2009年08月16日

英語版「崖の上のポニョ」の、北米映画批評界での反応


日本語メディアでも大きく報じられていますが、
現地時間の8月14日から、北米で「Ponyo」
こと英語版「崖の上のポニョ」の公開が始まっ
ていますね。

「Ponyo」北米公式サイト
http://disney.go.com/disneypictures/ponyo/

8月10日付け記事の時点での情報では、封切
りの公開館数は800館規模ということでしたが、
最終的には927館に達するようです(ソース・Box
office Mojo
)。
そしてさっそく、その初日の興行成績の数字も
出ています(ソース・The Numbers)。
それによると、封切り初日の「Ponyo」は第9位
で、金額は119万4000ドル(約1億1320万円)。
1館辺りの平均だと1288ドルで、これだと全体
で第5位ですね。
館数を考えると、健闘していると言っていいと
思いますが、ただしこの初日の数字は、一部の
館で行われた、午前零時1分からの先行上映
の回も含んだものではあります。
土・日になれば、もっと家族連れも増えそうな
気がしますが、どうでしょう。
ComingSoon.netの予測だと、公開初週は
300〜500万ドル、トータルでは1200万ドル程
度ではないか、とのことですね。


公開に合わせて、ネットで確認出来る北米メディ
アでも、「Ponyo」のレビューがどんどん出回り
始めています。
月曜の頃はまだ2つだけでしたが、その後19→
34→78と増え続けていて、もう読むのが追いつ
かない状態です。いずれは前作「ハウルの動く
城」の時のように、150近くにはなるんでしょうね。
その批評の内容の傾向ですが、お馴染みRotten
Tomatoes
の判断では、78のレビューのうち、
肯定が74、否定が4となっていて、割合でいう
と95%が肯定的な、圧倒的なものとなっています。
ただし、肯定とはいっても、10点中10点満点の
ものもあれば、「まあまあ」というものもあったり
で、その中身は様々です。
その全てを紹介することは出来ませんが、いくつ
かのレビューから、代表的・印象的なコメントを
少しだけ引用してみたいと思います。


あ、ひとつ気をつけておかねばならないのは、こ
れらのレビューのほとんどは、英語で吹替られた
「Ponyo」という作品に対するもので、オリジナル
の日本語版「崖の上のポニョ」に対するものでは
ない、ということです。
英語版制作においては、出来る限りオリジナルを
尊重して、という方針が取られてはいるようです
が、やはり違いはあります。
例えば日本での「ハウルの動く城」公開時、倍賞
千恵子さんがヒロイン・ソフィーの声の、18歳時・
90歳時それぞれを1人で担当されて、「やはり無
理がある」との批判があったと思います。
その批判を受けてなのかはわかりませんが、英語
吹替版では、18歳時はエミリー・モーティマーさん、
90歳時はジーン・シモンズさんと、それぞれ年齢に
合ったキャストが振り当てられました。
そういう意味では、日本語版と英語版では、ソフィ
ーのキャラに対する印象も、異なった可能性はあ
りますよね。


「Ponyo」については、予告編しか知りませんけれ
ど、日本語版「ポニョ」で、母親のリサのことをその
まま「リサ」と呼んでいた主人公の宗介が、英語版
「Ponyo」では、名前ではなく「Mom」と呼んでいた
のは、結構大きな変更だと思います。
日本版で母親を名前で呼んでいたのは、日本では
一般的ではないからこそ、作り手の意図が明確に
あったと思うのですが、それを変更しちゃっていい
のかな、とも……。
フジモト役のリーアム・ニーソンは、はまっている
と思います。


とりあえず以下、レビューからのコメントです。


short_g.gif


「『Ponyo』は、複層的な名作だった『千と千尋
の神隠し』よりは、ずっとシンプルで、子供向け
の作品である。けれど、あるいはその単純さゆ
えに、監督の偉大さがより明確に見えてくる」
・10点中10点満点
(David Edelstein/New York Magazine)


「『Ponyo』は物理的リアリティと、魔法のファン
タジーの間でバランスを取るために、念入りな注
意が払われた、子供向けの楽しめるファンタジ
ー映画である」
・4段階中のB+
(Cole Smithey)


「もし作品の気まぐれな波長についていけると
したら、過去の栄光には明確に遠く及ばない出
来だとしても、この宮崎の最新作にも、いくつか
の本当の楽しみを見つけられるだろう」
・四つ星中の2.5
(Andrew Schenker/Slant Magazine)


「観客を増やすことにディズニーの専門家達の
力を借りつつ、偉大なる宮崎はこの作品におけ
る芸術的な全ての面でさらに進化している」
・五つ星中の4
(Pete Hammond/Boxoffice)


「この映画は、宮崎自身のように、いまだに自分
の中の五才児と幸せに心を通わせられる人のた
めのものである」
(Scott Foundas/New York)


「比較的出来のよくない宮崎作品ではあるが、
この草分け的映画作家の手がけるどんな作品に
も、見てみるだけの価値はある」
(Kevin Lally/Filmjournal)


