最新のレビューは、「まんがの作り方」第4巻(平尾アウリ 徳間書店)で、
Story - Zzzzz
Character - Grrrr
Yuri - Ugh
Overall - Whatever
という感じの、申し訳ないですが「酷評」でした。
1月9日に掲載された"Licensing Manga - the Miracle, the Message, the Moral of the Story"と題された記事は、いつもと少し趣きを変えて、アメリカでマンガの翻訳出版を夢見ている人達への、先輩からのアドバイス、という内容のエッセイでした。
Yuriconの立ち上げについての、当事者からの回想でもあるので、日本の方々にYuriconとエリカさんについて紹介する良い機会と思い、エリカさんの許可を得て、その日本語訳を掲載しておきます。
Licensing Manga - the Miracle, the Message, the Moral of the Story
(マンガをライセンスするには − 奇跡、メッセージ、教訓)
時折私は、どのようにマンガをライセンスして、出版し始めるようになったかについて質問してくるメールをいただくことがあります。
つい最近も、ある常連の読者さんから微笑ましいメールをいただいて、簡単にいうと、「どれくらい難しくて複雑なんですか? 他の人にも薦めます?」という内容でした。
「日曜版」としてその質問に、このOkazuブログでお答えしてみたいと思う理由は、私達はコミュニケーションの自由における前例のない時代にあって、版もまた、急速な勢いで大きな変化を経ようとしているからです。
それをふまえて、話を始めてみますね。
10年と少し前頃に私は、現在ほとんどの人に「百合」と呼ばれているものに、興味を抱き始めるようになりました。
UseNETには、様々な作品における百合について語り合っているグループがいくつか存在していて、百合について広く会話がされているような場所もありました。けれどそれらのほとんどは、二つの種類に分けられました。レズビアン・ポルノか、あり得ないカップリング(つまり、まったくの異性愛者である女の子が、他の女の子にもたれかかっている、目を惹くようなイラストが1枚あるだけで、2人はカップルだといきなり決め付けられてしまうような!)です。
さらにいくつかのグループは、現実のレズビアン達が関心を寄せてくることに、はっきりとした敵意を向けていました。
だから私は、百合を好きな人なら、誰でも歓迎するようなグループを作ろうと決意したのです。
そしてその数年後、ある考えを思いつきました。ニューヨーク市のレズビアン・バーで、バレンタイン・デイを祝うイベントを開催しよう、というものです。
映画「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」を上映して、オタクっぽい趣味をみんなでまったり楽しもうという趣旨ですね。結局それが、初めて実際に開催されたYuriconのイベントになりました。今でも、その時の私をなにが衝き動かしていたのか、全くわかりません。
そのお店Meow Mixに足を踏み入れる時まで、私はそれまでの人生でレズビアン・バーに入ったことはありませんでしたし、バーそのものにも、数度しか行ったことがありませんでした。
私自身はイベントを主催した経験はなかったのですけれど、自己満足に終わっても構いませんでしたし、私の家族が積極的にボランティア活動に参加していたこともあって、過去たくさんのイベント運営にしっかり関わってはいました。
Meow Mixを選んだのは、以前に「ジーナ」(95〜01年に放送されたファンタジーTVドラマ:訳注)のイベントも開催していて、また違う種類のオタクっぽいイベントもクールかも、と考えたからですね。
そして、奇跡が起きたのです。
2人の日本人女性がそのレズビアン・バーに入ってきました。その内の1人が、情報サイトTime Out New Yorkでの告知をたまたま見つけて、友達と来ることに決めたのです。
その人物が、高嶋リカさんだったのでした。リカさんと私はこれを書いている2日前の晩にも、なんて奇跡だったんだろうとお互いを不思議な気持ちで見つめ合ったところです。
私達は友達になり、ある時、彼女のマンガ(「リカってかんじ?!」)の英語出版について申し出てみました。それが私にとって最初のライセンスになったのです。
リカさんと私は日本のコミケに行って、そこでとてもお気に入りのマンガ家さんと会い、お礼を述べることが出来ました。それから彼女を私が開催しているイベントにも招待し、結果として蓼野絵理子さんの作品集「WORKS」を出版することになりました。それが私にとって2番目のライセンスです。
