2009年09月24日

「アニメの殿堂」予算で、古いアニメのフィルム作品のデジタル保存を ―― 石黒昇さんの提言(Otakon記者会見・米メリーランド州ボルチモア)


話題的には少し前のことなんですが、紹介す
るには、今がちょうどいいと思います。
選挙前から公言していたように、民主党政権
は「アニメの殿堂」と一般メディアでは呼称さ
れている、国立メディア芸術総合センター(仮
称)の建設計画を撤回するようですね。

参考・
アニメ!アニメ! 2009年9月23日付け記事
「メディア芸術総合センター白紙撤回 
 大臣代替案を要請」


代わってアニメ・マンガ分野に、どんな振興
策が講じられるかは、まだわかりませんけれ
ど、それに関わる、実際にアニメを作っている
現場の方からの声を、ひとつ紹介しておきた
いと思います。


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7月17〜19日にかけて、アメリカ・メリーラン
ド州ボルチモアで開催された、東海岸最大規
模のアニメコンベンションOtakon(公式サイ
)には、たくさんの日本人ゲストも招待されて
いました。
そのゲストさん達による、プレス向けの記者
会見のひとつが、

・石黒昇(アートランド代表)
・丸山正雄(マッドハウス共同設立者)
・菊川幸夫(OVA「銀河英雄伝説」プロデューサー)
・松原秀典(「岩窟王」キャラクターデザイン)

といった方々によるもので、その内容を、ゲー
ム・マンガ・アニメの情報サイトAni-Gamersが、
ポッドキャストとして、8月30日に配信していた
んですね。


Ani-Gamers 2009年8月30日配信ポッドキャスト
"Ani-Gamers Podcast #019 - Otakon
Guests Press Conference"



記者会見では、色々と興味深い質問がされた
んですけど、その質問の流れとは関係なく、
時間の最後に、石黒昇さんが、メディア芸術総
合センター計画のことを、話題にしたんです。
55分00秒〜1時間00分20秒辺りなので、ペー
ジ上のプレイヤーで再生するなり、MP3ファイ
ルをダウンロードするなりで、直接石黒さんの
発言を聞いていただくのがベストですが、とりあ
えずここでも、石黒さんの発言の採録を掲載
しておきますね。


short_g.gif


・石黒昇氏の発言(Otakon記者会見より)

それでひとつ実はあの、ちょっと今も思い出し
たんですけど、最近、皆さんご存知ですか? 
日本の政府が、国営のマンガ喫茶を作ろうと
いう話があったというのはご存知でしたか?
いや国営のマンガ喫茶というのはちょっと――。
じゃあ、マンガ資料館ですね。アニメ・マンガ資
料館というのを、百億円出して作ろうという。


その作ろう、というのはいいんですけど、とりあ
えずそういう建物を作ろうという意図でして、そ
れだけで何をするかっていったら、何も考えて
いないんですね。
現場でも実は賛否両論。かなり反対意見も結
構あるんですが、実際にじゃあ百億円あったら、
何に使うかということに、色々な意見があるん
です。


実は、我々仲間で話していたもののひとつとして、
気がついたんですけど、日本のアニメーション、
実はもう始まって、45〜46年経つんです。今では
全部デジタルですが、初期のものは当然フィルム
で作られていて、いま、そのネガの保存状態って、
ものすごく悪いんですよ。


その点、アメリカはホントに羨ましいと思うんです
が、昔のフィルムが、いい状態で保存されている
んですよね?
ディズニーなんかは、初期のフィルムを、巻いて
おくと、要するに、お互いにくっついてしまうんで、
長い洞穴を掘って、そこに巻かずに、一本置いて
保存しているんだっていう話を聞いたことがあり
ます。


まあ、それは無理にしても、我々も初期のフィル
ムのネガを、今のうちになんとかデジタル化出来
ないだろうかということを考えている。
実は、そういったものをやった者がいて、それは
一本につき、約3000ドルかかるんですね。(日本
円で)30万円くらい。


