2007年10月30日

アニメコンベンションの参加者は増えているのに、アニメDVDの売り上げが落ちている理由は――Dub Reviewメンバーによる会話


9月24日付け記事でお伝えしたように、北米で
発売されるアニメの英語吹替をメインの話題に
しているサイトDub Reviewに、「アメリカのアニ
メコンベンションの数・参加者は増え続けている、
つまりアニメファンは増えているのに、アニメDVD
の売り上げの方は、逆にここ数年落ちてきてい
るのは何故でしょう」という質問のメールを送って
いたんですね。
昨日配信開始された、Dub Reviewメンバーによる
ポッドキャストVoxCast第37回の中で、その質問
が取り上げられ、3人のメンバーそれぞれによる
考えが述べられていました。ありがとうございます。


今回こちらのサイトさんにコメントをお願いした
のは、メンバーさん達はよくコンベンションに足
を運んでいる様子だし、そこで接触した声優さん
や業界の方にもインタビューをたくさん行ってい
るので、一般のファンよりも、より広い知識に基
づく見解が得られるだろうと思ったからです。
今回のエピソードに参加しているメンバーのお
名前と所在地はそれぞれ、Mark Abersoldさん
(ワシントン州シアトル)、Dale Abersoldさん(ワ
シントン州オリンピア)、Nathan Thorellさん(ノ
ースダコタ州)になります。だから収録は、スカイ
プによって行われたと思います。
以下、こちらからの質問に対する返答部分(8分
38秒〜16分57秒)を、「日本の人達に説明してほ
しい」ということで許可を得て、翻訳してみますね。
例によってペースの速い会話ですから、直訳でなく
大意くらいでよろしくです。


short_g.gif


Dale
「まず断っておきたいけど、僕達はアメリカでのア
ニメDVDセールスについて、正確な数字を把握し
ているわけじゃない。今年は何枚売れて、過去と
比べて増えているのか減っているのかといったこ
とや、各会社の利益や損失なんかまでは。
だからこれから述べていくことは、あくまでアニメ
会社や、そこに関わっている人達が取っている行
動を観察して感じたものに過ぎないんだ。
これでディスクレイマーになったかな?」

Mark
「十分だね。いま明確になっている事実のひとつ
は、ジェネオンUSAが北米でのアニメDVD販売から
撤退するということ。最後の作品が出るのは……」

Dale
「11月6日まで、だったかな。それ以降に予定さ
れていた作品のリリースは、全てキャンセルされ
たようだよ」

Mark
「だから、ジェネオンUSAが保有していた作品の北
米での権利が、今後宙に浮くことになる。まあ、他
の会社が引き受けてくれる作品も多いだろうね」

Nathan
「もうひとつ言える動きは、例えばMedia Blasters
などは、どんどんとアニメDVDに英語吹替トラックを
収録しなくなってきていること。最近はかなりの数の
作品が、英語字幕オンリーで発売されているよね。
大抵は、購買層がとても限られている種類の作品み
たいだけど」

Mark
「一方で、アニメコンベンションの参加者の数が増
え続けているというのも事実だ。僕達の地元の
Sakura-Conも、毎年どんどん規模を拡大し続けて
いるし、その勢いが衰えそうな気配はまったくない」

Dale
「僕が初めてSakura-Conに行った時、参加者は千
人にも満たない数だった。それが今では、1万人を
優に越えている。去年は1万2千人とか、1万5千人
とかいう話だったね」

Mark
「アニメDVDのセールスが、全体で落ち込んでいる
かどうかについては断言出来ないけれど、違法視聴
行為が大きな問題であるとは、はっきりと指摘出来る。
それが少なくとも、アニメ業界の人達とネットを通し
て交流したり、イベントで直接会話して得た感触だよ。
違法ダウンロードは、本来ある筈だったセールスの
可能性を奪ってしまっている。タダで見られるのに、
どうして30ドルもDVDに払わなくちゃいけないんだ?
と考える人達を生んでしまっているんだ。
そのせいで、アニメ業界が追いつめられてしまって
いるのが現状だ。
AnimeVegasでジョナサン・クラインと話した時に
かなりわかったけど、今ではどこの会社も、利益を
生むのが難しい状態になってきている。また一方で、
ライセンス料も高いものだしね」

