2005年10月02日

ファンサブ合法化を目指す会社IADに対する、海外アニメファンの反応


久々ですが、海外情報を少しだけ。
お休みしている間も気にして情報を眺めていたの
が、ファンサブを合法化することを目的とした新
会社International Anime Distribution(IAD)に対す
る、アメリカのアニメファンからの反応です。

IAD公式サイト
http://www.animedist.com/index.php

ポータルサイトの「Sub4Sale.com」
http://www.subs4sale.com/

「The Anime Place」9月21日掲載の、IADのオーナ
ー・William Honaker氏と、CIO(最高情報責任者)・
Tom氏へのインタビュー
http://www.theanimeplace.com/interviews/1/

「英語で!アニメ・マンガ」さんの、9月21日付けの
記事
「“ファンサブ”の合法化:ファンによる字幕付違法ア
ニメを合法化する試み。」


「アニメ!アニメ!」さんの9月22日付けの記事
「ファンサブをライセンス化する新会社設立」


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ファンサブとは、ファンが自主制作し自主配信してい
る、字幕付きのアニメのことなのですが、その存在の
合法性と効用を巡っては、常に議論されてきました。
ちなみに、名著「アメリカで日本のアニメは、どう見ら
れてきたか?」の草薙聡志氏によれば(P115)、


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「結局、口実はいくらでもある。では、『ファンサブは
非合法なのか』。答えは明快に『イエス』だ。
まず、米国の著作権法規にある著作権者の複製権、
二次的著作物の利用、公正な引用などに抵触する。
『文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条
約』で定める翻訳権、複製権、改作許諾権、著作者の
権利を侵害する製作物の差し押さえ等々にも、引っか
かる」


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との見解が示されています。
ただし現実に逮捕されたファンサブ製作者がまだいな
いことで、アメリカのファンの間では、「ファンサブは、法
的にはグレイゾーンの存在」という認識も強いようです。


全米で30万人とも50万人ともいわれるコアなアニメファ
ンのうち、どれだけの数が実際にファンサブを視聴して
いるのか、把握するのは難しいです。
少し前ですが2003年11月28日に、Anime News Network
が行ったアンケート調査、

「Do you download fansubs, and do you buy the licensed
release?」
(ファンサブをダウンロードしますか、それとも正
規にライセンスされた商品を購入しますか?)

によると、その後の対応に違いはあるにせよ、とりあえ
ずファンサブをダウンロードして見ると答えたファンの割
合は、3038人中の82.5%、2507人に達しています。
ファンサブは違法であるという罪悪感が強い人は、あま
り積極的に、この種のアンケートに答えたりはしないでし
ょうから、「ファンサブを見ている」と答えられるファンの割
合がこれだけ高いことは、ファンサブに対する、違法性の
認識の薄さも示していると思います。


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今回のIADの立ち上げは、そんなファンサブを合法化し、
より健全に、海外にアニメを発信していく方法をビジネス
として確立させよう、というものですね。
今現在、ファンサブのほとんどは無料で配信されている
わけですが、合法化された際の料金設定は、

・新作テレビアニメ 1エピソード 2.99ドル
・旧作テレビアニメ 1エピソード 1.99ドル
・公開後1年以内の、新作劇場映画・OVA  9.99ドル
・旧作劇場映画・OVA 4.99ドル

ということになっています。
アメリカでのアニメDVDの価格が、日本の半額くらいであ
ることを考えると、アメリカのアニメファン的には、そのまま
日本円に換算したのよりは、感覚的にもう少し高く感じる
でしょうね。新作DVDレンタルの料金で、新作エピソードを
1話見られる、くらいでしょうか。


現在のファンサブも、日本での放送から数日くらいで、字
幕をつけて配信されているのですが、IADでは、放送から
24時間以内の配信を理想としています。
もちろん、放送と同時に素材を入手するのでは間に合わ
ないので、事前に日本側の権利者から素材を入手し、合
意に基づくタイミングで配信したいそうです。