「語り口はシンプルにしても、映像的には魅力
的で、時に感動的な、オスカー受賞監督である
宮崎駿の新作『Ponyo』は、無垢な愛の力と、
自然世界の美しさを堪能出来る新たな冒険へと
観客を連れて行く」
・B+
(Emanuel Levy)


「アメリカで配給される機会を得た最新の日
本製アニメ・ファンタジー作である『Ponyo』は、
これまでこの国で公開されたそのジャンルの
作品の中で、最も広い範囲の観客に受けとめ
られる作品だ」
・五つ星中4
(Roger Moore/OrlandoSentinel)


「もしあなたが5歳か、あるいは幻覚剤か何かの
影響下にあるとしたら、『Ponyo』はたぶん傑作
に思えるかもしれない」
「しかしそれ以外の全ての人にとっては、『Ponyo』
は美しいが、驚くくらい退屈な作品に見えるだろう」
(Christy Lemire/ABC News)


「満員の試写会会場で、時々映写が中断してしま
ったんだが、映画の中でシーンが盛り上がってい
る時だけでなく、そんな時でも、観客の中の子供
たちの大部分は、しっかりと席に座り続けていた」
(Andrew Wright/The Stranger)


「この映画の真の主役は、もちろん宮崎駿監督の
映像豊かな美術世界である。世界の映画界におけ
る、手描きアニメーターの最後の生き残りの1人
である彼は、映画でしか描けない、幻想的だが子
供にも伝わる世界を再び創り上げている」
(Alonso Duralde/msnbc.com)


「映像の達人による真の家族映画」
・星4つ
(William Goss/Orlandoweekly)


「宮崎駿の最新作である『Ponyo』を見ていると、
どうしても(2005年8月末にアメリカ合衆国南東部
を襲った)ハリケーン・カトリーナのことを思い出さ
ずにはいられない」
「しかし、カトリーナによって水浸しにされた生存
者達を襲った悲劇と恐怖とは異なり、『Ponyo』
の水没した街の人々は、全く楽々と事態を受けと
めているのだ」
(Devin Faraci/CHUD.com)


「ウォルト・ディズニーには秘密だが、宮崎駿
こそが、魔法の王国への鍵を手にしている人な
のだ」
・評価-A
(Lisa Schwarzbaum/Entertainment Weekly)


(ファースト・シーンを見て)
「これは『芸術的』(artistry)以上の、まさに
『芸術』(art)そのものだ」
(Roger Ebert)


「『Ponyo』は過去の宮崎作品のいくつかほど、
記憶に残る作品というわけではないが、その
不思議な体験は、ほとんどの他のアニメーショ
ン作品より、ずっと上質のものだ」
(Calvin Wilson/STLtoday)


「当然の成り行きとして、他作品と『Ponyo』を
比較しようとした時に、最大のライバルになって
しまうのが、彼自身である。『となりのトトロ』や
『千と千尋の神隠し』にあったような、子供の肉
体の動きの眩しさが、『Ponyo』では描けてい
ない」
(Mark Fulton/Film Threat)


「今日は意地悪な老人といった役回りになるぜ。
『Ponyo』は腐った刺し身の臭う切れ端だ。
俺の好みの映画とは異なるってことだけじゃない。
『Ponyo』が受けるのは、言葉を喋り始めた
ばかりの子供か、メスカリン(幻覚剤)をやって
るような連中、それか『王様は裸』だって指摘
するのにビビってる批評家達にだけさ。
『テレタビーズ』が創造の天才に作られた作品
だって思うんだったら、はいはい、『Ponyo』で
も傑作なんだろうな」
(Jordan Hoffman/UGO)


「宮崎駿の『Ponyo』は、この伝説的な日本人
アニメーターの過去の傑作(『千と千尋の神隠し』
『となりのトトロ』)と同等の出来というわけでは
ない。しかし、今ひとつの宮崎作品でも、同じ
ように子供(と子供心を宿した人達)を対象にし
た、ほとんどの長編カートゥーンを上回る」
(Rene Rodriguez/MiamiHerald)


「『Ponyo』は宮崎信者と小さな子供向けの映画
だ。双方共に、物語の細かい問題は無視して、
映されたものだけを楽しむだろうから」
・五つ星中3
(Katey Rich/Cinema Blend)


「宮崎作品のマジカルな要素は、しばしば中心
から外れ、物語の中にまで十分深く結びついて
いないことがある。その奇妙さは、今回の作品
でも同様だ。『Ponyo』は、日常生活を見つめて
いる時こそが、最もマジカルである」
・評価-B
(Robin Clifford/Reeling Review)


「宮崎駿の『Ponyo』は、創造的な水中イメージと
魅力的な劇伴音楽で満たされた、多様で素晴ら
しく作画されたアニメーション映画である。物語
の最初から、愛する誰かを見つけ、世話をし、見
つめる宗介の喜びに感情移入することが出来る」
(Frederic and Mary Ann Brussat
/Spirituality & Practice
)