Dale
「人件費もそうだよ。北米での人件費が下がったな
んて話は聞いたことが無いし、下げるための唯一の
方法は、全然違う場所で働き手を得ること――つま
りアジアだ」

Nathan
「違法視聴の話をするときりがないけど、Oni-Conで
ワタナベシンイチ監督がこの件について発言してい
たよね。僕が知る限り、日本のクリエイターがこの問
題について喋ったのは、初めてだと思う。
この件に関するスレッドで読んだけれど、アメリカの
エンターテインメント市場でアニメが占める割合は
2%程度に過ぎないのに、違法ダウンロードされる
ファイル全体でアニメが占めている割合は、55〜65%
にも達しているとか。アニメ市場の小ささを考えたら、
事実だとすると、とんでもない話だよ」

Dale
「アニメの違法ダウンロードの歴史自体は、そんな
に古いものではないよね。僕がアニメを始めて知っ
た頃は、まだダウンロードされているのは音楽だけ
で、ナップスターがものすごい人気だった。
2000〜2002年頃になると、IRCやBittorrentが
使われるようになってくるわけだけど、それまでの
ファンサブは、ビデオテープで配布されていた」

Mark
「大変な仕事だっただろうね」

Dale
「ああ。テープを買って、送って……。VHSテープに
アニメをダビングするのにもとても時間がかかった
んじゃないかな」

Mark
「でも今では、日本で放送された数時間後にはネッ
トにアップされているから、手に入れるのも容易に
なった。だから『DVDをわざわざ買うなんて馬鹿の
すること』みたいに考えるようになってしまった。
ただダウンロードすればいいじゃないかって」

Dale
「けど、アニメDVDが売れなくなってしまうと、
一番最初に困るのは、僕達のような英語吹替の
ファンだよね」

Mark
「その通りさ。会社がコストを削減しようとする
時に、最初に目を付けるのは吹替予算だからね。
ジェネオンUSAが実際に示してくれたけど、5年前
なら、ジェネオンもBang Zoom!やNew Generation
Picturesのような高品質の英語吹替を制作してく
れるスタジオにまかせてくれていた。けれど去年
くらいから、もっと安く仕上がるシンガポールの
会社(Odex)に外注してしまうようになった。
品質を無視しても、そうやってコストを下げるしか
なかったんだ」

Dale
「(必ずDVDを購入してくれる)吹替ファンは、アニ
メ会社にとって最上のお得意様の筈なんだけどね。
字幕だけで満足出来る人達と違って、僕達はファン
サブで済ませばいい、というわけにはいかないから。
ファンダブというのもあるけど……、ネットで出回っ
ているのは、最悪のプロの仕事よりもひどい出来の
ものばかりだ」

Mark
「結論としては……DVDの売り上げが落ち続けて、
あるいは少なくともファンの増加に比例するくらい
に増えてくれず、北米のアニメ会社が、思うような
利益を得られない状況が続くと、第2、第3のジェ
ネオンUSAが生まれるだろうね」



short_g.gif


という感じです。
DVDを必ず買ってくれる、というか手に入れないと
楽しめない吹替ファンが、アニメ会社側のコスト削
減における、一番最初の被害者になってしまうと
いう皮肉な状況が、個人的には発見でした。


後半では、「RED GARDEN」のレビューもしてくれて
いるのですが、作品のファンとしては、Daleさんに
よる、「アメリカを舞台にしたアニメで初めて、そし
て唯一の、見ていて『それはおかしいんじゃないか』
とアメリカ人の立場から一度も言わずに済んだ、正
確な描写の作品」という評価に安心しました。
「カレイドスター」なんかは、北米では描写のおかし
さゆえに、かなり評価を下げていましたし。




posted by mikikazu at 08:52 | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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