というわけで、プロローグ、前半・後半と内容を紹介
してきた、アメリカのアニメファン・コミュニティーを描
くドキュメンタリー映画「Otaku Unite!」なんですが、
そろそろ僕なりの総評をまとめておきますね。
あ、スカポン太さんのところにも無事に届いたようです。
日本amazon経由だと、先日までは納期期間が「3〜5
週間」だったんですが、「通常24時間以内」に変わった
ところをみると、とりあえず現在は国内在庫がいくらか
あるようです。
またぞろ品切れになる前に、御所望の方はお早く。
「Otaku Unite!」公式サイト
http://www.otakuunite.com/otakuunite.html
日本語字幕を担当したceenaさんのサイト
「英語で読むアニメ・マンガ」
http://www.geocities.jp/anmecomics4u/
そうですね、一言でまとめてしまうと、良心的な構成の
ドキュメンタリー映画だと思います。あるいは、良心的
であろうと努めた、かな。その辺は、観客の受けとめ方
次第になるんですが。
アメリカにおける日本アニメの歴史を扱った前半、アメ
リカのアニメ・コンベンションを扱った後半の双方で、
一般の方にもわかりやすく情報を噛み砕こうとした努力
は、明確に見てとれます。
アメリカのネット各所のレビューでも(公式サイトの批
評リンクコーナー)、ことさらにアメリカのオタクさんの
姿を歪曲・誇張して面白おかしく伝えている、といった
風な批判は皆無だったように思えます。
ただ、そういう結果を生んだ理由のひとつとして、ファ
ンダムのネガティブな面である、海賊版やファンサブ、
そして一般的に「悪しきジャパニメーション」の代表格
とされてしまう「HENTAI」(アダルトアニメ・コミック)に
ついての言及を、徹底して排除していることもあるの
は確かです。
特に「HENTAI」については、「どうして扱わなかった」
との批判が監督さんには公開後寄せられたようですね。
扱わなかった理由については、個人的な推測ですけ
れど、そういう18禁の映像資料を引用してしまうと、
映画自体のレイティングも上がってしまうから、とい
う判断はあったかもしれません。
「ヤオイ」の映像が出た時のオーディオ・コメンタリ
ーで、「これはPG-13じゃないか!?」と茶化すコメント
もありましたし。
公開が、コンベンションやフィルム・フェスティバル
に限定されていることで、一般メディアからの評価と
いうのは、ちょっとわからないですけれど、既にコミ
ュニティの中にいるファンからは、それぞれのこだわ
りによって、評価も当然異なってくるようです。
監督によれば、試写の段階で最も嫌われたパートの
ひとつは、ヤオイをテーマにした「Yaoi-con」を紹介し
た場面だったそうですが、その一方で、コミック業界
における女性の視点を重んじるSequential Tartの、
Sheena McNeilさんなどは、逆に「Yaioi-con」の紹介
があまりに簡単に済まされたことに落胆を示したり
していますから、人の意見は様々ということですね。
そういう意味で、日本人アニメファンから見た反応
も、アメリカ人のそれからは、さらに異なってくるこ
とが必然だと思いますので、肯定・否定のどちらに
転ぶにせよ、今後の展開には期待です。
えっと僕個人からは、「頑張ったドキュメンタリー映
画」という以上の、肯定・否定の評価はないのです。
作り方の誠実さ、という意味の評価では肯定なので
しょうし、「こういう視点があったのか!」という、ドキ
ュメンタリー映画しか出来ない現実の切り取り方が
手法や場面として見出せたかといえば、否定的でも
あります。
けれど、ともあれ総評としては、アメリカのアニメファ
ン・コミュニティという、大き過ぎる対象にわずか70分
の尺で挑んだ作品に、これ以上望んではいけない、
という前向きの満足感を示したいですね。
むしろ、映像で描ける情報量の限界を、安直な物語
的文脈に置き換え、ドラマ的に現実をわかった風に
させるような、愚劣な戦法を取らなかったという点で
は、高く評価したいです。
なので、アメリカン・オタクという世界に対する、良
心的な入り口、というのが、僕のこの作品の、総合
的な評価ですね。
この作品をきっかけとして、アメリカでのアニメの歴
史なり、コンベンションなり、コスプレなりといった、
扱われたそれぞれの要素、扱われなかった要素に
対する関心が高まるのなら、それでいいと思います。
「感想を」ということだったので、いささか駆け足では
ありましたが、ここ数日で、「Otaku Unite!」について
の文章を少しだけまとめてみました。
かなり語り足りていない部分など多いかと思いますが、
御容赦ください。
それとは別に、いただいた質問の答えなんですけど、
スティーブやDJオタクの扱いについては、確かに前者
については少々長く感じましたが、彼に関する事前知
識の問題もあると思います。著書を読んでいる研究者
だったりしたら、長くても喜んだでしょうし。
つまらないかどうか、についての判断は……、監督が
必要だと思ったのなら、それでいいです。
情報の古さは、歴史を扱う前半部はともかく、コスプ
レのようなトレンドの要素が大きい、後半部では気に
されるかもしれませんね。今後日本で売るにしても、
実際の内容が4〜5年前だと、「今のアメリカのアニ
メオタクの現状」としては紹介出来ませんし。
コスプレについては、あまり興味がないです。
ファンの日常については、この映画の構成では入れ
るのは難しかったと思います。確かに、コンベンショ
ンという、「非日常」だけの紹介に留まってしまってい
いのか、という批判は可能でしょうけど……。
という感じでどうでしょうか。