100億円あったら、かなりのタイトルの、初期の
フィルムがデジタルとして残しておけるんじゃな
いかと思うんですよ。
もちろんそれは、SFもあり、名作もあり、愚作も
あり、とんでもないものもあるけど、でも、それは
ひとつの歴史的価値として残しておくと、必ずあ
とで役に立つと思うんですよ。


我々の仲間としては、そういったものを提言して
おこうかなと思っているんですけど、まあ、どうな
るかわかりませんけども。
もし皆さん、折がありましたら、そんな意見もある
んだということをね、日本の政府に言ってください。
日本の政府は、アメリカの意見に弱いですから(笑)。


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100億円を単純に30万円で割ると、3万3333。
フィルム一本というのが、25分エピソード1話
分として、4クールのアニメ作品が、640タイト
ルほどデジタル化出来る計算にはなりますね。
石黒さんは、それこそ日本初の本格テレビア
ニメ「鉄腕アトム」の頃からのアニメ制作者で
すから、他でもない自分も関わった、そういっ
た初期からのアニメを、きちんとした形で保存
したいという気持ちは、当然強いでしょうね。
アニメ制作現場からの、ひとつの真摯な提言と
して、民主党政権に届いて欲しいとは思います。
あ、最後のコメントは削っておかないとマズいか
もですけど(笑)。


short_g.gif


1時間ほどの長さに編集されたこのポッドキャス
ト番組は、ゲストの方々の日本語による答えは
そのまま残されていますけど、例によって質問
の日本語訳は割愛されています。英語リスナー
さんには必要ないですものね。
とはいえ、日本の方にも興味深い質問がされて
いますので、それぞれの質問の大意を、以下に
タイムコードと共に記載しておきますので、お役
に立てれば幸いです。


3分45秒〜
・石黒さんに
「『超時空世紀オーガス』には、アトランタという
名前の街が登場するが、それはアメリカに実在
する地名『アトランタ』(ジョージア州)と、何か関
係があるのか?」

5分15秒〜
・丸山さんに
「マンガをアニメ化するのを決定するのは誰?
アニメ制作会社? 出版社?」

7分16秒〜
・丸山さんに
「とても早い段階でアニメ化が決まったり、アニ
メの放送と同時進行で展開するマンガがあった
りするが、そういったケースについての説明を」

9分55秒〜
・全員に
「実現させたい、夢の企画は?」

18分50秒〜
・石黒さんと丸山さんに
「自分のアニメスタジオを運営する上での
苦労は?」

20分47秒〜
・全員に
「ハードロック・バンドのモトリー・クルーの
曲で、好きなものはある? あるいは他に
好きなミュージシャンは?」

24分20秒〜
・全員に
「アメリカで、日本のアニメが人気だと初めて
知ったのはいつ?」

29分40秒〜
・菊川さんに
「OVAシリーズ『銀河英雄伝説』が実現した経
緯について説明してください」

36分20秒〜
・松原さんに
「『岩窟王』で用いられていた、特異なアート
スタイルは、どうやって作り出していった?」

42分45秒〜
・石黒さんに
「故・長浜忠夫さんの思い出を語ってください」

50分20秒〜
・全員に
「アメリカで知られている、あなた方の作品は
SF物が多いが、それは好みなのか?」



という感じですね。
モトリー・クルーの質問は唐突ですが、日本か
ら来るゲストの方は、何故かモトリーのファンが
多いので、質問者の方は必ず聞いてみるんだ
そうです。ちなみに僕だと……「Too Young
to Fall in Love」「Same Ol' Situation」
「Afraid」辺り?
あと、長浜忠夫さんの作品は、ヨーロッパやア
ジアでは人気がありますけど、北米ではほとん
ど知られておらず、情報も入ってこないので、
ベテランの石黒さんに、ぜひ色々教えて欲しい、
とのリクエストでした。




posted by mikikazu at 08:35 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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