よいしょっと。
先週からこっち、リアル・ネット共にドタバタせ
さるを得ない状況が続いていて、紹介したい
情報はあるんですけど、ろくに更新が進みま
せんでした。今週からは、もう少し落ち着ける
といいですね……。
ともあれ、ずいぶんと遅れてしまいましたが、
7月9日付け記事で取り上げた、アメリカ・ペ
ンシルバニア州発のポッドキャストOtakuGe
nerationの、7月4日更新分(第108回)ゲスト、
英語版「攻殻機動隊」のバトー役の声優Ric
hard Epcar リチャード・エプカー氏(公式サイ
ト)のインタビューから、英語版「イノセンス」
についての発言の続きを紹介しておきます。

「たまたま選んだ席の隣には、1人の日本人女
性が座っていた。話をしてみると、彼女は『イノ
センス』の、日本側のプロデューサーの1人だと
わかったんだ――!
驚いた私は、私が英語版のバトーの声優で、英
語版『イノセンス』についても関わりたいという、
私側の事情を彼女に説明した。
彼女は、『でも、アメリカでの権利はドリームワーク
スのものだから……』と言うので、『そうなんだよ!
だから、誰と話せばいいんだい?』と訊いてみた。
そうしたら、連絡が取れる筈の、ドリームワークス
のある女性の名前を教えてくれたんだ。
私はそれこそ必死に、その女性と連絡を取ろうと
した……。
しかし、ドリームワークスのような大きな会社ゆえ
の不道理さなんだろうけど、私は結局誰にも話さえ
聞いてもらえなかったんだ! 私は彼らのために
仕事もしているっていうのに(「マダガスカル」のブ
ラジル語吹替監修。「グラディエイター」「ギャラクシ
ークエスト」のドイツ語吹替監修など多数)。
誰も私に会おうとはしなかった。ただ、10分でも5
分でもいいから、私がどこかの馬の骨ではなくて、
ドリームワークスの仕事もしているし、『攻殻機動
隊』シリーズにもずっと関わっている人間だという
ことを説明したかっただけなんだ。
でも、結局誰にも会えなかったよ……。
その後、とても奇妙な展開になった。
私はイギリス・ロンドンのコンベンションにゲストで
招待されていたんだ(London Expo 2005年5
月14〜15日)。どうやら私は、初めてのアニメ関係
者ゲストだったようだけど。
私の主な目的は、ADRディレクターを務めた、ハー
モニー・ゴールド社の新作『Robotech-SHADOW
CHRONICLES』のプロモーションだった。
そして会場にいる間に、イギリスでの『イノセンス』
の配給権を持っている会社、MANGA ENTERTAIN
MENT U.K.の人間とも出会う機会があって、私は
とりあえず自分の事情を説明しておいた。
そうすると、私がアメリカに帰国した後に、彼から
一通のメールが届いたんだ。
『君は、(ADR作業を請け負える)自分の会社も
経営しているんだよね?』
と訊ねてきたから、
『そうだよ(――Epcar Entertainment)』
と答えると、
『だったら、イギリス版の『イノセンス』で台本と監
督を担当し、バトーも演じてみることに興味はある
かい?』
とオファーしてきたんだ!
私の会社はイギリスでの、英語版『イノセンス』吹
替会社を決めるための入札に参加し、見事契約を
勝ち取ることが出来た。アメリカ側の会社はダメだ
ったわけだけど。
少々奇妙な感じでもあったよ。それまでの英語版
『攻殻機動隊』シリーズの吹替作業は、全てZRO
Limit ProductionsとAnimazeが請け負ってきて
いたんだけど、『イノセンス』だけは、うちの会社が
担当になった。踏み込みすぎた話をするつもりは
ないけれど、どうやら彼らの示した請負金額は高
過ぎて、MANGA U.K.側の希望に沿うものでは
なかったらしい。だからうちの会社に仕事が廻って
きた、ということのようだ。
『攻殻機動隊』シリーズでバトーを演じるだけでな
く、ADRディレクターも務めたいとは、ずっと願って
いたんだ。
自分は違う演技も試してみたいのに、ディレクター
がそれをさせてくれない時などは、不満もたまるも
のだしね。だから私には、とても素晴らしい機会だ
った。夢がかなったようなものだね。バトーを演じ
て、台本も書いて監督もして……。最高だった。
それからアメリカに帰ってきて、ゲーム『ブルー
ドラゴン』の仕事をしている時だった。
たまたま、以前ドリームワークスで仕事をしてい
た時の上司と顔を合わせる機会があったので、
それまでの英語版『イノセンス』についての物語
を説明してあげたんだ。
彼女は死ぬほど驚いていたね。彼女による、ドリ
ームワークス側の事情はというと――、そもそも
ドリームワークスには、日本からアニメ映画を買
い付けてくる、担当の人間というのが1人いたん
だそうだ。本当は、その買い付けてきた作品につ
いても、ちゃんと扱っていくつもりだった。けれど、
その担当の人間が、リストラか解雇かわからな
いけれど、突然ドリームワークスを去ってしまっ
た。その男がいなくなってしまった後、ドリーム
ワークスとしても、買い付けてきたアニメ作品を
どう扱っていいのかわからなくなってしまったと
いうんだ。
で、結局彼らがどうしたかというと、字幕版のみ
でリリースするということだったんだけど、その
英語字幕も、(初期のDVDでは)ひどいものだっ
たと聞いている。台詞だけじゃなく、色んな効果
音なども全て表示してしまうような……(聴覚障
害者用のクローズド・キャプションのこと)。
そういうことが起きないように、アメリカでも英
語版『イノセンス』に関わらせて欲しいと懇願し
ていたんだが……」

大雑把ですが、大体こんな感じで。
あくまでエプカー氏個人の見解ということでお
願いします。ドリームワークス側からのコメン
トも知りたいところですが、当時配給を担当し
た傘下のGo Fish Pictures自体が、それ以
降ほとんど活動していないようですし。
アメリカでのドリームワークスによる、「イノセ
ンス」に対するやる気のなさは、DVDジャケット
のセンスからも、つい想像してしまうところです
ね……。ちなみに、エプカー氏の関わったイギ
リス版DVDジャケットはこちら。日本で出ている
「INTERNATIONAL VER」に近いでしょうか。
また、「攻殻機動隊」シリーズ英語吹替作業にお
けるADRディレクターは、草薙素子役のMary
Elizabeth Mcglynnさんが「SAC」で先んじて担
当されていて(Kevin Seymour氏と共同)、だった
ら自分も……という気持ちもエプカー氏にはあった
かもしれないと勝手に思ったり。それこそ、「スタ
ートレック」シリーズで、スポック役のレナード・ニ
モイ氏に始まり(映画「3」「4」)、俳優さん達も
次々監督に挑戦していったみたいに。

★やはり結局「やえかのカルテ」は新刊ではもう
見つからないようなので、諦めてユーズドで注文
しておきました。でも、3巻と合わせて届くのは、
1ヵ月くらい先になりそうですので、気長に待ち
ますです。