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このIADの登場を受けて、ネット各所のフォーラムでは、海
外のアニメファン達の間で、当然激しい議論となりました。
また、IADのCIOであるTom氏自らがフォーラムで積極的に
発言し、その目的の広報にも努めていたようです。
以下、ファンサブ合法・有料化というIADの方針に対する、フ
ァンの反応を、支持/肯定派と不支持/懐疑派に分けて、
ざっとまとめてみました。


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支持/肯定派

・違法行為をしているという罪悪感がなくなる。
・日本のアニメ業界に、直接貢献出来る。
・ファンサブ・グループの収入になる。
・収入の少ないティーンエイジ層のアニメファンを開拓出来る。
・海外で発売されそうにない旧作や、マイナー作品が見られ
 るようになる。
・ファンサブは、もはやアメリカでのビジネス展開のための指
 標としてはあまり用いられていない。
・統一されたルールが出来れば、ファンサブ・グループ間の
 不要な争いもなくなる。
・無料サンプルとしての役目は、充実した予告編や、最初の
 エピソードの無料視聴などのサービスで代替可能。


不支持/懐疑派

・DVD購入のためのサンプルとして、ファンサブはずっと無
 料であるべき。
・ファンサブは無料だから人気があるのであって、お金を払
 ってまで見続けるファンは多くないだろう。
・ファンによるファンのための無料奉仕であるファンサブを利
 用して、第三者がお金を儲けようなんて許せない。
・お金を払うのなら、素人のファンサブ・グループによるもの
 ではなく、プロによる翻訳を見たい。
・最近の、高沸しているというライセンス料に対して、ファン
 サブのダウンロード料金だけで利益が出せるとは思わない。
・価格が高過ぎ。
・日本での放送に合わせて合法ファンサブを配布するため
 には、事前に素材を日本側から提供してもらわなければな
 らないが、そんなに早く制作出来ているものなのか?
・プレスリリースには、初回放送直後に配布とあるが、日本
 ですらDVDが発売される前に、合法のファンサブの配布を
 日本側が認めるとは思えない。また、CSやCATVでの二次
 放送にも影響を与える。
・PCの画面でしか見られず、画質・音質でDVDよりも劣るクオ
 リティのファンサブにお金を払いたくはない。
・ファンサブ、そしてDVDと、2度もお金を払いたくはない。
・日本の業界への貢献は、DVD購入だけで十分。
・ファンサブ・グループがお金を稼ぎたければ、アメリカのア
 ニメ業界で働けばいい。
・全てのファンサブ・グルーブを参加させることは不可能で、
 無料で配布するグルーブは存在し続けるだろうから、ビジ
 ネスは成り立たない。
・新規参入であるIAEが、ネットでのライセンス契約を取り付
 けられる可能性は少ない。
・日本人はアニメを無料のテレビ放送でいくらでも見られるの
 だから、我々もアニメをまず無料で見る権利がある。
・これは日米の会社と政府機間が結託して、ファンサブ・グル
 ープを管理下に置こうという企てではないのか?


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意見を読んで思うのは、どんなことでもそうなんでしょうけれ
ど、一度手にした権利、この場合は無料で、日本での放送
直後にアニメを見られるという権利を諦めさせるのは、違法
性といった理屈とは関係なく、その感情面において、とても
難しいということですね。ファンサブが、ファンになった時か
らずっと普通にある、年少のアニメファンなら、なおのこと
納得しづらいでしょう。
「そもそも違法なんだから諦める」という選択肢を受容しない
ための自己正当化は、いくらでも出来るわけです。
僕個人の意見としては、日本も含む、放送直後のインターネ
ット流通を認める日本の権利者がそんなにいるとは思えない
ので、IADが成功する可能性はないと考えています。
ともあれしばらくは、成り行きを見守りたいですね。
posted by mikikazu at 11:22 | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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