引き続き、アメリカでのアニメ声優さんに関する話
を続けますね。今日はユニオン(組合)について。
アメリカにおける、声優さんを含む声を使った職業
全般の情報を提供し支援しているStarsnSites.com
によりますと、そういった人々が所属しているユニ
オンは主に、
SAG - Screen Actors Guild(映画俳優組合)
AFTRA - American Federation of Television
and Radio Artists(アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家
連盟)
の2つであり、加盟者は全米で合わせて13万5000
人に及ぶそうです。
ユニオンに加盟する利点は、
・適正な収入がちゃんと契約通りに保証される
・健康保険&年金
・ユニオンに加盟していることで、タレントとして
の「格」も得られる。メジャーな作品への出演も
可能になる。
であり、逆に不便な点は
・ユニオンに加盟していない会社や、インデペンデ
ント作品での仕事は出来ない。
・地方での、マイナーなコマーシャルやナレーション
の仕事は、大抵がノン・ユニオンなので、そういう
小さな仕事が出来ない。
という感じですね。
加えて、ユニオンに加盟したままでノン・ユニオン
の仕事は出来ないかというと、実はそうでもなく、
ユニオンの事務に自分は「financial core」の立場
でいたいと申告すれば、可能です。
「financial core」は、保険や最低賃金の保証といっ
た、基本的なユニオン・メンバーの権利を保ったま
まで、ノン・ユニオンの仕事に携わることを承認す
る制度ですが、その一方で、ユニオンの代表を選
ぶ選挙での投票権や、行事への参加権などは失っ
てしまいます。
だから、名前を隠して変名で出演する声優さんの
場合は、「financial core」の立場になってユニオン
・メンバーとしての権利を失うのは困るが、とにか
く仕事をしてお金を稼がなくてはいけないという
辛い状況なんでしょうね。
この、「変名で声優さんが仕事をする理由」につい
ては、AnimeOnDVDの「Lost in Translation」という
コラム(2003年5月12日掲載)でも、ファンからの
質問に答える形で述べられています。
アニメの英語吹替に関わっている会社の全てが
ユニオンに加盟しているわけではないので、生活
のためにどうしてもノン・ユニオンの仕事をしなくて
はならない時には、ユニオンにわからないように
(発覚すると罰金を徴収されます)偽名を使う、
という答えですね。
でもまあ、ファンが気付くんだからユニオン側が気
付かないわけはない、とも思いますが。
さらに、この種のノン・ユニオンの仕事は、スタジ
オの拘束時間に対する時給のみが支払われて、
ユニオンの仕事だと発生するresiduals(追加出演
料)もない、「buy-out」という契約になります。
ユニオンの仕事だと、アメリカのテレビ放送では多
いリピート放送が重ねられるたびに、声優さんにも
residualsが支払われるわけですが、buy-outの、
例えばDVD作品での吹替だと、どんなにDVDが売
れても、声優さんには最初に受け取ったギャラ以上
のお金は全く入ってこないのですね。
逆にいうと、それがわかっていても、名前を隠して
ノン・ユニオンの仕事をしなくては生活出来ない声
優さんの経済状況は……ということですね。
では、アメリカで放送・販売供給されている日本
アニメ作品のうち、どれがユニオンを通した作品
なんでしょうか。
Animation World Magazineに、2004年7月28日
付けで、ベテラン声優Lia Sargentさんがアメリカ
でアニメ声優として食べていくためのアドバイスを
述べた、「Making a Living in Voice-Acting」という
記事が掲載されていました。
その中で、テレビで放送されるアニメーション、
土曜日の午前中に放送されるような作品は、全て
ユニオンのSAG作品であるという発言があります。
あとは作品ごとのクレジットで確認するしかあり
ませんが、声優さんが偽名で出演するような作品、
上のAnimeOnDVDの記事で名前の出ていた「Dual」
(デュアル! ぱられルンルン物語)なんかは、ノン
・ユニオンの仕事だったと考えていいんでしょうね。
ただしユニオンの仕事であっても、日本アニメのギ
ャラは相当に安いようです。
Hero Realmが2004年12月22日付けで掲載してい
た、コンベンションOtakuCon2004の取材記事の中で、
匿名の声優さんからのコメントとして、「最近アメリカ
製のアニメーション映画の仕事を4時間だけやったん
だけど、そのギャラは、僕が関わってきた主なアニメ
・シリーズ2年分のギャラを、全て合わせたのと同じ
くらいだったよ」と語られていました。
また、プロモーターがすべての出費(食費・宿泊費)
の面倒を見てくれるコンベンションは声優にとって
ありがたい仕事だということ、近年のアメリカのア
ニメ業界は、カナダ人よりもさらに安いギャラで雇
えるアメリカ人の声優を使う傾向にあること(つまり
さらに経費削減したがっている)、アニメ声優の不
遇に、ユニオンのSAGは何もしてくれないこと、など
も述べています。
Lia Sargentさんの記事内で、1人のレギュラー・
キャストが、通常の30分(実質22分)のアニメ作
品3エピソードを収録するのに要する時間は、
約2時間くらいだと述べていました。
アメリカのアニメ・アフレコは日本と違って声優
さんが一人ずつ個別に収録していくので、スピー
ディーに進められるのですね。
先日の、アニメ・アフレコのギャラは、ユニオン
経由でも、時給60ドルという情報をそのまま当て
はめると、ワン・シリーズ、2クール26話を収録す
るのに必要な時間は17〜18時間で、合計すると
ギャラは約1000ドル(11万5000円)くらいですか。
シリーズ丸々関わってもこのお金というのは、
確かにかなり厳しそうです。そんなに毎回毎回
レギュラー・キャラを演じられるわけでもないで
しょうし……。
調べると、どんどん大変そうな事情ばかりが見え
てきますけれど、ともあれこのテーマは今後も引
き続き調査していきたいと思います。よいしょっ。