「宮崎と彼のアニメーション・チームは、最も優
れた3DCGアニメーターとプログラムですら成
し得ないだろう仕事が、伝統的な2Dのセル・ア
ニメーション・スタイルで、まだ可能なことを示し
た(ピクサーの天才達ですら、宮崎を畏敬してい
るのも不思議はない)。」
・四つ星中3
(Jeff Vice/Deseret News)


「年をとっていくにつれ、純粋かつ誠実、そして
正直に自分を喜ばせてくれる映画と出会うのは、
どんどん稀になっていく。宮崎は『Ponyo』を
そういう作品に仕上げてくれた。だからもし、
『Ponyo』でも、彼にとっては不出来な作品の
ひとつというのなら、我々は本当に、天才と時
代を共にしているのかもしれない」
・星四つ
(Mark Dujsik/Mark Reviews Movies)


「人々が宮崎と、彼の映画監督としての特別な
才能について書く時、彼の作品における映像面
についてのみ焦点を絞られるのがほとんどで、そ
れも仕方のないことではある。しかし、そういった
映像の素晴らしさに対するたくさんの賞賛の中で
時折忘れ去られているのが、宮崎はまた、極めて
優れた、物語作家でもあるという事実だ」
(Peter Sobczynski/eFilmCritic)


「もしあなたが人々に、自分は狂っていると思っ
て欲しがっていたら、思い出せる限り細かく、
『Ponyo』のプロットを説明してあげるだけでいい
だろう。
日本で敬愛されているアニメの達人である宮崎駿
のほとんどの作品と同じく、『Ponyo』は見る分
には美しいが、深く考えるには奇妙で、理性ある
人間が思いついたと信じるには難しいくらいに独
創的な作品だ。まあ、理性ある人間が思いついた
んじゃないのかもしれないけど、どうだろうね?」
・評価-B
(Eric D. Snider)


「一番喜ぶのは小さな子供達かもしれないが、
大人が楽しめる部分もたくさんある。子供達に、
友情と自由、愛と家族の価値を教えるのにも
役立つだろうね」
・鑑賞中に時計を見た回数=0
(Avi Offer
/The NYC Movie Guru
)


「子供向けとされる映画が、子供をよい人間に成
長させる可能性を備えて出来上がることが、実際
どれだけあるだろうか? 宮崎駿の新作である
『Ponyo』は、まさしくそうした映画の一本だ。
不思議でかつ奇妙であり、そして優しく純真な
『Ponyo』は、子供だけでなく心に子供を秘めた
大人達にも十分薦められる、愛に満ちた物語で
ある」
・星三つ半
(Peter Canavese/Groucho Reviews)


「時々はただ座って、美しいアニメーション映像
に身を任せるままにして、映画が自分をこの世界
から連れ出してくれるかのように、現実の面倒ごと
を忘れてしまうのもいいかもしれない。『Ponyo』
はまさにそういう種類の映画だ」
・85点
(Sean Gandert/Paste)


「『Ponyo』は子供であること、そしてどんなこと
も可能であると信じることは、どんな気持ちだっ
たかを、鮮やかに描き出している。精巧な美と豊
かなディテールを備えた映画といえる。宮崎駿は、
彼が優れたアニメーターであるだけでなく、物語
作家でもあることを、再び証明してみせた。
『Ponyo』は間違いなく、アニメーションも実写作
品も全て含めた中で、今年のベスト映画の一本
になるだろう」
(Beth Accomando/KPBS)


「クレジットに記載こそされていないものの、
宮崎駿の最新作である『Ponyo』における、
大きく、美しく、そして時に気まぐれなスター
は、『海』である」
(Joanne Kaufman/The Wall Street Journal)


「宮崎を映画作りの天才と考える人にとって、
『Ponyo』はおそらく彼の新たな傑作となるだ
ろう。そう考えていない残りの人にとっては、
1時間と45分を過ごす、十分に害のない方法
である」
(Jim Lane/SN&R)


short_g.gif


と、今日のところはこれくらいで。読んでくれた
方々も、お疲れさまでした。
そうですね、簡単に「アメリカでの評価は」と
まとめられないくらいに、レビューでも多様な
見方があるのがわかります。
まあ、「もののけ姫」や「ハウルの動く城」と比較
するのは、明確に子供向けである「ポニョ」に
とってフェアじゃないとは、僕も思います。
一度オスカー取ってしまうと、ずっと高い作品性
みたいなものを求められてしまうんでしょうか。



あと、否定的意見で、映像のトリップ感覚、ドラ
ッグ効果への言及があったのは、ドラッグ・カル
チャーが構築されていない(しなくていいですけど)
日本だと、あまり出てこない言葉かも?
総じて英語版キャストの評価は高いですが、日
本版を見て比較しているわけではないので、難
しいところです。




posted by mikikazu at 09:30 | TrackBack(0) | スタジオジブリ作品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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