい
くつかAWOメンバーによって考えられていて、それ
らを並べてみると――、

1.作品ラインナップ
上映される作品は、どれも既にDVDが発売され
ているものばかりで、わざわざ料金を払ってあら
ためて観に行こうとは思われなかったのでは?
2.高過ぎる料金設定
10ドルという料金は、6〜8ドルという一般的な
アメリカでの封切り映画料金よりも高い。
ちなみにどの作品のDVDも、小売価格15〜20ド
ル程度で購入出来る。
3.デジタル上映の状況の悪さ
このプロジェクトはフィルム上映ではなく、デジタ
ル・プロジェクター上映されたようだが、別に映像
にうるさいわけでもない自称素人のジェラルドさん
が見てもわかるくらいに、スクリーンに映し出され
る画像が悪かった。ついでに音声も大き過ぎた。
4.英語吹替版での上映
特に、「カリオストロの城」のような旧作を10ドル
も払って観たがるハードコアなファンは、やはりオ
リジナルの、日本語版で観たかったのでは。
5.宣伝の無さ
クラリッサさんも、プロジェクトが上映される劇場で
たまたま別の作品を観ていた時に、告知のCMが
流されなかったら、多分気がつかなかったかもと。

――というようなことになります。個人的には、
やはりラインナップの悪さかな、とは思います。
そういったこともふまえて、AWOメンバーが懸念
を示していたのが、今回のプロジェクトの失敗は、
「アニメはお金を払って見るものではない」という
認識が既に、北米のアニメファンに根付いてしま
っている証明ではないか、ということでした。
何度も伝えていますが、「アニメの人気は高まり
続けているのに、DVDのセールスは落ちている」
という状況と同根の現象です。
AWOメンバーに言わせれば、現在の北米アニメ
ファンの主流は、YouTube程度の画質で満足して
しまう者ばかりで、そういった層が映画館にまで足
を運んだり、DVDのために、わざわざお金を払った
りは、もはやしないのかも、ということですね。
ジェラルドさんもクラリッサさんも、旧作の「カリオ
ストロの城」はともかく、コンベンションなどでは英
語版声優さん達の人気はもの凄く、コスプレイヤー
の数もとても多い「鋼の錬金術師」は、ひょっとした
ら満員になるかも、と想像していただけに、その「鋼」
でもガラガラの現実に、ショックを受けていました。
AWOメンバー達の議論は、ではアニメと違って、層
が重なるだろうマンガの好調は何故、というものに
移っていきましたが、マンガはやはりPCのスクリー
ンで見るよりも、実際の「本」を手にして、場所や
姿勢にこだわらず、どこでも読めるという習慣が強
いからでは、ということでした。その意見は、僕も
常日頃よく目にします。