2007年05月10日

北米でのANIME英語吹替トラック制作事情について


CrystalAcids.comの5月3日付け記事による
と、Elastic Media Corporationが担当してい
る「ゼーガペイン」(Bandai Entertainment)
の英語版吹替トラックの制作が、カリフォルニア
州ブレア市に新設されたADRスタジオで、現在
進行中のようですね。
「ゼーガペイン」は、昨年唯一リアルタイムで
視聴していたお気に入りの作品ですし、真新
しいスタジオで収録するのも、きっと気持ちが
とてもいいでしょうから、良い仕上がりになる
といいですね。
あ、カミナギ・リョーコさんの、あの微妙な声の
雰囲気(笑)は、どんな風に再現されるでしょ
うか。普通に上手く演じられても、それはそれ
でリョーコさんじゃない、みたいな。
まだキャストは未発表ですけど、ルーシェンな
んかも、演じるのは男性なのか女性なのか、
とか気になります……。


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えっと、今日はそんな北米での、アニメ英語吹替
トラックの制作事情、ということですね。
少し前になりますけれど、オンラインストアRight
Stuf
が配信しているポッドキャスト番組Anime
Today第38回
(4月13日)に、北米でアニメの
英語吹替トラックを制作しているスタジオのひとつ、
New Generation Picturesの副社長Jonathan
Klein氏がゲスト参加していて、手がけた最新作
である「Ergo Proxy」と「Hellsing Ultimate」
について、詳しく語ってくれていました。


その中で、最近の北米のアニメ英語吹替業界
全般についてもコメントされていたのですが、
やはりリリース数の減少などもあって、おしな
べて低調、ということらしいですね。
コメントの最後には、パネル参加するコンベンシ
ョンSakuracon(4月6〜8日 ワシントン州シア
トル)の宣伝もされていたのですが、そちらでは
もう少しぶっちゃけた話もされていたようです。


AnimeOnDVDのフォーラムに掲載されていたレ
ポートによると(CrystalAcids.com4月12日付
け記事
経由)、どんどんと縮小されていく、アニメ
ソフト販売会社から提示される予算では、スタ
ジオ側の水準とする吹替トラックのクオリティが
もはや保てなくなってしまうために、New Gene
ration Picturesは「Ergo Proxy」と「Hellsing
Ultimate」以降、アニメ吹替の仕事をする予定
がないと、Jonathan Klein氏は発言されている
ようです。完全な撤退かどうかは不明ですが。
Anime Todayでも、「今後のプロジェクトは?」
という質問に対して、ゲームばかりでアニメに
ついては全く触れていませんでした。
この、予算縮小により、定評のあるスタジオが
アニメ吹替の仕事を手がけられなくなっていく
傾向については、ボイスディレクター/スクリプ
トライターであるMarc Handler氏が、ポッドキャ
ストAnime World Orderに出演していた時(第
37回・2006年10月13日放送分)にも、話題に
していました。


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で、この予算縮小に対応するための処置が、
Klein氏がここ1年ほどの傾向として挙げていた、
・さらに経費が安く済む海外――、それもカナ
ダではなく、はるか遠いシンガポールのスタジ
オなどへの発注
・英語吹替トラックを収録せず、英語字幕のみ
でのソフト発売
の2点になります。


前者において、最近話題になったのが、同じ
Sakuraconで発表された、Geneonからリリー
スされる「かりん」の英語トラックを、シンガポー
ルのOdex社が制作するというニュースですね。
Odex社は、リージョン3市場に向けて、中国
語・英語・マレーシア語などのアニメDVDを制
作・販売している会社とのことです。
そもそもアメリカでの英語吹替は、ほとんどの
場合ノンユニオンによる、非常に安いギャラ
で声優さんを雇って制作されていたわけです
が、もはやそれでもビジネスが回らなくなって、
さらに安く上がる海外へ発注せざるを得なくな
りつつある――のかもしれません。
ただ、Odex社がアメリカ市場向けに英語トラッ
クを制作するのはこれが初めてではなく、昨年
手がけた「ファンタスティックチルドレン」のレ
ビューにおいては、特に英語吹替についての
不満は見かけなかったように記憶しています。
安く、それなりに良いものが仕上がってくるの
ならそれでいいかもしれませんが、アメリカの
アニメ声優さんたちは、さらに仕事が無くなっ
てしまうし、また商品のプロモーションにおい
ても、声優さん達の名前が使えないというデメ
リットもありますね。


