北米のオンラインアニメストア・英語版制作会社で
あるRight Stuf Internationalが配信しているポ
ッドキャスト「Anime Today」の、2月2日更新分
(第33回)には、Bandai Entertainmentの代表取
締役社長(CEO)であるKen Iyadomi 彌富健一
氏がゲストとして招かれ、氏から見たアメリカのア
ニメ市場の問題や、超期待作「涼宮ハルヒの憂鬱」
のDVDリリースを含む、Bandai Entertainmentの
今後の事業計画について語っています。
箇条書きになりますが、語られた主な内容は以下
になるでしょうか。
・仕事の一部として、Anime News NetworkやAn
imeOnDVDといったニュースサイトだけでなく、ファ
ンの意見を知るために、ファンサブ・フォーラムもチェ
ックしている。
・氏がアメリカでアニメの仕事に携わるようになった
90年代前半と比較して、今はネットを通じてファンが
得られる情報も飛躍的に増えてしまったので、マー
ケティングもそれだけ難しくなった。
(例えば「日本では大ヒット」みたいな)誇張宣伝をし
ようとしても、ファンは日本の状況も全て把握してい
るので、通用しない。
・(ネットでの映像コンテンツの充実について)かつて
のアメリカのネット環境は、日本よりもずっと遅くて、
映像コンテンツの展開についてはあまり気にしていな
かったが、ファイル共有ソフトBittorrentの登場により、
大きく変わってしまった。そのおかげで、ファンが簡単
に作品をチェック出来るようになったとは思う。
・まずはアメリカで、そして今では日本でも、アニメDV
Dのセールスが大きく落ち込みつつある。DVDの売り
上げに多くを頼っているアニメ産業は、このままでは
危機を迎えてしまうだろう。ファンの教育も必要だろ
うし、違うビジネスの方法論も求められている。
・ファンサブは、作品の宣伝という面では役に立って
いるかもしれないが、それでDVDが売れなくなってし
まうのでは困るという、大きな議論になっている。
・アメリカで売る作品やその数を選ぶ特定のフォーマ
ットというのはなく、作品それぞれ。ただし、昨年くら
いからは、タイトルを絞るようにしている。
・Blu-rayかHD-DVDかという、次世代DVDについて
の態度は未定。現行のDVDと違い、日本とアメリカは
リージョンが同じなので、はるかに安いアメリカ製が
日本に入ってきたら、日本の業界はやっていけない
のでは、という危惧が強くある。その問題を上手く解
決する方法は、現時点では見つかっていない。
・アメリカよりも、日本でのアニメDVDの価格が高い
のは、そもそも限られた人しかアニメDVDを買わない
から。なので値段を下げても、数が限られている以
上、売り上げが向上したりはしない。業界を維持させ
るためにも、価格は高いままにしておく必要がある。
・北米版「涼宮ハルヒの憂鬱」については、販売だけ
でなく、英語版トラック制作を含むローカライゼーション、
マーケティング、セールスも担当。
この種のビジネス・モデルが成功すれば、今後も続け
る可能性はある。
・今年の目玉作は、実写版「キューティーハニー」、
「舞-乙HiME」、「攻殻機動隊 Stand Alone Complex
Solid State Society」、そして「涼宮ハルヒの憂鬱」。
・アメリカのANIMEファンには、Bandai Entertain
mentのビジネスのやり方を支持している人が少ない
ということを知って、とてもショックを受けた。
なので昨年からは、ファンの声にも耳を傾けるように
している。
・(アメリカのANIMEファンに一言)「ハルヒ」の北米公
式サイトにもメッセージを載せたように、ファンサブを
ダウンロードするだけではなく、DVDも買ってください。
最近気づいたという、Bandai Entertainmentのビ
ジネスに対する、アメリカのファンからの不満という
と、すぐに思いつくのは、「ZガンダムDVDBOXセット
問題」でしょうか。
通例と異なり、アメリカでの「機動戦士Zガンダム」の
DVDは、単品ではなく、全話収録のBOXセットが先
行発売されたのですね。BOXセットが2004年12月、
単品DVDが2005年の10月からの発売です。
ところが、BOXセット版に収録されている英語翻訳の
出来が酷いと問題になったんです。それを受けて、
後に発売された単品版では、翻訳が修正されていた。
修正されたということは、問題があったと認めたとい
うことですから、大金をはたいてBOXセット版を購入
した人たちが、ちゃんとした翻訳で見たいと、商品の
交換をBandai Entertainmentに頼んだのですが、
拒否されてしまった、という話ですね。結果、ちゃん
とした翻訳で「Zガンダム」を見たい人は、あらため
て単品版を買わなくてはならなくなったわけです。
これを受けて、今年のOtakonのディーラーズ・ルーム
では、定価199.98ドル(約2万4000円)の全話収録
BOXセットが、もう40ドル(約4800円)という捨て値
で叩き売られていたとか。
他にも、「まだDVDが発売されていない日本のファン
に安い輸入版を買われては困る」という、アメリカの
ファンには関係のない理由で、「ファースト・ガンダム」
のDVDにオリジナルの日本語音声が収録されず、「ファ
ースト」を買うようなコアなファンが落胆したとか……。
それはともかく、言葉の端々に、現在のアメリカのアニ
メ市場の低迷についての危機感がこめられていたよ
うに思います。
「アニメ!アニメ!」さんが2月4日付けで伝えてくれて
いる、市場全体の、DVD売り上げやタイトル数の減少
とも符号しますし。
発売決定後、各地フォーラムの反応が凄まじい(もは
やフォロー出来ません)「涼宮ハルヒの憂鬱」や、ダウ
ンロード販売という新手段を試す「DEATH NOTE」の
ような作品が、事態を巻き返すインパクトを示してくれ
ることを祈りたいですね。

