2006年03月23日

ドキュメンタリー映画「Otaku Unite!」について・総評


というわけで、プロローグ、前半・後半と内容を紹介
してきた、アメリカのアニメファン・コミュニティーを描
くドキュメンタリー映画「Otaku Unite!」なんですが、
そろそろ僕なりの総評をまとめておきますね。
あ、スカポン太さんのところにも無事に届いたようです。
日本amazon経由だと、先日までは納期期間が「3〜5
週間」だったんですが、「通常24時間以内」に変わった
ところをみると、とりあえず現在は国内在庫がいくらか
あるようです。
またぞろ品切れになる前に、御所望の方はお早く。

「Otaku Unite!」公式サイト
http://www.otakuunite.com/otakuunite.html
日本語字幕を担当したceenaさんのサイト
「英語で読むアニメ・マンガ」
http://www.geocities.jp/anmecomics4u/


short_g.gif


そうですね、一言でまとめてしまうと、良心的な構成の
ドキュメンタリー映画だと思います。あるいは、良心的
であろうと努めた、かな。その辺は、観客の受けとめ方
次第になるんですが。
アメリカにおける日本アニメの歴史を扱った前半、アメ
リカのアニメ・コンベンションを扱った後半の双方で、
一般の方にもわかりやすく情報を噛み砕こうとした努力
は、明確に見てとれます。
アメリカのネット各所のレビューでも(公式サイトの批
評リンクコーナー
)、ことさらにアメリカのオタクさんの
姿を歪曲・誇張して面白おかしく伝えている、といった
風な批判は皆無だったように思えます。


ただ、そういう結果を生んだ理由のひとつとして、ファ
ンダムのネガティブな面である、海賊版やファンサブ、
そして一般的に「悪しきジャパニメーション」の代表格
とされてしまう「HENTAI」(アダルトアニメ・コミック)に
ついての言及を、徹底して排除していることもあるの
は確かです。
特に「HENTAI」については、「どうして扱わなかった」
との批判が監督さんには公開後寄せられたようですね。
扱わなかった理由については、個人的な推測ですけ
れど、そういう18禁の映像資料を引用してしまうと、
映画自体のレイティングも上がってしまうから、とい
う判断はあったかもしれません。
「ヤオイ」の映像が出た時のオーディオ・コメンタリ
ーで、「これはPG-13じゃないか!?」と茶化すコメント
もありましたし。


公開が、コンベンションやフィルム・フェスティバル
に限定されていることで、一般メディアからの評価と
いうのは、ちょっとわからないですけれど、既にコミ
ュニティの中にいるファンからは、それぞれのこだわ
りによって、評価も当然異なってくるようです。
監督によれば、試写の段階で最も嫌われたパートの
ひとつは、ヤオイをテーマにした「Yaoi-con」を紹介し
た場面だったそうですが、その一方で、コミック業界
における女性の視点を重んじるSequential Tartの、
Sheena McNeilさんなどは、逆に「Yaioi-con」の紹介
があまりに簡単に済まされたことに落胆を示したり
していますから、人の意見は様々ということですね。
そういう意味で、日本人アニメファンから見た反応
も、アメリカ人のそれからは、さらに異なってくるこ
とが必然だと思いますので、肯定・否定のどちらに
転ぶにせよ、今後の展開には期待です。


short_g.gif


えっと僕個人からは、「頑張ったドキュメンタリー映
画」という以上の、肯定・否定の評価はないのです。
作り方の誠実さ、という意味の評価では肯定なので
しょうし、「こういう視点があったのか!」という、ドキ
ュメンタリー映画しか出来ない現実の切り取り方が
手法や場面として見出せたかといえば、否定的でも
あります。
けれど、ともあれ総評としては、アメリカのアニメファ
ン・コミュニティという、大き過ぎる対象にわずか70分
の尺で挑んだ作品に、これ以上望んではいけない、
という前向きの満足感を示したいですね。
むしろ、映像で描ける情報量の限界を、安直な物語
的文脈に置き換え、ドラマ的に現実をわかった風に
させるような、愚劣な戦法を取らなかったという点で
は、高く評価したいです。
なので、アメリカン・オタクという世界に対する、良
心的な入り口、というのが、僕のこの作品の、総合
的な評価ですね。
この作品をきっかけとして、アメリカでのアニメの歴
史なり、コンベンションなり、コスプレなりといった、
扱われたそれぞれの要素、扱われなかった要素に
対する関心が高まるのなら、それでいいと思います。


short_g.gif


「感想を」ということだったので、いささか駆け足では
ありましたが、ここ数日で、「Otaku Unite!」について
の文章を少しだけまとめてみました。
かなり語り足りていない部分など多いかと思いますが、
御容赦ください。


それとは別に、いただいた質問の答えなんですけど、
スティーブやDJオタクの扱いについては、確かに前者
については少々長く感じましたが、彼に関する事前知
識の問題もあると思います。著書を読んでいる研究者
だったりしたら、長くても喜んだでしょうし。
つまらないかどうか、についての判断は……、監督が
必要だと思ったのなら、それでいいです。
情報の古さは、歴史を扱う前半部はともかく、コスプ
レのようなトレンドの要素が大きい、後半部では気に
されるかもしれませんね。今後日本で売るにしても、
実際の内容が4〜5年前だと、「今のアメリカのアニ
メオタクの現状」としては紹介出来ませんし。
コスプレについては、あまり興味がないです。
ファンの日常については、この映画の構成では入れ
るのは難しかったと思います。確かに、コンベンショ
ンという、「非日常」だけの紹介に留まってしまってい
いのか、という批判は可能でしょうけど……。
という感じでどうでしょうか。

posted by mikikazu at 09:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 海外情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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