2007年11月18日

「Manga: The Complete Guide」著者ジェイソン・トンプソンさんについて


これまでにアメリカで英訳出版されたマンガ900
作品以上を、全て紹介してしまおうという大著
「Manga: The Complete Guide」の著・編者
であるJason Thompson ジェイソン・トンプソン
さんが、10月5〜7日にかけてニュージャージー州
セカウサスで開催されたコンベンションANIME
NEXT(公式サイト)に参加した際の、1時間半近く
に及ぶパネルの模様が、ニューヨーク発のポッドキ
ャストNinja Consultantで、13日に公開されて
いました。


(本の内容については、
「でかだんびより:Dekadenbiyori」のNanatuha
さんが、2007年10月10日記事で既にレビューして
くださっていますので、そちらもご参照ください。
あ、出版がキャンセルされたのに掲載されている
「Nymphet/こどものじかん」については、急な話
で、本から外すのが間に合わなかったそうです)


6日土曜日の午後2時半から始まったトンプソンさ
んのパネルは、ご自身の経歴と、「Manga: The
Complete Guide」の出版に至った経緯、収録さ
れた実際の作品レビューの読み上げ、VIZでの編
集者時代の体験などを語る、充実したものでした。
冒頭で、Ninja Consultantのお2人、Erinさんと
Noahさんがエクスキューズを述べるように、録音
状態が良くない部分もあり、正直(僕程度のリスニ
ング能力では)理解が難しい箇所も多かったので
すけど。


トンプソンさんについては、盟友であり、マンガ部
門のレビューを担当している「OTAKU USA」編集
長のパトリック・マシアスさんが、ご自身のブログ
「An Eternal Thought in the Mind of Godzilla」
で語った、

「Jason Thompson Crowned Winner of the
Manga Wars!」(2007年10月9日付け記事)


そしてトンプソンさんの経歴だけでなく、アメリカに
おける日本マンガ出版の歴史も大きくまとめてみせ
た、The Comics Journal掲載のロング・インタ
ビュー、

「Jason Thompson」(2007年9月30日記事)


トンプソンさんご自身のMySpace
(マンガで出来たアパートに住んでいる男、だ
そうです)

などが、特に参考になると思います。
以下、上記資料を基に、トンプソンさんが
「Manga: The Complete Guide」を出版する
までの経緯を、簡単にまとめてみます。


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サンフランシスコ出身で今年33歳のジェイソン・
トンプソンさん(Jason B. Thompson)は、相当
に学業優秀な子供時代を過ごし、飛び級制度によ
って16歳で高校を、20歳でカリフォルニア大学サ
ンディエゴ校を卒業(95年)します。大学では英語
専攻だったそうですね。
そんなトンプソンさんがアニメ・マンガに出逢って
しまった(笑)のが、大学時代のこと。
そこで初めて読んだ日本マンガは「銃夢」か「ここ
はグリーンウッド」で、大学のアニメクラブに入り
浸るようになったトンプソンさんは、素敵なオタク・
キャンパスライフを送ります。


卒業が近づき、そろそろ就職のことを考えないと
――という時期になった時、アニメファンの友人
宅を訪れたトンプソンさんは、その友人から、VIZ
が発行していたアニメ雑誌Animericaに掲載され
ている、セーラームーンのイラストを使った求人広
告を教えられます。
その求人は、VIZが発行を予定していたゲーム
雑誌「Game On! USA」の編集者を求めるもの
で、トンプソンさんはその時代のゲームについて、
特に詳しいわけではなかったのですが、とにかく
やってみようということで面接を受け、2回に渡る
面接を突破し、見事にVIZへ入社します。


残念ながら、「Game On! USA」は日本側の事
情もあってすぐに休刊してしまうのですが、トンプ
ソンさんはそのまま、「PULP」や「Animerica」
といった雑誌に関わりつつ、日本マンガの編集
にも携わっていくことになります。
「サイレントメビウス」「天地無用!」、そして
「ドラゴンボール」に続き、2002年に刊行開始
されたアメリカ版「SHONEN JUMP」にも参加し、
編集者として日本側のマンガ家さん達とも連絡
を取ったり、日本を訪れた際には、直接対面す
る機会もあったようですね。鳥山明さんともお
会い出来たそうです。