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第2点の、「英語トラックを収録しない」という
方針で話題――というか、物議をかもしてい
るのが、バンダイビジュアルUSAになりますね。
同社からリリースされる「ギャラクシーエンジェ
る〜ん」「リーンの翼」「鬼公子炎魔」といった
ラインナップは、英語トラックを収録していない
のにもかかわらず、非常に高い価格設定(39.
99〜49.99ドル)により、多くのファンの不評
を買っています。
そのバンダイビジュアルUSAの社長さんで
あるTatsunori Konno 今野達則氏が、
Anime Todayの続く第39回に出演し、何故
価格が高くなってしまうのか、英語トラックを収
録しないのかについても説明されていました。


まずDVDの価格が、ほぼ日本でのそれと同
じになってしまうのは、北米向けのDVDの製
作も、パッケージやブックレットの印刷も含
めて、全て日本国内で行うからだ、と説明さ
れています。
日本のバンダイビジュアルと最初から共同
で作業することで、北米でのリリースもそれ
だけ早く出来るし、またアメリカでは印刷に
おける色設定のナンバリング・システムが
異なるので、日本版のDVDと全く同じものを
製作するのは不可能である、とのことです。
この戦略には、日米でリージョンが同じに
なってしまう次世代DVDの展開を見越して、
市場をひとつのものとして考えていきたい、
との意向があるようですね。
ただリリースを早めることで、ファンサブな
どの違法ダウンロードの数を減らせることを
期待しつつも、価格の高さにより、さらに多
くの人が無料の違法ダウンロードで済ませ
てしまうことになる可能性についても認めて
います。


英語トラックを収録しない理由については、
今野社長の言葉を出来るだけ忠実に引用し
てみると(39分25秒〜41分02秒)、


「アメリカにも優秀な声優はいますが、数は
そんなに多くないですよね。一方日本には、
たくさんの優れた声優達が存在していて、
スタジオによる演出の下、とてもよい仕事を
しています。
私達は、粗悪なクオリティの吹替トラックを、
私達のとても高品質な製品に入れたくはな
いのです。「ただ台詞を読んでいるだけ」と
いうようなレベルの吹替は要らない。
最近、北米版のアニメDVDでいくつか英語
トラックを耳にしましたけれど、そんなものは
私達の商品に入れたくないんです。
もし、私達のDVDに英語トラックを入れると
したら、日本語のアフレコのディレクターを
アメリカに連れてきて、セッションの間中、
アメリカの声優たちをずっと監督させなくて
はならないでしょう。でもそんなことをした
ら、とんでもなくコストが高くなってしまい
ますよね。
ただ、アメリカのファン達が私達のやり方
を受け入れてくれて、DVDがたくさん売れ
れば、英語トラックについても考慮出来る
ようになるかもしれません」


ということです。
最近は北米版アニメDVDの英語吹替の質も
安定していて、ファンから不満の声が聞こえ
ることもほとんどなく、コンベンションなどで
は、アメリカ人声優さん達の人気もとても高
いのですけど……。
2年以内には、日米で同時にDVDを発売す
ることを目標にしているとのことですが、果
たしてそこまで上手くいくのかどうか、北米
のファンによる判断を見つめていきたいです。


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★アドバイスありがとうございます♪
第一の扉を頑張って突破してから、SSを
楽しみに読ませていただきますね。
……それでも数日はかかっちゃいそうで
すけど。
それにしてもピンクって(笑)。
posted by mikikazu at 09:41 | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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