ネオ・ヴェネツィアの空気と別れるのが寂しくて、
ついに終わりを迎えるのに、複雑な気分だったりも
するのですが、ともあれ「ARIA The NATURAL」
(公式サイト)は、ラスト・エピソードとなる、第26話
「その 真っ白な雪の中で…」を見てみました。
残念ながら、作画・演出といった面では、第一期「The
ANIMATION」と比較しても、明確なクオリティの低下
が見受けられ(あくまでテレビ放送版の話ですが)、
商品としての意義に首を傾げてしまうことも多かった、
第二期「The NATURAL」なんですが、さすがに最終
回はこれまでにない力の入れようで、隙のない完璧
な出来だったと思います。
OPが「ユーフォリア」の弾き語りバージョンであったこ
とで、描くべきことをちゃんと理解してくれていると、ま
ず嬉しくなりました。
また、ほとんど捨てカットの無い、美麗なキャラクター
作画の充実には、いきなり解像度が上がったような、
素敵な驚きがずっとありましたね。
ただ、エピソードとして成功しているのは、美麗作画を
単にフィーチャーしているのではなく、そんなキャラク
ターがいる、アクアの、そしてネオ・ヴェネツィアの世界
そのものを、本当にそんな場所があるような、主役とし
て描いてくれていることですね。
これは、これまでのアニメ版「ARIA」があまり到達出来
ていなかった境地なので、ついに見られたのは、個人
的に感激でした。
「ARIA」をキャラクター主体の作品と見ることは間違い
ではないかもしれませんが、それと同じくらいに、ネオ・
ヴェネツィアという舞台、より正確にいえば、キャラクタ
ーを含むそんな舞台を見つめる視点というものが、なに
より重要だったと思います。
これまでのアニメ版のクオリティでは、とてもそんな視点
を構築するには至れませんでした。
一級品の音楽やキャストという、コミック版にはない要素
に助けられていたことも、ままあったと思います。
けれど、ついに最終回ということで、それら全ての要素
が理想的に結合し、アニメとして描けるひとつの頂点に
まで達せられたのは、最後の最後で救われた気分です。
アニメで「ARIA」を見てみたいという人には、他のお話は
見なくていいから、この「The NATURAL」第26話だけ見
ればよい、とまで言いたくなりますね。
というか、原作を読んでいる方には、これくらいのレベル
が、本来アニメ版に求める平均水準だったのではないで
しょうか……。
もちろん、都合3クール39話の全てで、そんなレベルを
維持するには、今の日本アニメ界の現状は厳し過ぎると
いうことも、誰もが理解していることですから、理想と現
実の難しさを、ずっと感じさせられ続けた、このアニメ版
視聴ではありました。
最終回で示せたように、「やれば出来る」のに、やれない
事情があり過ぎるんだろうなって……。
なのでシリーズ総体として、決してお薦め出来るクオリテ
ィではなかったことが悔やまれる「The NATURAL」なん
ですが、この第26話を世に出せたことのみでも、存在意
義はあったのだろう思います。
原作のストックが貯まれば、今度はOVAでもいいですか
ら、第26話レベルのクオリティで、さらに描き続けて欲し
いですね。
スタッフ・キャストの皆さん、お疲れ様でした。
あとまあ、これはいつものことなんですけれど、特にこ
のアニメ版「ARIA」については、りょうさんの書かれる、
キャラクター同士の会話を用いた毎回の感想寸劇が、
視聴を進める上での、最大のモチベーションでもありま
した。それに触発されてか、こちらでも、あんまり出来
のよくないSSを書いてみたりもしましたし。
これまで、ずっとありがとうございました、なのです。
忘れた頃でいいので(笑)、ファン小説の方も、ずっと待
っていますね。
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