今年2010年度も、アメリカでのアニメ・マンガ市場については、厳しい落ち込みの話ばかりが届いています。
コミック・ゲーム・アニメなどの、アメリカにおけるポップカルチャー業界情報を伝えるICv2による10月の発表によると、北米でのマンガ売り上げは、2010年度前半で前年比9%、年度全体では20%の落ち込みになるだろうと推測されていました。この3年間で半減という下降線が続いています。
またアニメ市場についても、「2005年から2010年の市場の縮小幅は6割超」という、厳しい情報が伝えられている現状です(アニメ!アニメ!ビズ 2010年10月7日付け記事)。
ということは、売り上げが落ちているのだから、北米でのアニメ・マンガファンの数自体も、やはり減っているんでしょうか?
そう思って、当ブログでは2008年頃から、北米のアニメコンベンションの参加者数のデータを見守ってきました。
2009年1月5日付け記事
「2008年、アメリカのアニメ・マンガファンは増えたのか減ったのか?」
2009年8月22日付け記事
「調査・アメリカのアニメコンベンション参加者は増えたのか減ったのか?
(2009年1〜7月期)」
2010年1月2日付け記事
「調査・アメリカのアニメコンベンション参加者は増えたのか減ったのか?
(2009年7月〜11月期)」
これらの調査でわかったのは、北米のアニメ・マンガ市場がどんどんと縮小を続けているこの数年間でも、ほとんどのアニメコンベンションで、参加者の数は増え続けているという状況でした。
アニメコンペンションに参加している人達を「アニメ・マンガファン」と定義してよいのなら、市場の落ち込みとは逆に、北米でのアニメ・マンガファンは増え続けている、という判断になります。
その状況は、今年2010年度でも続いているんでしょうか。
例によって、2010年1月から11月の間にアメリカで開催されたアニメコンベンションから、参加者数データが公表されているもののリストを並べてみたいと思います。ソースは主に、アニメコンベンション情報専門サイトのAnimeCons.comです。一部不明のものは、Wikipediaからも引用しました。
わかりやすいように、黒字が前年度から参加者数が増加しているもの、赤字が減っているものにしておきますね。では、いきます。
・Ikkicon
(テキサス州ダラス 1月1〜3日)
2009年・4000人 → 2010年4200人に増加(推定有料参加者数)
・Animé Los Angeles
(カリフォルニア州ロサンゼルス 1月8〜10日)
2009年・2851人 → 2010年3207人に増加
・Ohayocon
(オハイオ州コロンバス 1月29〜31日)
2009年・7357人 → 2010年・10120人に増加
・Naka-Kon
(ミズーリ州カンザスシティ 2月19〜21日)
2009年・2915人 → 2010年・3862人に増加(有料参加者数)
・Anime Milwaukee
(ウィスコンシン州ミルウォーキー 3月12〜14日)
2009年・約800人 → 2010年約2100人に増加
・Anime Boston
(マサチューセッツ州ボストン 4月2〜4日)
2009年・15438人 → 2010年・17236人に増加
・Anime Punch!
(オハイオ州コロンバス 4月2〜4日)
2009年・1109人 → 2010年・1206人に増加(有料入場者数)
・Sakura-Con
(ワシントン州シアトル 4月2〜4日)
2009年・16586人 → 2010年・18002人に増加
・Tekkoshocon
(ペンシルバニア州ピッツバーグ 4月8〜11日)
2009年・3239人 → 2010年・3522人(有料入場者数)に増加
・Kawaii Kon
(ハワイ州ホノルル 4月10〜12日)
2009年・4743人(4479人が有料) → 2010年・4877人に増加
・Anime St. Louis
(イリノイ州コリンズビル 4月23〜25日)
2009年・1750人 → 2010年・1660人に減少(有料入場者数)
・Middle Tennessee Anime Convention
(テネシー州ナッシュビル 4月30日〜5月2日)
2009年・約4200人 → 2010年・参加者数約4200人
・Anime Central
(イリノイ州ロズモント 5月14〜16日)
2009年・15463人 → 2010年・19511人に増加
・Animazement
(ノースカロライナ州ローリー 5月28〜30日)
2009年・5964人 → 2010年・7070人に増加
・A-Kon
(テキサス州ダラス 6月4〜6日)
2009年・16037人 → 2010年・17596人に増加
・AnimeNEXT
(ニュージャージー州サマーセット 6月18〜20日)
2008年・7950人 → 2010年・8159人に増加
・PortConMaine
(メイン州サウスポートランド 6月24〜27日)
2009年・1804人 → 2010年・2072人に増加
・Anime Expo
(カリフォルニア州ロサンゼルス 7月1〜4日)
2009年・10万9000人 → 2010年・10万5000人に減少
(4日間での延べ参加者数)
・San Japan
(テキサス州サンアントニオ 7月9〜11日)
2009年・4003人 → 2010年・5049人に増加
・GarasuNoShiCon
(オハイオ州ペリーズバーグ 7月17〜18日)
2009年・約500人 → 2010年・1100人(有料入場者数)に増加
・Fieldcon
(オハイオ州モーガン・カウンティ 7月25〜27日)
2009年・60人 → 2010年・50人(有料入場者数)に減少
・AnimeIowa
(アイオワ州コーラルビル 7月30日〜8月1日)
2009年・2700+人 → 2010年・2800人に増加
・Otakon
(メリーランド州ボルチモア 7月30日〜8月1日)
2009年・26350人 → 2010年・29274人に増加(有料入場者数)
・Anime Overload
(テキサス州オースティン 8月6〜8日)
2009年・420人 → 2010年・約1000人増加
・Kumoricon
(オレゴン州ポートランド 9月4〜6日)
2009年・4558人 → 2010年・4055人に減少
・Tsubasacon
(ウェストバージニア州ハンティントン 10月1〜3日)
2009年・約900人 → 2010年・1105人に増加(有料入場者数)
・Anime Banzai
(ユタ州レイトン 10月8〜10日)
2009年・3000人 → 2010年 3200人に増加
・Bakuretsu Con
(バーモント州コルチェスター 10月21〜24日)
2009年・473人 → 2010年・468人に減少(有料入場者数)
・Youmacon
(ミシガン州デトロイト 10月28〜31日)
2009年・6200人 → 2010年・9000+人に増加
・MangaNEXT
(ニュージャージー州イーストブランズウィック 10月29〜31日)
2009年・1085人 → 2010年・1195人に増加
・Nekocon
(ヴァージニア州ハンプトン 11月5〜7日)
2009年・3429人 → 2010年・3788人に増加
という結果でした。
いわゆる「主催者発表」であることは念頭に置いておく必要はありますけれど、これらの数字を信じるなら、引き続き全米各地で開催されているアニメコンベンションの多く(31中25)で、参加者増加の傾向が続いてるのがわかります。
「アニメコンベンションの参加者=アニメ・マンガファン」と定義していいのなら、やはり2010年度中も、世代の入れ替わりはあるかもですが、アメリカでアニメ・マンガファンの総数は増え続けている、と判断してよさそうですね。
にもかかわらず、アメリカを含む北米地域で、アニメ・マンガ市場がずっと縮小傾向にあるという矛盾した状況は、北米でのアニメ・マンガビジネスに関わっている方達にとって、とても歯がゆいものであることは想像に難くありません。