というわけで、さらにさかのぼり、「プリキュア」シ
リーズの第1作目にあたる「ふたりはプリキュア」
(公式サイト)の、第1話「私たちが変身!?あ
りえない!」から、第4話「ミラクル!?生きてい
る美術館」までを見てみました。
そうですね、第1話で比較してみると、同じファー
スト・エピソードでも、「Splash☆Star」の完成度
と洗練は、この初代シリーズが2年間を費やして、
ある程度「プリキュア」としての世界観を構築して
くれていたからだと、あらためてわかります。
つまり、見る側も作る側も、プリキュアが何かと
いうことは把握しているし承知しているので、
初めてプリキュアに変身してしまうという、日常と
非日常の融合にも、「SS」の場合は手際がとて
もよかった。
一方の、この初代「ふたりはプリキュア」において
は、プリキュアがなんであるかは当然視聴者は知
りませんし、作り手にしてもこれから創り上げて
いくのだという、一種の手探り感みたいなものを、
作劇から読み取れます。
むしろその事は、プリキュアへの変身がお約束とし
て簡単に受け入れられた「SS」の咲と舞とは違い、
中学生としての日常と、プリキュアとしての非日常の
狭間で戸惑い悩む、この作品の主人公、美墨なぎ
ささんと雪城ほのかさんの、気持ちの段階が描かれ
ていくということでもあって、「SS」では語られなかっ
たお話としての、楽しみはありますね。
2人の関係性においても、4話を経過して、いまだに
苗字で呼び合う辺り(「SS」では第2話で早々に名前
で呼んでいました)に、描き込みようがあるでしょう。
何話から、ファースト・ネームで呼び合うようになる
のか僕は知らないので、その瞬間までのドラマを、
とても期待しています。
なぎささんとほのかさんという、この作品の主役
コンビも、その魅力において問題ないですね。
特に、弟をこっそり苛めたりするなぎささんの行儀
の悪さ(笑)は、これまでの主人公にはなかったタイ
プなので、違う形でのドラマも色々と語ってくれそう
です。
事前に懸念が少しあったのは、ほのかさん役の声
優であるゆかなさんの、個性的な声質だったんで
すけど、キュアホワイトに変身しても、立派に凛々
しさを感じさせてくれる演技を披露してくれていまし
たから、合格点ですね。
「Yes!プリキュア5」「Spalsh☆Star」とさかのぼっ
て、「プリキュア」シリーズを比較してみると、色々と
面白い見方も出来ます。
例えば、「ふたりはプリキュア」第4話「ミラクル!?
生きている美術館」は、美術館への社会見学とい
うエピソードで、なぎささんとほのかさんの2人は、
見学委員としての役目を与えられます。
その役目は、2人がプリキュアになってから、それ
までは友達でもなんでもない、単なるクラスメート
だった2人が、プリキュアとして以外に、初めて2
人でする共同作業になりました。
それで思い出したのが、「Yes!プリキュア5」第28話
「こまちの夏祭り奮闘紀」。
そのお話でも、回想シーンで社会見学が引き合い
に出され、それまでは単なるクラスメートだった、
かれんさんとこまちさんが、2人でその実施に奔走
することで、親友としての繋がりが生まれるきっか
けになった、ということが語られていました。
なので「プリキュア」第4話でも、同様の展開が描か
れるのかとも思ったわけです。
けれど、相談を口実に、なぎささんがほのかさんの
家を訪れる展開にはなりましたが、見学委員として
の役目が、2人の関係を深める役割を果たすわけで
もなく(むしろ途中で役目を放棄していたような……)、
2人で作った筈のしおりも、その制作過程が描かれ
ることはありませんでした。
ただ、ほのかさんの、「私のお城」と称する私的な
生活圏に、他者であるなぎささんを、初めて招き入
れた、という意義はあったかもですけど。
それはそれで、とても意義あるアプローチです。
これは、僕の場合シリーズをさかのぼって見てしま
っているから、「プリキュア」第4話での描写を少し
残念に思ってしまったわけですが、これが、放送順
に見ていたらどうでしょう。
「プリキュア」第4話も、それはそれとして受けとめ
られたでしょうし、「5」第28話で、もう一度社会見学
という道具が持ち出され、今度はキャラの関係性構
築において重要な役割を果たしたことを、語り口の
深化・成長として受けとめたと思います。
特に「5」は、テーマ論が台詞でも前面に押し出さ
れていることで、中学2年生としての日常を消化す
ることで精一杯かつ満足していた、「SS」、そして
多分初代「プリキュア」よりは、語り口が深く難しい
ものになっている面がありますし。
だからといって、初代が「5」に作品として劣ると
いうわけでは決してなく、わかってくるのは、
「プリキュア」シリーズの中でもそれぞれ異なる、
語り口のキャパシティということです。
つまり、初代では、社会見学委員という立場を、
物語の主筋である、なぎささんとほのかさんの
2人の関係性にまで絡めて語ることはなかった
けれども、「5」では、かれんさんとこまちさんの
関係性の構築に生かすことが出来た。
なので初代では、主役2人の関係性の構築を描
いていくのに、もっとふさわしい舞台が用意出来
るだろうと想像するのですね。
その一方で、クラスメートの域を超えて協力し合
わなくてはならない社会見学のための準備という
状況を、「5」では忘れ去ることなく、あらためて生
かすことが出来ているという、中学生生活の中で
のリアリティの継続に納得も出来ます。
「プリキュア」シリーズが面白いのは、中学2年生
という、限定された期間の中で(「Max Heart」
「Go!Go!」は3年生ですけど)繰り返される日常を、
それぞれ異なる世界観と文体を通して、何度も描く
チャンスが与えられている点です。
上に挙げた社会見学のように、前の作品で用いら
れた舞台道具が、別の作品で、違う形で用いられ
たりする。
同じ「プリキュア」シリーズであっても、キャラクタ
ーの人格造形も語り口も、それぞれ異なるのです
から、作り手がそれをちゃんと把握している限り、
決して焼き直しということにはならない筈ですし、
その違いこそが、パターンに陥らない面白みを生
んでいくとも思います。
それぞれの作品で出来ること、出来なかったこと
を比較しつつ、作品にふさわしい文体・描き方と
は何かを考えていくために、本来は女子児童向
けであるという、とても狭い枠の中で語られていく
「プリキュア」シリーズは、格好のサンプルになる
と思います。
あ、作品そのものも、楽しむのに十分な魅力を備
えてもいますし、見続けていくだけの価値はありそ
うですね。さらに楽しみです。
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