おわかりになるように-私が百合マンガ出版においてやってきたこと全てが、奇跡から始まっているのです。それがあなたにも起こるように願うのはちょっと変ではありますが、話はまだ続きます。
私はYuriconを、ソーシャルメディアがそう名付けられる以前に、その中において立ち上げました。UseNET、メーリングリスト、Yahooグループ。
やがて徐々にですが、コミケに参加しながら、私はお気に入りとなる、また別のサークルを見つけるようになり、メールで連絡を取って、数年前に描いたような古い作品を出版出来ないかどうか訊ねてみました。
それには理由があって、ほとんどのマンガ家は古い作品のことは気に留めなくるし、そういった作品は誰からもライセンスされたり、思い出されたりすることもないからです。新しい作品は大事だけれども、8年前の作品なら……ああ、好きにしていいよ、という風に。
私は何をすべきか全くわからぬまま、ライセンスや出版をしていくようになったのです。
まるで知識がなかった出版とライセンス双方の面で、私は厳しい学習局面を経てきました(特に出版については、当初「同人誌」を出版するコンセプトをアメリカで再構築しようとしていた計画が、突然実際の「本」を出版することに変わっていきましたから)。
この種のことにおいて、私は最悪のお手本でしょうけれど、私はいつもこうなんです。やり方など知らないうちに事を始めて、それからやり方自体を新しく考え出していく。他人に訊きたくないのではなく、そもそも他の人達と同じことをやっているわけではないのですから。そして全て理解する頃には、ルール自体を変えてしまうのです。なぜなら同じことを何度も何度も繰り返すのは嫌いだからです。
けれど今は、私が変えてしまえるようになるのよりも早く、ルール自体が変化していっています。だからここでメッセージがあります。
「訊いて失うものは何もない」のです。
たくさんのマンガ家さんがTwitterで発言していますし、ブログも持っていれば、メールでも連絡が取れます。大好きなマンガ家に連絡をして、作品を出版出来るかどうか訊ねることで失うものは、「何もない」のです。
起こり得る一番最悪のことは、返事がもらえなかったり、もらえても断られてしまうことです。そうすれば落ち込んでもしまうでしょうけれど、気を取り直して、また進んでいけばいいのです。
奇跡は助けになりますけれど、自分自身で奇跡を作り出していくことも出来ます。
イベントに参加し……いえ、開催しましょう。描いて書いて、どうやって本が出版されるのかを学び、ライセンシングについて勉強し、インターンとして企業に赴き、コミケに行って、マンガ家さんに自分を紹介しなさい。彼らとコミュニケートするのです。関係を築くのです。人々と会話をしなさい。あなたに力を貸してくれる人が、きっとたくさん必要になります。
私も今やっていることを、自分だけでやっているわけではないのです。私には、助力してくれる最高に素晴らしい人達がいてくれるのです。リカさんはもちろんですが、Erin S.、Mari Morimotoさん, Komatsuさん、そしてAnaのような人々、マンガ家ご自身達、私のスタッフや編集者さん達、果てのない様々な私の話に耳を傾けなくてはならない友人達、それから当然、私のパートナー、世界中の貢献してくれるみなさん。
私がやってきたどんなことも、ただひとつさえ、私1人で成し遂げたものではありません。
全て「私達みんな」で成し遂げてきたことなのです。共に力を合わせて。
ALC Publishingは小さな小さな出版社だということを考えてみてください。私達はけっして大企業ではありませんし、ほんのわずかの予算で働かなくてはならないこともしばしばです。このストーリーはVIZ MediaやTOKYOPOPのお話ではありません。あなた自身が主人公になれるストーリーなのです。
マンガをライセンスするのは難しくて複雑ですか? その通りです。
誰かに薦めますか? もちろんです。
今回の教訓-
「もしあなたが世界を変えなければ、他の誰かが変えてしまうでしょう。
どうしてそれがあなたではいけないのでしょう? 訊ねてみて失うものなど、何もないのですから」
ALC Publishingは今年、エッセイにも登場する高嶋リカさんの作品「リカってかんじ?!」のオムニバス版の出版を計画しています。
日本でも現在入手が難しい作品ですが、アメリカでも第3版までが品切れとなり、再版が望まれていました。
北米地域での百合マンガの出版に興味がある方は、ALC Publishingと連絡を取ってみてはどうでしょうか。