今ちょっと目を通しているのが、SF作家山本弘さ
ん(公式サイト)の短編集「審判の日」(角川書店)と、
連作短編集「MM9」(東京創元社)の二冊です。
短編集「まだ見ぬ冬の悲しみも」(早川書房)もあ
ります。
妹にするとかならないとかいった、個人対個人の
ミニマムな物語世界から、日本や地球、それこそ
宇宙全体の運命まで語ってしまうスケールの大き
なSF世界への移行は、読む側の振り幅としては、
極端でいいかなとも思って、手に取ってみました。
僕は昨今の日本SF小説界には全く疎いので、山
本さんの地位というか、SF作家としての評価みた
いなものは全然知りませんが、どちらもエンターテ
インメントとして、面白く読めています。
特に「審判の日」の方は、世界構造レベルで、暗く
絶望的なお話ばかりなので、結構クラクラきて、
読書体験としてはいいものです。
こういう風に、読む側の価値観とか、世界認識を
揺さぶってこそ、SFだと思います。
また同書収録の同題作品は、小松左京さんの、あ
る初期作品と同じ世界状況だと、思い出したりもし
ました。
別にパクリとかそういうことではなくて(SFでは有
名なテーマです。最近も、某ハリウッド映画であり
ましたし)、その状況を、携帯電話とかインターネッ
トが存在する、現在の世界で描いたらこうなるとい
う面白みも感じたんですね。
小松左京さんのその作品の最初のシーンは、公衆
電話が鳴っている、というものだったと思いますが、
どんどん街中から公衆電話が撤去されている現在
だと、逆にリアルじゃないと受けとめられる可能性も
あるでしょうし。
「MM9」の方も、ウルトラマンがいなくて、攻撃力も
持たない科特隊が、現在活動するとしたら、という
ひとつの思考実験として、面白いです。
あ、第2話「危険!少女逃亡中」なんかは、ホント
に小説じゃないとやれないネタですよね(笑)。
「エル・カザド」(公式サイト)も、引き続き第17話「追
い詰める女」を見てみました。
あれですね、夫婦漫才といえば、ブルーアイズさんと
部下その1さんのやり取りも、それなりに発展しつつ
あるような(笑)。
そしてラストでは、組織を離れて、個人の立場で最終
決戦に向かうブルーアイズさんに、ついに部下さんが
サングラスを外し素顔を見せて、「私にも、お供させて
ください――、ジョディお姉さま!」という風になるわけ
ですね。←もう毒され過ぎですっ
本編内容について評価すべき点は特にありませんが
(そちらのぎゅうっとな寸劇の方が、ずっと好きです。
リリオちゃんと夜更かししてお喋りしてたというエリス
ちゃんも微笑ましいですし)、ナディさんって、ホントに
腕利きの賞金稼ぎなのかなーという詰めの甘さは相
変わらずで、結構心配にもなってきたり(笑)。
そうそう、前話の寸劇では、「かなめも」(石見翔子
芳文社)も連想しちゃったんですけど、雑草サラダって、
わりに一般的な料理みたいですね?
とりあえず、日焼け止めはしっかりと、ですか。こっちは、
夏を乗り切れなくても、それはそれでもういいやって感
じです(笑)。