というわけで、帰ってきました。
帰省していた、高知県の実家にはネット環境
がないので、色々ニュースが溜まっているよ
うですね。
ぼちぼち片付けていくとして、まず目についた
のが、アメリカ・サンフランシスコに拠点を置く
VIZ Media(公式サイト)が、オリジナル・コミッ
ク企画の募集プログラムを再開した、という話
です。
この企画は、2008年に一度立ち上げられて
いたんですが(参考・ICv2 2008年7月14日
付け記事)、2009年2月に行われたリストラで、
そのオリジナル・コミック部門担当副社長の
Marc Weidenbaum氏が退社したことにより、
どうなったんだろうと、ずっと懸念されていまし
た。幸いにして、再開の運びとなったようですね。
再開の証拠となったのは、VIZ公式サイト内に
用意された、提出ガイドライン文書なんですが、
目を通しても、提出する企画の扱いについての
取り決めや提出者の資格などが述べられてい
るだけで、プログラムに参加したいと思う人達が
一番知りたがっている、作品はどのような形で
いつ発表・出版されるのか、どのような作品が
求められているのか、ということについては言
及がありません。
そこで、Manga:about.comのDeb Aokiさん、
Anime ViceのGia Manryさんがそれぞれ、
VIZ Mediaのシニア・エディターであるEric
Searlemanさんにインタビューを行い(Aokiさん
はメール経由)、その辺の詳細を訊ねています。
Manga:about.com 2009年10月9日付け記事
"Q&A: VIZ Media Talks About Relaunch
of Original Comics / Manga"
Anime Vice 2009年10月9日付け記事
"VIZ Talks Original Submissions"
当然、答えは両者で重なるんですが、まず応募
された作品の発表形態については、
・「あらゆる形を検討している」
発表時期については、
・「企画を立ち上げたばかりなので、まだ答えら
る段階ではない」
求めている作品のジャンル・種類については、
・「マンガに限らない、多様なクリエイター達に
よる広い範囲のコミック」「優れたコミック」
ということで、まあ正直、なにも具体的になって
はいない、という感じですね。
逆に言えば、優れたコミックであるなら、なにを
描いてもいい、とも受け取れます。
興味深いのは、VIZ Mediaは日本製マンガ・ア
ニメの出版・流通会社なのに、この募集企画が、
「マンガ」ではなく、「コミック」を謳っている点で
すね。
「マンガ、あるいはマンガのように見えるだけの
ものを求めているのではないのです。誰にも、
どのような形でも、制限を設けたくはありません。
私達はただ、良いコミック作品を探しているので
す。それだけなんです」
というのが、その点についての、Searlemanさん
の説明ですね。
これは、講談社が開催している「モーニング国際
新人漫画賞」(公式サイト)の英語名称が、第1〜
3回の
「Morning International Manga Competition」
から、
「Morning International Comic Competition」
へと、今年の第4回から変更された理由(の想像)
と同じではないかと思います。
つまり、企画に「マンガ Manga」と冠してしまうと、
一生懸命にマンガ・スタイルを模倣しただけの
作品ばかりが集まってしまう危惧があるのでは
ないか、ということですね。
なにが「マンガ」で、なにが「コミック」かというと、
線引きは曖昧になるでしょうけれど、「Mangaを
募集しているのだから、マンガ・スタイルで描か
なくてはならない」という制約を与えず、もっと
自由な創造性の展開を期待しているのでしょう。
もうひとつのポイントは、この募集は完成作品を
求めているのではなく、あくまで粗筋と、完成さ
せた原稿を3ページ、それにキャラクター・デザイ
ン集といった、「企画」を求めていることですね。
日本のマンガ・コンテストや原稿持ち込みの場
合だと、とりあえず最初は全ページを最後まで
仕上げた、完成原稿を提出するのが普通だと
思います。
ところが、このVIZのオリジナル・コミック・プログ
ラムは、そういった企画だけで採用を検討し、
あとは実制作の初期段階から、編集者による綿
密な指導・打ち合わせを重ねていく方針になって
います。
日本のマンガを、世界のマンガ・コミックと比較し
た時の最大の違いは、編集者が深く関わった、
その制作システムにあるとは、よく指摘されるこ
とですけれど、その「日本的システム」(と断言出
来るほどには、実は僕個人も世界のコミック制作
現場全てに詳しいわけではありませんが)を取り
入れてみようということですか。
この件に関しては、例によってアダルトマンガ
専門出版社であるIcarus PublishingのSimon
Jonesさんがコメントを寄せていて(10月8日
付け記事 10月10日付け記事)、描けるテー
マは限られてくるだろうけれど、「バットマン」の
倍の読者数の目に触れる、英語版SHONEN
JUMP誌(公式サイト)を活用すべきだと語って
います。
確かに、SHONEN JUMP誌は日本版「少年
ジャンプ」より、ずっと対象年齢層は低いので、
いわゆる「濃い」「とんがった」作品は載せづら
いかもしれませんが、それでも大きな利用価
値がある、ということです。
個人的には、SHONEN JUMP誌来年5月号へ
の掲載が予定されている(単行本は8月から)、
英語版「バクマン。」と合わせて展開したら、
このオリジナル・コミック企画も面白くなるかも、
と思ったりしています。
マンガ家2人組が主人公であり、ジャンプ編
集部が大きな舞台となっているこの作品によ
って、ジャンプのマンガ・コンテストにも、若い
人による応募が増えたと聞きますが、同じこ
とはアメリカでも起きるかもしれません。
そういう人達が目指せる夢というか、具体的
な目標を、他でもないSHONEN JUMPが提
示出来たら、色々盛り上がりそうですものね。
今後の展開に注目です。