4月30日付け記事で、海外と日本の作家さん
による百合・レズビアンコミックアンソロジー
「Yuri Monogatari 5」を紹介させてもらった
わけですが、そのYuriconの代表であるErica
Friedman エリカ・フリードマンさんから、ALC
(AniLesboCon) Publishingの出版物複数
冊が、どさりと国際郵便で届きました。紹介はし
てみるものです。
というか実際の経緯は、読んでみたいと思った
ALC Publishingの本が、日本からだと入手し
づらい様子なので、どうしましょうと、出版人で
あるエリカさんに尋ねてみたら、ご好意で、他の
お薦めの本ともまとめて、日本の僕のところまで
直接送ってくれたのですね。とてもありがとうご
ざいます。
さすがに全部英語の本なので、ぼちぼち読み進
めて、いずれレビューが出来るようなら書いて
みたいです。
その中の1冊が、エリカさんご自身が執筆され
た小説の「Shoujoai Ni Bouken: The
Adventures Of Yuriko」になります。
これは、YuriconとALC Publishingのマスコ
ット・キャラである「Yuriko」を主役にしたもので、
舞台は日本。Yurikoはレズビアンのポップ・アイ
ドルで、テレビのリアリティ・ショーのために、ある
高校に転入して、そこで起きるドラマとロマンス
……みたいな内容のようです。
で、日本語ネイティブの方なら、「Shoujoai Ni
Bouken」というタイトルを読むと、ちょっと首を
傾げてしまうと思います。
これを、日本語をそのままローマ字表記したもの
だとして読むと、「少女愛に冒険」となってしまい、
副題の「The Adventures Of Yuriko」(ゆりこ
の冒険)に対応させるにはおかしい。
「Ni(に)」は「No(の)」にして、「Shoujoai No
Bouken」――「少女愛の冒険」にしないと、日本
語として不自然なのでは、という疑問ですね。
一方で、ご存知の方も多いように、エリカさんは
日本語もとてもお上手です。交流の一番最初に
いただいたメールは、日本語で届きましたから。
そういうエリカさんが、こんな初歩的な文法ミス
を、他ならぬ作品タイトルで犯すとは考えにくい。
これは、意図的なものだろう――というのが、か
ねてよりの僕の考えだったので、今回のことを機
会に、直接質問してみたのです。
エリカさんから許可をいただけましたので、その
メールのやりとりの一部を紹介してみますが、や
はり「No(の)」ではなく、「Ni(に)」を用いたのは、
意図的な行為だったそうです。
いわく、
(一通目のメールより引用)
「それには、ちょっとした狙いがあったことを認め
ますね。(日本の)同人誌を集めていた時に気づ
いたんですけど、たくさんのタイトルが、あんまり
正しいとは言えない英語で書かれていたんです。
そのことは、ずっと面白いと思っていました。
この物語のタイトルを決める際になって、その時
は実際に出版することなんて考えてもいませんで
したから、『正しいとは言えない日本語』を使った、
ちょっと遊んだ名前にしてみたんです。続編でも
同じことをしてしまいましたし、あるいは考え直す
べきだったかもしれませんけど、もう遅過ぎでし
たね」
(二通目のメールより引用)
「わざわざ間違った言い回しを選ぶなんて、確かに
変に思われてしまうかもしれませんね。でも、同人
誌やマンガ、アニメのタイトルで、全然意味のわか
らない(英語の)フレーズが使われているのを、私は
ずっと不思議に思っていたんです。どうして、そんな
言葉を選んだんだろうって。だから、私は同じことを
逆にやってみることに決めたんです。そうしたら、
どんな風に感じるのかわかるかもと思って。
確かに、言語のルールから自由になれるのは、ちょ
っと気持ちいいことかもしれません。今なら、それが
もっと理解出来るようになりました」
というコメントをいただけました。
一通目で言及している続編とは、「Saiyuu no Ryokou」
というもので、いわゆる「西遊記」を、あえて変に
適当な日本語「西遊の旅行」にした、ということです。
英語ネイティブから見た時の、日本人の変な英語の
使い方の逆バージョンということで、役立つ例になっ
ているとも思います。
日本のアニメやマンガ作品の中で、ネイティブの人
からすると正しくない英語の使われ方がされること
があるのは、度々指摘されることですよね。
エリカさんは、それを茶化したり馬鹿にするのでは
なく、むしろそういう使い方にクールさを感じて、自
分の作品でも同じように、あえて間違った日本語を
タイトルとして使ってみた、ということのようです。
そういうスタンスをクールと感じるかどうかは、各
個人の受けとめ方しだいですが、そもそもが内輪
のメーリング・リスト内で発表されたファンフィクシ
ョン的小説だという、この作品の出自を考えれば、
僕個人的にはオーケーの範囲内ですね。
ただまあ、そういう経緯やエリカさんの意図を知ら
ないままに、「日本語として間違っている」と批判
されたら悲しいので、今回僕からも、解説をさせて
いただくことになりました。
とまあ、これくらいでいいでしょうか、エリカさん。
お役に立てたなら幸いです。

