2009年09月12日

アメリカのアニメ・ファンを題材にした、新たなドキュメンタリー映画「Fanime」製作開始


これまでにも何本か製作されていますけれ
ど、アメリカで新たな、アニメ・ファンを題材
にしたドキュメンタリー映画の製作が進め
られているようです。

Anime News Network 2009年9月10日
掲載プレスリリース
"Anime Fan Documentary Casting Call"

によると、仮題は"Fanime"(fanとanime
を合わせたんでしょうね)で、製作するのは、
商業長編ドキュメンタリー映画を専門とした、
LUX DIGITAL PICTURES(公式サイト)
という会社。
これまで手がけたドキュメンタリー映画には、

"Nightmares in Red, White and Blue"
(アメリカのホラー映画の歴史)、
"American Grindhouse; This history of
the American Exploitation Film"
(エクスプロイテーション映画の歴史)
"Area 51; The Alien Interview"
(ネバダ州の米軍基地エリア51に、生きたま
ま捕らえられているという宇宙人について)

などがあります。
ドキュメンタリーといっても、いわゆる社会派
ではなく、コアなジャンルにこだわったテーマ
を扱っているようですね。
ドキュメンタリーではありませんが、ジョージ・
A・ロメロ監督のリビングデッド・シリーズ第1
作の3D化リメイク、「超立体映画ゾンビ3D」
(「超映画批評」レビュー)も手がけています。



新作ドキュメンタリー"Fanime"の製作開始
を伝えるリリースでは、ファンの目を通して、
アニメの歴史と文化的インパクトを伝えると
いう、作品目的が語られています。
そのインタビュー素材の収録のために、
11月6〜8日、ロサンゼルスのエアポート・
ヒルトン・ホテルで行う、撮影セッションへの
参加が呼びかけられていて、参加者には完
成した作品のDVDが、ギャラ代わりに送られ
るとのことですね。コスプレでの参加も歓迎
だそうです。


内容自体については、作品を見ないとなに
も言えませんが、とりあえず、個人的に2つ
指摘しておきたいことがあって、まず仮題で
はありますが、作品タイトルの"Fanime"が、
昨年度の全米アニメコンベンション参加者数
ランキング第5位(1万4926人)であり、1994
年以来15年の歴史を誇る、カリフォルニア州
サンノゼのFanimeCon(公式サイト)とかぶっ
てしまっていることですね。
小さいイベントならともかく、FanimeConは
北米を代表するアニメコンベンションのひと
つなので、何か関係を想像されても仕方が
ない(僕も一瞬思いました)ネーミングではあ
りますから、変更した方がいいと思います。


もうひとつは、見ればわかる通り、"Fanime"
公式サイト
の、アスカ・ラングレーさんのイラ
ストですね。
受ける印象は人それぞれかもしれませんが、
なにかの意図があるのでなければ、このイラ
ストはちょっと……と思います。
このイラストを見て、インタビューに参加した
くなるアメリカのアニメファンが、どれだけい
るかな、と……。
出来は別にしても、自主製作作品ではなく、
れっきとした商業作品を謳っているのですか
ら、版権キャラクターをそのまま使うのも、
たぶん問題があるのではないでしょうか。


short_g.gif


Anime News Networkが週刊で配信を始
めたポッドキャスト番組ANNCastの今週分
でも、ちょうどファンからの、「アニメあるいは
アニメファンダムを題材にした、ドキュメンタ
リー作品のお薦めはありますか?」という質
問が届いていて(35分00秒〜38分20秒)、
Zac Bertschy氏、Justin Sevakis氏が
合わせて即座に、「No」と答えていました。
たくさん作られてはいるけれど、出来の良い
ものはひとつもない、と。


アメリカのアニメファンを題材にしたドキュ
メンタリー映画というと、ずっと以前にレビ
ューを書いたこともある、「OTAKU UNITE!」
(英語で!アニメ・マンガ掲載解説ページ)
がありましたけど、それにしても、「プロフェ
ッショナルなリリースはされたけど、内容的
にプロフェッショナルに作られてはいない」
「撮影から時間が経ち過ぎていて、現在の
ファンダムの実情を映し出していない」と、
厳しい意見でした。
また、アニメを題材にしたドキュメンタリー制
作の難しさとして、例えば「スタートレック」の
ファンダムなら、アメリカではそれなりの認知
度がある作品ですから、ミスター・スポックが
誰とか、いちいち説明しなくてもよいけれど、
アニメの場合、例えば「桜蘭高校ホスト部」の
ことなど、アニメファンダムでは人気があって
も、一般のアメリカ人は誰も知らないから、
そういった基本的なことでも、説明していくの
に大変な時間がかかる、ということも語られ
ていました。


確かに、アニメ・ファンダムのドキュメンタリー
は、難しい作品作りになるでしょうね。コスプレ
という、絵になる素材があるから、手を出したく
なるのもわかりますが。
結局のところ、その人がアニメやマンガのファ
ンである理由は、それぞれ極めてパーソナル
なものの筈だから、それをカメラの前で、肉声
を使って、他人にもわかるように説明すること
の困難は、ほとんどがアニメ・マンガのファンで
あるだろう、うちのブログの閲覧者の方々にも、
容易に想像出来ることだと思います。
そもそも、口に出して説明することじゃないよね?
という感じだと思うんですが、どうでしょう。
だからこそ、紋切り型の語り口で終わらせない
ためには、そういった心情へのアプローチの妙
が問われるわけですが、この作品では、どんな
手法が取られるでしょうか。とりあえず、結果を
いつか見てみたいですね。


posted by mikikazu at 11:16 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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