(大ファンであるという「シャーマンキング」に関
しては、日本語の響きのミステリアスさを残すた
めに、あえて「巫力」を「Furyoku」として、その
まま変に訳さず使ったりとか、逆に、黒人のステ
レオタイプ・キャラ過ぎるチョコラブは、その名前
を「Joco」に変えたり、厚過ぎる唇を描き変えな
くてはならず、武井宏之さんとも、描写修正につ
いて、メールで説明・議論したそうです、三和土
さん。蓮のお尻とかもありましたよね)


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その少し前の2000年頃、トンプソンさんは
「Manga: The Complete Guide」の原型と
なる企画をVIZに提出するのですが、マンガに
集中したいVIZ側としては、そういう種類の本を
出版する考えはないと却下されてしまいます。


ところがその後、2005年暮れ頃になって、かつ
てVIZで共に働き、その後Del Reyに移ってマン
ガ部門のディレクターを務めているDallas
Middaughさんから、連絡が届きます。
Middaughさんは、トンプソンさんの企画を覚え
ていて、その本をDel Reyから出してみないか、
という話を持ちかけてきたのですね。
実際には、Del Reyは別人による同種の本の出
版を進めていたところ、その人が企画をまとめら
れなかったので、トンプソンさんの所にお鉢が回
ってきた、という事情のようです。


コミック・アーティスト(オンラインで公開されてい
る作品「The Stiff」)としても活動しているトンプ
ソンさんは、自由に活動出来ない社員という立
場に息苦しさも感じつつあった時でもあり、この
オファーを受け入れ、2006年に入ると、自著に
集中するために、10年間勤めてきたVIZを退社
してしまいます(フリーランサーとしての契約は続
いているそうです)。
まあ、ライバル会社から出版される本を書きなが
ら、社員は続けられませんし、時間的な問題が
一番大きかったのだろうと思います。


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VIZを辞めたトンプソンさんが何を始めたかと
いうと――、もちろん、「Manga: The Complete
Guide」のために、マンガを読むことです。
締め切りであった11月までの9ヵ月間、トンプソ
ンさんは自宅にこもり、毎日毎日毎日毎日ひた
すらにマンガを読み続け、そのレビューを綴り
続けました。
900以上というのはあくまでタイトル数で、それ
ぞれの巻数をそれに掛け算するわけですから、
とんでもない冊数になりますよね。
最初は、1日3作品というノルマだったそうです
が(9ヵ月で900作品だと、平均でそのペースで
すよね)、後半に入ると締め切りに間に合わせる
ために、1日5作品にペースアップしなくてはなら
なかったそうです。
1日休んでしまうと、次の日は10作品、という風
にどんどんと溜まっていくわけですから、どんな
マンガ好きでも、なかなかに辛い状況だったと
思います。
マシアスさんは「ジェイソン・トンプソン(33歳)は、
マンガが健康にとって害であるだろうという、生
きた見本だ」とクールに愛を込めて語っています
けど(笑)。


さすがに神経がどうかなりそうな時期もあったよ
うですが、「Manga: The Complete Guide」は
今年10月、無事に出版へとこぎつけ、各所で絶賛
されています。
何年後になるのかわかりませんが、増補版につい
ても、既に契約を交わしているということです。
でも、今のアメリカでのマンガ出版ペースをみると、
次はホントに命がけの仕事になってしまいそうで
すね。ともあれ頑張ってください。


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最後に、マシアスさんのところで紹介されてい
た、トンプソンさん選出による、英訳されている
日本マンガのベスト10とワースト5も、掲載して
おきます。


ベスト10

1.「DEATH NOTE」
2.「ぼくの地球を守って」
3.「西洋骨董洋菓子店」
4.「火の鳥」
4.「魁!!クロマティ高校」
5.「Dr.スランプ」
6.「シュガシュガルーン」
7.「ジョジョの奇妙な冒険」
8.「めぞん一刻」
9.「子連れ狼」
10.「ベルサイユのばら」


ワースト5

1.「エイケン」
2.「聖獣伝承ダークエンジェル」
3.「トリコロ」
4.「ボンバーガール」
5.「姫様忍法著天下・無双」




posted by mikikazu at 06:11 | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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