2009年08月11日

英語での"J-POP"の意味が変化していく可能性 / サンフランシスコに日本映画・アニメの専門劇場VIZ Cinema開館


では今日の本題。
米・カリフォルニア州サンフランシスコ発の日刊
紙であるSan Francisco Chronicleが8月9
日付けで掲載していたのが、

San Francisco Chronicle
2009年8月9日付け記事
"J-Pop explodes: New People mall
 opening in S.F."


という記事でした。


記事の内容は、うちのブログを閲覧しているよう
な方なら、おそらく読んでおられる筈の、「萌える
アメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むよ
うになったか」(堀淵清治 日経BP)のラストで、
著者である堀淵さんが新たな計画として語って
いた日本映画とアニメの専門映画館を含む、日
本のポップ・カルチャー専門の複合商業施設であ
るNew Peopleを紹介するものですね。

New People 公式サイト
http://www.newpeopleworld.com/

ちなみに映画館であるVIZ Cinemaでは、実写版
「二十世紀少年」三部作や、「Bleach」の劇場版
第二作である、「Bleach The DiamondDust
Rebellion もう一つの氷輪丸」などが上映予定
のようですね。
「DEATH NOTE L change the WorLd」のDVD
発売記念イベント(8月25日)なんかもあるとか。


short_g.gif


で、興味深かったのが、その施設についての情
報ではなく、記事文中での"J-POP"という言葉の
使われ方なんですね。
僕は記事タイトルをまず見て、"J-Pop explodes"
(J-POPが爆発する)ということだから、ああ、日本
のJ-POPバンドかシンガーさんが、向こうで人気
を博しているということかな、新しいショッピング・
モールが出来たっていうから、そこでライブでも
やるんだろうなー、くらいに想像したんです。
でも、いくら記事を読んでも音楽の話なんて全然
出てこなくて、New People内のアパレルのお店
の説明がメインなんですね。


つまり、この記事の筆者であるBeth Hughes
さんは、"J-POP"が本来指し示す、日本のポッ
プ・ミュージックだけじゃなくて、マンガ、アニメ、
実写映画、ファッションなど、New Peopleが売り
にしている日本発のポップ・カルチャーを全てま
とめて、ひとつの文化現象として、"J-POP"と呼
んでいるんです。
Beth Hughesさんは、日本での滞在・生活経験
はあるそうですし、他でもない堀淵清治さんや、サ
ンフランシスコ在住のフレデリック・ショットさんに
も取材していますから、"J-POP"が、日本国内では、
あくまで音楽ジャンルの呼称であることは知りつつ、
あえて一般向けのこの記事では、日本のポップカ
ルチャー総体の呼称として用いたのだと思います。


日本国内で使われている言葉が指し示す範囲と、
外国でのそれが異なっていることはよくあります
よね。
「アニメ」にしても、日本では、外国製のアニメー
ション作品も「アニメ」と呼んで構いませんが、
海外だと"anime"は、あくまで日本製の作品のみ
に限定されている。
日本発のポップ・カルチャーを総体として呼ぶ、な
んらかの言葉があった方が便利だと考えた時に、
"Japanese pop music"ではなく、"Japanese
pop culture"という意味で、一般向けに"J-POP"
を使おうという意図なんだろうと思います。
ただ、知っている人にとっては、"J-POP"は
あくまで"Japanese pop music"なのですから、
正しくない、混乱を招くとして、反発を招くことも
ありえるでしょう。
"J-POP"を、日本発のポップ・カルチャー総体の
呼称としてしまったら、またあらためて、"Japanese
pop music"を指す英語の言葉が必要になりますし。
日本のポップ・カルチャー総体としての"J-POP"
が海外で勝手に定着してしまったら、海外に呼ば
れたファッション界や映画界の人達が、「J-POP
を代表する人達」という風に紹介されて、「いや、
音楽やってないし……」と困惑することもありそう
です。


こういう風な"J-POP"の、英語圏での用いられ方
は初めて目にした気がしますので、今後英語での
"J-POP"がどうなっていくのか、あるいはその意味
も、本来のそれから変わっていくのか、見つめてい
きたいです。


short_g.gif


ついでに、トリビア的なことも。
映画館も含む、複合商業施設としては、この
New Peopleがアメリカ初かもしれませんが、
映画館だけということなら、60年代に、東宝が
ロスやニューヨークで、直営館を経営していた
こともあったようですね。
「模擬される日本」(浜野保樹 祥伝社)からの
孫引きではあるのですが(P26〜27)、結局失敗
したそれらの、アメリカでの直営館運営について、
東宝の重役であった森岩雄氏は、その著書「私の
藝界遍歴」(青書房 1975)の中で(以下「模擬され
る日本」より引用)、


"ニューヨークで「もう一度日本物専門の映画館
を開く考えは毛頭ない」と断言し、海外で日本
映画の映画館を持つことは「まず日本の場合に
限り成功するというあてはないと言った方が正
しいだろう」と述べている。"



とのことなんですが、堀淵氏はサンフランシスコ
で、VIZ Cinemaの開館までこぎつけました。
これが成功するかどうかは、まだわかりませんけ
けれど、個人的には、映画はやっぱり映画館で見
て欲しいので、映画館でのアニメ映画体験という
ものを、より多くの人に味わって欲しいとは思いま
す。



posted by mikikazu at 11:54 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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