いつもお世話になっているサイトアニメ!アニ
メ!さんが、現在進行中の、「ヱヴァンゲリヲン
新劇場版:序」の北米での劇場公開についての
記事を掲載してくれていました。
アニメ!アニメ! 2009年8月20日付け記事
「『ヱヴァ新劇場版』北米限定公開中
アカデミー賞ノミネートも可能に」
記事のタイトルにもあるように、これで「ヱヴァ
新劇場版:序」はアカデミー賞の選考資格を得
たことになります。
――なるのですが、今現在北米で上映されて
いる「ヱヴァ新劇場版:序」は英語吹替版なの
ですから、商業上映されていることが条件なら、
選考資格を得たのも、あくまで英語吹替版、と
いうことになりますよね。そういう理解でいいで
しょうか?
先週末にボストンのThe Brattle Theatreで
上映されていたのも、英語吹替版でしたし。
・英語吹替版「ヱヴァ新劇場版:序」予告編
今でも多くの日本の方が、
「宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が、
第75回アカデミー長編アニメ賞を受賞した」
と誤解していますよね。
アカデミーを受賞したのは、あくまで「千と千
尋」の英語吹替版である、「Spirited Away」
という作品であって、「千と千尋」ではありません。
オリジナル日本語版の声優であった、例えば
主人公である荻野千尋役の柊瑠美さんの演技
などは、評価対象には含まれていない筈です。
考えてみればおかしな話で、日本の映画賞で、
アメリカのアニメーション作品の、オリジナルの
英語版ではなく、その日本語吹替版に、作品と
しての賞をあげようなんて言ったら、間違いなく
批判の嵐ですよね。
でも、米アカデミー賞では、そんな変なことが
まかり通っている。
興行の判断として、わかりやすい吹替版で上映
するのは、ひとつの方策だと思いますし、日本
でも字幕版・吹替版両方を用意するケースがあ
りますよね。
逆に、対象年齢層がもっと高くて、作家性を認め
られている今敏監督作品や、押井守監督の「イノ
センス」なんかは、英語字幕での上映でした。
ただ「イノセンス」は、長い台詞の字幕が延々と
続くわけですから、字幕を読むのに忙しくて、あれ
だけ凝った映像を見る余裕がなかった、なんて困
っている感想もよく見かけましたけど(笑)。
「ヱヴァ新劇場版:序」にしても、北米での権利を
獲得したFUNimationなり、配給を担当している
Eleven Artsが、劇場では英語吹替版での上映
の方がいいと考えたのなら、それはそれで彼らの
の判断です。
けれど、興行ではなく、作品としての評価を受け
る賞においては、やはりオリジナルの日本語版
で評価して欲しいという気持ちが、この「ヱヴァ
新劇場版:序」だけでなく、宮崎駿作品に対して
も、僕にはあります。
日本語版だから、アメリカの賞の対象にはなら
ない、ということはありません。
ノミネートこそされていませんが、日本語オリジ
ナル音声・英語字幕で上映された今敏監督作品
や「イノセンス」は、アカデミーでエントリーにまで
届いています。
それに2004年度のアニー賞では、今監督の「千
年女優」で、主人公・藤原千代子の70代を演じた
荘司美代子さんが、"Voice Acting in an Animated
Feature Production"(長編アニメーション声優
部門)にノミネートされたこともありました。
これも、オリジナルを尊重して、日本語オリジナ
ル版で公開されたからこそですよね。
でも、一番大きいのは、「エヴァ」という作品だか
らこその特質でしょうか。
別に、英語版のキャストさんがダメだとか言って
るわけではないんです。
「エヴァ」という作品においては、それぞれのメイ
ンキャラクターと、日本語声優さんの結びつきと
いうのは、ご本人達がどう思っているかは別にし
ても、とても大きいと思います。
シンジ君は、声が緒方恵美さんだからこそシンジ
君だし、綾波レイさんは、声が林原めぐみさんだ
からこそ綾波さんだという思い入れは、ファンの
人なら、きっと、とんでもなく強いと思います。
だから、「エヴァ」シリーズを作品として評価する
のであれば、緒方さんのシンジ君であり、林原さ
んの綾波さんがいる「エヴァ」をこそ、評価して欲
しいと願うのではないでしょうか。
まあ、これについては僕なんかよりも、真面目で
熱心な「エヴァ」ファンの方々の意見を聞きたい
ところですけど……。