「マトリックス」シリーズのウォシャウスキー兄弟監
督による新作実写版映画の製作も(たぶん)順調
で、先日もティーザー予告編が公開された、英語
版「マッハGOGOGO」こと、「SPEED RACER」(映
画公式サイト)ですけど、その影響もあるのか最近
メディアに登場することが多いのが、英語版アニ
メでかつて声優を務めた、Peter Fernandez ピ
ーター・フェルナンデスさんとCorinne Orr コリー
ン・オーラさんですね。
ピーターさんは主役のスピード(日本版の三船剛)
とレーサーX、そして英語版吹替のディレクターを
担当、コリーンさんはヒロインのTrixie(志村ミチ)
と、Spritle(三船くりお)、そして女性キャラ全てを
演じています。
ウォシャウスキー監督版「SPEED RACER」にも、
ピーターさんはテレビのアナウンサー役でカメオ
出演されている、とのことです。残念ながらコリー
ンさんには、声がかからなかったとか。
お2人が登場する、最近見かけた記事・ポッドキ
ャストを並べてみると、
・12月7日
ポッドキャストAnime Today第55回
(ピーター・フェルナンデスさんのみ)
・12月9日
ToonZone記事――ニューヨーク・アニメ・フェス
ティバルでの、2人によるパネルのレポート
・12月9日
IFC News撮影による、上記パネルのYouTube
動画
・12月20日
ポッドキャストThe Bat Segundo Show第164回
・12月25日
ToonZone記事――NYAF時に行われた独占イン
タビュー
などがまず見つかりました。
直接出演されているわけではないですが、ポッ
ドキャストGeekNightsの12月12日放送分でも、
キャスターの2人リムさんとスコットさんが、NYAF
の会場でピーターさんとコリーンさんと会った時の
模様を語ってくれてもいました。
一見普通のおじいちゃんといった感じのピータ
さんが、喋ると素晴らしく渋く格好いい声を今で
も発してくれることに感激したようですね。
また、僕自身はまだ直接視聴出来ていませんが、
アメリカで12月17日に、ケーブル局のStarzで
放送された1時間のドキュメンタリー番組、
「Anime: Drawing a Revolution」にも、ピー
ターさんは出演されていたようです。
ドキュメンタリーといえば、以前にも紹介した、
アメリカのアニメ・マンガファンがテーマの「Otaku
Unite!」(公式サイト)にも、お2人は出演して、コ
メントを残してくれています。
日本Amazon経由でもまだ入手可能のようです
が、発売元のCentral Park Mediaがどうなるか
わからない状況ですし、興味のある方は急いだ
方がいいかもです。作品についての詳しい解説
は、ceenaさんのページで。

お2人とも、もう何十回となく繰り返してきたお話
かもしれませんが、やはりアメリカでの日本製テ
レビアニメ初上陸期の、「鉄腕アトム」「鉄人28号」
「マッハGOGOGO」「海底少年マリン」といった
作品の英語吹替制作をめぐるエピソードは、とて
も興味深いです。
(ピーターさんは「モスラ」の英語吹替にも参加
しているのですが、「スタートレック」のスールー
役で知られるジョージ・タケイさんが、同じく東宝
特撮の「ラドン」の英語吹替に参加した際の状
況が、タケイさんの自伝「星に向かって―ジョー
ジ・タケイ自叙伝」で詳しく語られていましたので、
そちらも当時の状況を知るのに役立つと思います)。
ピーターさんとコリーンさんの発言を比較してみ
ると、ディレクターとライターも兼任していたピー
ターさんの方が、より俯瞰的な視点から語ってい
るのが面白いですね。
今のアニメ英語吹替は、声優さんが1人ずつ録音
ブースに入って、個別のスケジュールで収録して
いくわけですが、60年代当時は、キャストがみん
な集まって一度に(1話につき7〜8時間)収録し
ていく方式だったそうです。
両者を比較すると、という質問にピーターさんは
ディレクター視点から、個別収録の方が、役者は
自分の演技だけに集中出来るし、他のキャストと
お喋りしたりして無駄な時間をつくることもない
から、コストの面から言っても合理的だという発
言をされています。
それに対してコリーンさんが、1人では寂しいし、
他のキャストがどんな人かは知りたい、ひょっと
したら一生会わないかもしれないし、と感傷的な
ことを述べると、「(吹替という仕事で)君が一緒に
仕事をする最も大事な相手は、スクリーンの中
のキャラクターだよ」とピーターさんが答えるのが、
なんだか格好よかったりもしました(The Bat
Segundo Show)。
現在、「SPEED RACER」のメインキャストで存命
しているのは、お2人の他にはもう、Chimchim
(チンパンジーの三平)役のJack Grimesさんだ
けだそうですが、高齢で健康がすぐれない様子の
氏は、もうコンベンションなどに参加出来るお体で
はないとのことです。
「SPEED RACER」のギャラは、いわゆるバイアウト、
つまり再放送や映像ソフトからの収益からは一切
配分されない、その時だけ払われるもので、その
後長く続いた作品の人気にも関わらず、お2人に
とって金銭的にメリットはほとんどなかったようで
すが(英語版主題歌の作詞に関わったピーターさ
んへの印税が、唯一のもの)、その代わりに、様々
な場所でファン達から、今でも送り続けられる愛情
と感謝と関心が、他の誰にも得られない報酬だと、
コリーンさんは語っています(ToonZoneインタビュ
ー)。