2010年04月28日

議論「ファンサブは北米市場にとって有害か?」「アニメにとって北米市場/英語吹替は必要か?」


ここ数日海外のアニメ関連フォーラムで最大
の議論となっていたのが、Bang Zoom!
Entertainmentの社長であるEric P. Sherman
氏が発した、"Anime – R.I.P."(アニメよ、
安らかに眠れ)と題する一文です。


Bang Zoom! Entertainment(公式サイト)
は、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス郡
バーバンクにあるスタジオで、アニメーション、
ゲーム、映画やCMなどの音声トラック制作を
手がけています。
日本アニメの英語吹替制作でも知られていて、
その最近の代表作は、

・「涼宮ハルヒの憂鬱」
・「らき☆すた」
・「天元突破グレンラガン」
・「Fate/stay night」
・「エウレカセブン」
・「蒼穹のファフナー」
・「ひぐらしのなく頃に」
・「ローゼンメイデン」
・「サムライチャンプルー」

といったところになると思います。
その英語吹替のクオリティについては、定評の
あるスタジオですね。


Bang Zoom!は、ANIME TV(公式サイト)
という、人気声優のJohnny Yong Boschさんと
Cristina Veeさんがホストを務めるネット番組も
配信しているんですが、その公式ブログでの最新
の記事として、4月25日付けで、社長自らが公開
したのが、この、"Anime – R.I.P."になります。


その内容は大きく分けると、

・アメリカのアニメ市場が縮小しつつある現状
・その原因としての、違法ダウンロード/ファン
 サブの糾弾

の二つで、

「もしアニメを愛しているのなら、きちんとお金
を払うことで支えるべきです。正しいことをして
ください。簡単で単純なことです。
もしそうしてくれなければ、来年の今頃にはもう、
Bang Zoomはアニメの英語吹替をあなた達に
届けられなくなっていると断言出来ます」


というコメントで締められています。
Sherman氏はかねてより、違法ダウンロード/
ファンサブの害悪については声高く主張していて、
ゲスト出演したANIME TVの2ndシーズン
第1話
(2010年1月7日配信)でも、そういうコメ
ントをされていました。
近年のアニメDVDリリース数の減少や、リリース
されても、英語吹替が収録されない作品が増え
てきていることで、英語吹替制作をビジネスにし
ているBang Zoom!としては、相当な危機感が
あるようです。


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このSherman氏の発した一文に対する反響
は大きく、当のANIME TVのコメント欄だけで
なく、各アニメ関連サイトのフォーラムなどでも、
活発に議論が交わされることになりました。
あまりに発言が膨大なので、その全てに目を
通せたわけではありませんが、ある程度掴め
た、議論の対立点というものを、ここでまとめて
みたいと思います。個々の発言そのままではなく、
代表的な考え、という形にしておきます。
参考にした主な場所は以下になります。

ANIME TVの当該記事コメント欄

Anime News Network

Anime Vice

Mania.com


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1.「違法ダウンロード/ファンサブは北米市場
  にとって有害か?」


違法ダウンロード/ファンサブ容認意見

・違法視聴を阻止出来る、実質的な方法がない
 ので仕方がない。
・違法視聴でしかアニメを見れない地域のために
 も、ファンサブは必要。
・悪いのは見ている者ではなく、そもそも違法に
 アップしたりファンサブを制作している者。
・ファンサブは、その人気を見て、アメリカのアニ
 メ会社がどの作品をライセンスすべきか判断す
 る指標として必要なもの。
・いまだにアメリカのアニメDVDは高過ぎる。
・アニメファンのメインは10代なのだから、高過
 ぎるアニメDVDは買えない。そういった層が違
 法視聴するのは仕方がない。
・お金が無くて買えずに違法視聴する者は、もと
 もと買わない層なのだから、アニメ会社にとって
 の損失にはならない。
・買う価値のない程度のものだから、違法視聴し
 ても構わない。
・ファンサブを批判するのなら、それよりも早く
 アメリカで字幕付きのアニメを放送すればいい。
・デジタル時代の今では、いくらダウンロードして
 も、オリジナルの商品がなくなるわけではない
 ので、それは盗みにはならない。
・日本人は広告付きの放送を無料で見ている


違法ダウンロード/ファンサブ反対意見

・そもそも違法行為と分かっていて行うことが、
 人間としておかしい。
・ただでアニメを見たいのなら、今では無料のネ
 ット配信もたくさん増えた。
・違法視聴している人間は結果として、作品に
 関わっている人達の仕事を妨害していることを
 理解すべきだ。
・買えない人はレンタルすればいい。それでも
 業界への貢献になる。
・買いたい者は、生活を切り詰めて貯金すれば
 いい。
・広告料だけで賄えている作品はほとんどなく、
 特にオタク向けの作品はDVDやマーチャンダイ
 ジング収入でやっと利益を得ている。
・日本国内のアニメDVDの価格の方がはるかに
 高い。



2.「北米市場/英語吹替はアニメにとって必要か?
  アメリカのアニメ市場が縮小してきた理由は
  本当にファンサブか?」


Sherman氏の発言への反対意見

・北米市場がなくなっても、日本は困らない。
・英語吹替を制作していると、リリースには何ヶ
 月もかかってしまうし、価格も高くなる。同時あ
 るいは無料でのネット配信が増えてきた現状
 には合わない
・アメリカ人の好みに合わない、萌えアニメばか
 り作っている日本が悪い
・市場の縮小は、アニメ作品自体に魅力がなくな
 ってきているからだし、だから何度も繰り返して
 見るために、DVDも購入しなくなってきている。
・吹替も中間搾取する企業もなく、ファンサブだけ
 でアニメを楽しんでいた時代に戻ればいいだけ
 のこと。商品を個人で直接輸入して買った方が、
 利益も日本側にそのまま届く。
・アニメが売れないのは、ダウンロード販売の時
 代に対応出来ていないから。
・Bang Zoom!はアニメ吹替がなくなっても、ゲ
 ームやCM、実写映画の吹替などの仕事をすれ
 ばいい。
・英語吹替がなくなれば、DVDの値段も落ちる。
・日本よりもずっと遅れてリリースするアメリカ側
 の責任。
・安いディスクの逆輸入を恐れて、なかなかアメリ
 カでのリリースを許さない日本側の責任。
・DVDが売れなくなったのは、テレビで放送される
 アニメがなくなったから。


Sherman氏の発言への賛同意見

・吹替でアニメを見たいので、北米のアニメビジ
 ネスが無くなって欲しくはない。
・アニメはそもそも、日本国内市場向けに作って
 いるもの。アメリカ人の好みに合わない作品が
 作られても仕方がない。
・アニメがなくなったら、楽しみであるアニメコン
 ベンションも、いずれなくなってしまう。
・海外市場は、日本のアニメ企業にとっても重要
 な収益源。
・一般層がまず見るのは吹替だから、やはり吹替
 は必要。
・字幕だけの安価なDVDセットのリリースだけで
 は、さらに市場が小さくなり、アニメは一部のマ
 ニアだけのものになっていく。


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あくまで代表的な考えをまとめてみました。
個人のレベルだと、さらに細かい立場や状況
もあるだろうとは思います。
とりあえず、今回の発言であらためて大きく
喚起されたのは、

・「アメリカのアニメ市場縮小の原因」
・「2010年現時点での、ファンサブの必要性と
  業界への害」
・「英語吹替の必要性」

の三点についての議論ですね。
真実がどこにあるのかは別として、ファンがそ
れぞれの立場でどう考えているか知っていく、
ひとつのきっかけになったと思います。


posted by mikikazu at 19:35 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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