DVD視聴をしている、「プリキュア」シリーズ第1作目
の「ふたりはプリキュア」(公式サイト)は、第8巻収録
の第31話「マジ家出? ポルンはいったいどこー!?」
まで見ています。
ここまでの物語への、全体的な評価・作品論みた
いなことは、また別にやるかもなんですけど、今日
のところはちょっと違う切り口になりそうです。

この1作目を見ていて一番強く感じるのは、主人公
である美墨なぎささんと雪城ほのかさんの立場にお
ける、孤独でしょうか。
2人とも、家族や学校・クラブの仲間はそれぞれい
ますけれど、それはあくまで日常サイドのみの関係
でしかありません。
非日常サイドからプリキュアを支えるメップル・ミップ
ル・ポルンも、基本的にはサポート役の域を出ず、
守る対象でもあって、2人と対等な関係とは言えな
いと思います。
正義のヒーローを支える役割意識は、もちろん悪い
敵を倒すことですが、この作品のストーリー構成で
は、通常なら終盤で対峙するだろうラスボス・ジャア
クキングを、半ば(第26話)で一度倒してしまってお
り、ゴールに到達したにもかかわらず、それでもど
うやら戦いは続いていくらしいという、先の見えない
重苦しい不安が、続く第28話において実にシリア
スなトーンで描かれていました。
現状では、なぎささんもほのかさんも、精神的には
いっぱいいっぱいで、その上ポルンによって、さら
なるストレスを与え続けられているなぎささんは、
心底気の毒に思います。
それでも2人は、ほのかさんが「私だってなぎさが
いてくれなきゃ、バラバラになっちゃいそうなほど
不安なのよ……」と呟くように、お互いだけを頼り
に支えあって、これからも「出来るからやらなくちゃ
いけない」戦いを続けていくしかないのです。

2人だけで戦わなくてはならないのは、次作の
「Splash☆Star」も同様なのですが、異なるのは
満・薫という、もう一組の「ふたり」の存在です。
満・薫をめぐるプロット自体は、初代でのキリヤ君
のお話の焼き直しではありますが、本筋としてよい
くらい、語り口に格上げがされています。
物語構造でいうと、劇中での満・薫の最大の役目
は、主人公である咲・舞に対する、段階を経た対
等な立場の理解者、ということですね。
そういう2人がいてくれた「SS」の咲・舞のプリキュ
アコンビは、(初代第31話までの)なぎささんとほの
かさんのようには、孤独ではないといえます。
「SS」第14話から、夕凪中学に転校してきた満・薫
は、当初は敵としてのプリキュアのみを観察してい
くわけですが、次第に、プリキュアとしてだけでは
ない、普通の人間としての咲・舞に魅せられていき
ます。
ついに薫が、咲のことをプリキュアではなく、名前で
呼んでしまった時の(第22話)、咲の感じた嬉しさは、
見ている側も感情移入出来るものでした。
満・薫は、1クールを費やした過程を経て、プリキュ
アとして戦い、そして普通の中学生としての生活を
送る、咲と舞の全てを知った上で、彼女達の友達
になることを選択します。
そして咲・舞の方でも、満と薫がダークフォールの
戦士だと知っても、それまで築き上げてきたと信じ
る2人への友情が揺らぐことは全くありませんでした。
特に後半は、伝説の戦士プリキュアとしての義務
以上に、「もう一度満と薫に会う」という個人的願い
が、咲・舞の戦いを支えていたと思います。
だからこそ物語が、「強い気持ちを持ち続けてい
れば、きっと願いは叶う」という咲の言葉通りの、
希望をずっと失わずに前向きでいられる、「Splash
☆Star」独自のまっすぐでポジティブな世界を創
りあげられたのでしょう。
全てを知り、別離の時期も再会を信じて耐え抜き、
乗り越えてきた4人だからこそ、それ以上は望めな
いレベルの対等な「友達」になれたのですし、そうい
う4人が肩を並べて挑む(姿までそろえて!)、最
終決戦の盛り上がりが描けたのだと思います。
満・薫は、理解者として咲と舞を支えるだけでなく、
作品世界をも支えてくれていたのです。
そういうキャラの配置が、「Splash☆Star」の、
作品としての成功要因のひとつであることは間違
いないですね。

そこまで到達した「SS」を経験してしまった後だと、
全てを受けとめてくれる、満・薫のような対等な理
解者を得ず、2人だけで戦い抜かなくてはならない、
初代のなぎささんとほのかさんにも、誰か支えてく
れる人がいてくれたらなあ、とつい思ってしまいます。
2人には、咲・舞の「満と薫のため」のような、戦い
続けるための個人的な強い理由も与えられていな
いわけですし、光の園も蘇った今、とにかく戦いを
終わらせる、以上の目的がありません。
ただ、逆にいえばそれは、他に頼るべき者のない、
この世でたった2人だけの、「私とあなた」のプリ
キュア物語が描ける、ということでもあります。
お互いがお互いを支えるしかない、自分がいなくな
ったり、相手の助けになれないことがあったりして
は絶対にいけない、という強迫感の方が、今は強い
かもしれませんけど……。
なぎささんが、絶望しそうになっても、誰にもその気
持ちを吐き出せず、「しっかりしなきゃ」と自分で自
分を励ますしかない姿を見せられる度に、やるせな
くなり、エンターテインメントの爽快感からは、程遠
い気分になる、というのが、個人的な心情としては
正直なところかもしれません。
ここまで2人を追いつめて、なお解決に導くような、
物語のキャパシティがどこまであるのかはわかりま
せんけれど、なぎささんとほのかさんの「ふたり」だ
からこそ出来るなにかに、いつか到達することを、
心から願ってやみません。
続く「Max Heart」は、まだどうするか不明ですが、
この第1シリーズは、最後まで見届けたいと思います。
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