というわけで、かねてより読み進めていたアメリカの
ベテラン・プロレスラーである、「ネイチャー・ボーイ」
ことリック・フレアー氏の自伝、「To Be The Man」
(Amazon)を読了しました。
スカパーのPPVで、氏のドキュメンタリー「リック・フレ
アー アルティメット・コレクション」を放送している間
に読み終えたかったのですが、ちょっと間に合いま
せんでしたね。
もちろん僕は、フレアー氏のレスラーとしての黄金
時代をリアルタイムで体験している世代ではありま
せんので(プロレスをちゃんと見るようになったのは、
90年代に入ってからです)、70年代から活躍し続け
ているフレアー氏の歴史を知ることによって、同時
にアメリカのプロレスの歴史も学べる、よい機会と
なりました。
例えば、1979年の初代「ネイチャー・ボーイ」バディ・
ロジャーズとの抗争劇の中で、ロジャーズがフレアー
氏に発したこんな台詞があります(P115)。
“Kid,there's only one diamond in this
business,and you're looking at him.”
(若僧、この業界にはダイアモンドはたったひとつ
しかない。それは、お前の目の前にいる、この俺様だ)
すぐに思い出した方も多いでしょうけれど、この台
詞って、今年に入ってからのWWE「RAW」のHHHと
バティスタの争いの中で、HHHが全く同じものを口
にしていたんですよね。
台詞自体には、さらに何らかのオリジンがあるの
かもしれませんが、ともあれそういったことからも、
プロレス・ストーリーの中での歴史を、色々な角度
から感じられました。
各時代に触れる中で共通しているのは、フレアー
氏の、トップ・レスラーとしての強烈な自負であり、
エゴであると思います。
それゆえに、プロとして足りないものがあると感じ
た他のレスラーに対する評は辛辣極まりないです。
氏の哲学は、見せかけの筋肉だけではなく、相手
を光らせるイン・リングのファイトがこなせて、かつ
お客を満足させてこそのプロ、というものですね。
また、自分のスター性を守るためには他人を利用
することを全く厭わないハルク・ホーガン、WCW時
代に自分を冷遇し、家族まで破滅させると脅迫して
きたエリック・ビショフに対しては、「決して許すこと
のない人間」と公言することもはばかりません。
いま同じ会社で働いている人間を、堂々と批判する
ことが出来るのが、フレアー氏のステイタスを示し
ているとも思います。
NWA〜WCW時代初期において、一世を風靡したス
ーパースターの座を確立するも、アメリカのプロレ
ス・ビジネスの変革の中で不遇と自信喪失の時を余
儀なくされたフレアー氏が、もう一度、自分が「ネイ
チャー・ボーイ」であることを証明するために、WWE
の「RAW」大会で、HHHの持つ世界タイトルに挑む場
面をクライマックスにした、感動的な構成でした。
もちろん自伝ですから、フレアー氏の主観を通して
いるわけで(ステロイド使用の告白もあります)、
他のレスラー、識者からは異論もあるかもしれませ
んが、読み応えという面では、鮮烈でした。
ひとつだけ残念なのは、NWA時代に、ザ・グレート・
ムタの名前でライバルとしてフレアー氏と戦いを
繰り広げていたという、武藤敬司選手について、ま
ったく触れられていないことですね。
試合の出場選手として、数度名前は記されています
が、パーソナルなエピソードや付き合いについては、
何も語られていません。
日本のプロレス・マスコミ報道だと、フレアー氏、
スティング、レックス・ルーガー、そしてグレート・
ムタが、NWA四天王として戦いを繰り広げた、とい
うのが当時のアメリカ・プロレスの歴史解説だと
思うのですが、当のフレアー氏にとっては、それほ
どの思い出にはなっていないようです。スティング
やルーガーについては、ちゃんと好意的なコメント
があるのですが……。

