昨日届いた本の中から、作者さんにとっては二冊
目の単行本になる、「クローバー」(乙ひより
一迅社 作者さん公式サイト)を読んでみました。
先に一言でいうと、ちょうどこういう物語を味わって
みたかった、という「当たり」な感じですね。
先日読んだ、処女単行本「かわいいあなた」と比較
すると、格段にマンガとしての語り口がレベルアップ
していて、とても楽しく読めました。お薦めしてくれた
りょうさんに、あらためて感謝をしたいです。結局ロザ
リオをちゃんと渡す機会もないままなのは、申し訳な
いなのかなんなのかですけど……。
「かわいいあなた」は、評した通りに、百合コミックと
しての入門編というか、スタンダードなお話ばかり
をまずやってみたんだな、という印象があって、作
者の力量やオリジナリティが問われるのは、この二
冊目になるだろうと思っていたんですが、その期待
に、見事応えてくれていると思います。
作家としての成長が如実に感じられて、読んでいて
気持ちがよかったですね。
その、成長という面で指摘出来るのは、たとえば構
図の効果的な多様化が進んでいることでしょうか。
「かわいいあなた」の頃よりは、視点がより複雑か
つ、物語が求めている文体に対して正しく配置され
ていると感じました。
第1話「彼女の隣」2P目の、電車内の端と端にいる
2人のキャラクターを同時に、ひとつのコマに配置し
た構図なんかは、カットを割らない限り、実写作品で
は不可能な表現ですよね。セットを用意してカメラを
うんと引いて撮ってもいいけど、おそらくはとてもリア
リティに欠いた映像になると思います。
他にも、背景の絵の、必要な解像度の選択といった、
「マンガだからこそ出来る」表現の洗練が進んでい
るのは、作者さんが、マンガ家として、順調に成長
している証明でしょうね。
個人的には好きなお話は……、全部好きですけど、
しいて選ぶなら、第2話「bitter girl」でしょうか。
気持ちよさそうで綺麗な「ちゅー」がたくさんあった
というのが、理由として大きいかもですけど(笑)。
寸止めじゃなくて、意思疎通の手段として必要なキ
スという行為を、2人の関係性の進行・変化と合わ
せて、それぞれ行ってくれるのが、なんだかいいな
あって。
ポンポンもいいです。ポンポン、して欲しいなあ。
ところで作品内容とは、全然まったく関係ない話で
すが、この作品の主人公姉妹の苗字は、「橘」なん
ですね。
先日楽しく読んだ、「ストロベリーシェイクSweet」
(林家志弦 一迅社)の主人公も、「橘」樹里亜さん。
お馴染みりょうさんの旧名(?)も、「橘」遼さんという
ことで、「橘」って、そういう系に(←どういう系?)、
人気というか、雰囲気の合う名前なのかなーとか、
ダメダメなことを思ったりもしました(笑)。
あと、ちょうど下書きを始めようと思っていた、こち
らの「マリア様がみてる」ファン小説と、文脈こそ違
え、同じシチュエーションが、この「クローバー」の中
で見つかってしまったので、その祐巳さん×瞳子さ
んなお話が、ボツになってしまったのは、個人的に
残念です。