(公式サイト)は、第8話「シロップと謎の手紙」を見ました。
……見ましたが、今回書くのは本編の感想じゃなくて
(すみませんっ)、りょうさんの方の第8話感想寸劇の
勝手なサイドストーリーになっています。じゃあ、こっ
ちの2人はその状況をどんな風に見ていたのかな、
っていう。こちらも勢いです勢い。あ、りんちゃんはど
こかのグラウンドで、爽やかな青春の汗を流している
だろうってことで(笑)。
映画の方は……、見たいですけれど、週末にならないと、
ちょっと見るのは無理みたいです。すみません。せっか
く見るのなら、落ち着いた心持ちじゃないともったいな
いですし。
「ソルフェージュ」は全ルート終了していますけれど、
コメントはどうしようかな、という感じです。あれです、
例によって大人気ない反応になってしまうので(笑)。
あ、やっぱり「アオイシロ」の前に、「カタハネ」を終わ
らせちゃうべき、みたいですね。
色々ありますけど、出来る範囲でぼちぼちと、はい。
「それにしても、すごい騒ぎになっちゃったねー」
「はい。今日は学園中が、なんていうか、夢見心地
の空気でいっぱいだったという感じでしたね」
「そうそう。やっぱりかれんさんの人気はすごいよ」
腕を組みながら頷いてみせるのぞみの横顔を、うら
らは温かく見つめる。知らずに微笑が浮かんでしまう。
サンクルミエール学園の制服姿の2人がゆっくりと
歩を進めているのは、放課後の、学園内に張り巡らさ
れた緑道のひとつである。まだ陽は高く、夕刻の雰囲
気は薄い。よく刈り込まれた木々を揺らし吹き抜ける
風も心地よい。
いつもなら、他の3人と共にナッツハウスに向かう
ところなのだが、りんは大会をひかえたフットサル部
の特別練習、かれんは生徒会の会合、こまちは図書
館への新規図書搬入の受け付けと整理、ということで
それぞれに忙しく、のぞみとうららだけで、なんとはなし
にしばらく学内を散策することにしてみたのだ。
多忙な自分にもかかわらず、こういう日にだけ仕事
もレッスンもスケジュールに入っていない幸運に、うら
らは感謝し、胸ときめかせていた。
のぞみが語っているのは、今日から一週間の期間
限定で始められたイベントのことである。
生徒会への目安箱に寄せられたリクエストのひとつ
に、「敬愛する生徒会長である水無月かれんを、『お姉
さま』と呼称することを許してほしい」というものがあり、
あっさりと学園理事長からの許可も出て、今日から1
週間だけ、かれんは「水無月会長」ではなく、「かれん
お姉さま」と呼ばれることになったのだ。
そのことで、学園は今日の朝から一種異様な雰囲気
に包まれていて、「お姉さまが――」という囁きを、うら
らはいたる所で耳にしていた。
カフェテリアでの昼食の際も、かれんの食事の邪魔
にならない範囲で気をつかいつつ、様々な理由で、か
れんに声をかけてくる生徒がずっと続いた。「明日か
らは、整理係が必要かもね」とぼやいたのはりんだ。
「何人がかれんさんに、『お姉さま』って声をかけてく
るのか、途中までは数えていたけど、すぐあきらめち
ゃったよ」
「クス。学園の1、2年生のほとんど、くらいの勢い
でしたね」
「でもかれんさんは偉いよねー。その全員に、ちゃん
と目を見て挨拶を返していたし。『お姉さま』も、文字通
り様になってるっていうか。ずっと続けてもいいかも?」
「かれんさん御本人は増えた交流を喜ぶ一方で、かな
り気恥ずかしくもあったようですけど」
「そうかなー。私なんか、そんな風に呼ばれても、そ
もそも似合ってないから、恥ずかしくなんて最初からな
らないかもね。あはは」
「――!」
その、のぞみの言葉を受けて、うららはふと秘密のこ
ころみを思いついた。
胸に手を当て、深呼吸をゆっくり数度繰り返す。
そして澄んだ空を見上げているのぞみの横顔にそっ
と視線を向け、
(のぞみお姉さま――!)
と、心の中だけで呟いてみる。
その瞬間、とんでもなく大きな感情が胸の中にわき
あがり、心臓が揺さぶられるような気持ちになった。
頬が火照り、耳まで真っ赤になってしまったことも自
覚する。
「うん?」
視線に気づいたのぞみと目が合うと、さらに鼓動が
跳ね上がる。気恥ずかしさでいっぱいになったうらら
は、慌てて顔を下げた。足元までおぼつかない。
「どうしたの、うらら? 顔、真っ赤じゃない」
首を傾げたのぞみは、うららの顔を覗きこんでくる。
息がかかるくらいに、瞳と瞳が近づく。
「だだ大丈夫ですっ! 何でもありません!」
うららは思わずのぞみに背を向けて、ごしごしと両
手で顔をこすってしまう。仕事でも、こんなに胸が高
まってどうしようもなくなったことはない――。
「――? 変なうらら」
幸いにのぞみはそれ以上追求してこなかった。
必死に呼吸を整えながら、今日かれんに「お姉さま」
と声をかけた女生徒達の中にも、今の自分と同じよう
な心持ちだった人がいたのだろうかと、うららは不意
に思い至った。
全生徒からの尊敬を集め、憧れの的であるかれん
に直接呼びかけるのに、それこそ一生に一度の勇気
をふりしぼった子もいるだろう。
優しく挨拶を返してくれたかれんの笑顔が、一生の
宝物になった子もいるだろう。
それぞれが、どれだけの想いを、「お姉さま」という
たった一言にこめていたのだろうか――。
そう考えると、想い人こそ違え、熱い視線を向けて
しまう、唯一無二の人と出会ってしまった者同士とし
ての、不思議な共感、連帯感のようなものを、うらら
は胸の中に感じてしまっていた。
(みなさん、今日からの1週間を大切に、そして頑
張ってください――。私も頑張りますから)
名前も知らない、たくさんの「ともだち」に、心の中
でエールを送ると、うららは弾けるように振り返り、待
ってくれているのぞみの許に駆け寄った。いまの自分
に出来る、一番の笑顔を浮かべながら――。
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