かなり前のエントリーではあるんですけど、
サイトAnime 3000が、毎週配信しているポッ
ドキャストの4月13日配信回"State of the
Anime Industry"は、他のアニメ系サイト・
ポッドキャストの運営者の方々を集めて、
タイトル通りの、北米のアニメ業界の状態に
ついて語るものでした。
で、その冒頭15分程のテーマが、今年にな
って本格化した、"simulcast" ―― 日本で
の放送の直後に、ネットで字幕版を配信する
サービスが、その抑制をひとつの目的として
いる、ファンサブ行為に対して与える影響に
ついて、でした。
ネットでの(ほぼ)同時配信が、ファンサブを
抑制する可能性については、否定的な意見
が多かったですね。
まずファンサバーの多くは、日本語の学習の
ためにファンサブを制作しているのだから、
公式の字幕があろうとなかろうと、制作の努
力は続ける、あるいは、ファンサブ制作者と
してのプライド、などが挙げられていました
が、なにより大きい理由として、同時配信さ
れている作品であっても、引き続きファンサ
ブのニーズが存在し続けているから、という
ことがあるようです。
そのニーズを発生させているのが、一番多
くの新作アニメを同時配信しているCrunchyroll
(公式サイト)のサービス内容とされています。
現在提供されているサービスは、月額6.95
ドルのメンバーシップ料金を払えば、日本で
の放送直後に作品が見られて、1週間待て
ば、メンバーでない人も無料で見られる、と
いうものです。
月額6.95ドル(約640円)が高いかどうかは、
それぞれの人の生活レベルによりますけれ
ど、やはり払いたくない人は多いわけです。
長い間ファンサブで、日本で放送された直
後のアニメをずっと見続けてきた人には、
それが当たり前のことになって、今さらお金
を払ったりはしたくない。
特に「NARUTO」を見ている人は、いわゆる
カジュアルなファンで、見ているアニメも
「NARUTO」だけ、という人も多い。そういう
人は、「NARUTO」一本だけのために、わざ
わざお金を出したりはしないだろう。
その一方で、放送直後に、各所のフォーラ
ムのような場所で、最新のアニメ・エピソー
ドについて語り合うことも、アニメファンのア
イデンティティを守るために必要である。
無料になる1週間後まで待っていては、もう
話題遅れになってしまう。
そこに、ファンサブのニーズが発生している
のですね。合法な配信が始まる前に、無料
で見られるものを提供するという。
議論の中で、ファンサブを無くす方法があ
るとしたら?という問いに、「見る人が誰も
いなくなれば、そのファンサブはなくなる。
見てくれる人がいるからこそ、ファンサブは
作り続けられるのだから」という答えがあ
りました。
どんなに頑張ってファンサブを作っても、
誰も見てくれない、誰も自分がファンサブ
を作った作品について、フォーラムで語った
りもしない、という状態が続けば、当然モチ
ベーションは下がります。
しかし、Crunchyrollで配信されている作品
については、無料配信が開始される前に無
料で見たいという層が、確実に存在するわけ
です。配信から一週間以内にファンサブを
作れば、その人達が見てくれることは間違
いない。「自分達の行動に期待してくれてい
る人がいる」と、ファンサブ制作に努めるた
めの理由が、はっきりとするのですね。モチ
ベーションも高まるわけです。
無料で見られるのは1週間後という設定をし
たために、そも無料で見られるファンサブが
入り込める余地が発生してしまったのだ――
というのが、この議論での指摘でした。
では実際に、Crunchyrollでの配信後一週間
以内に制作されている英語ファンサブが、ど
れだけあるでしょう。この一週間最新の状況
を、ちょっと調べてみます。
日本放送日は日本時間、ファンサブ配信時間
は、どこかわかりませんけど現地時間です。
北米地域なら、14〜17時間の時間差があります。
「NARUTO-疾風伝-」第125話(345話)
日本放送・9月3日
ファンサブ配信・9月3日
「よくわかる現代魔法」第9話
日本放送・9月5日
ファンサブ配信・9月5日
「しゅごキャラ!!どきっ」第99話
日本放送・9月5日
ファンサブ配信・9月5日
「ハヤテのごとく!!」第23話
日本放送・9月4日深夜
ファンサブ配信・9月5日
「咲-Saki-」第22話
日本放送・9月6日深夜
ファンサブ配信・9月6日
「青い花」第10話
日本放送・9月2日深夜
ファンサブ配信・9月7日
「シャングリ・ラ」第23話
日本放送・9月6日深夜
ファンサブ配信・9月8日
「かなめも」第10話
日本放送・9月6日深夜
ファンサブ配信・9月8日
「花咲ける青少年」第19話
日本放送・8月30日
ファンサブ配信・9月8日
というように、この一週間の範囲だと、
「花咲ける青少年」第19話以外の、ここに
挙げた全作品が、同日から数日内にファン
サブが配信され、Crunchyrollでの一週間
後の無料配信を待つまでもなく、視聴可能に
なっていることがわかります。
待たずに、かつお金を払わずにエピソードを
はやく見たいファンのニーズに、ファンサブ
制作者達が応えているわけですね。
――Crunchyroll側からすれば、明白な営業
妨害なわけですが。
こういう状況で、Crunchyrollのビジネスが
上手くいっているとは、あまり思えないという
のが、正直なところです。