それから他に読んだのが、まずお気に入りだと
りょうさんにメールで教えてもらっていた、百合コ
ミック短編集の「かわいいあなた」(乙ひより 一
迅社 作者さん公式サイト)。
出版は2007年7月と、少し前ですが、雑誌「コミッ
ク百合姫」に掲載されていた、女の子同士の恋愛
を描く短編を集めたものです。
ちなみに僕自身は、「百合姫」及びその関連雑誌を
定期購読してはいないので、こうやって作家さん単
位でお薦めされたら、単行本で購入する、という立
場ですね。
収められた6編の作品は、百合作品に詳しいわけ
ではない僕の目からしても、どれも既読感の強い
ストーリーばかりで、女の子同士の恋愛を描く上
でまず思いつく、基本的なフォーマットをそれぞれ
紹介してみせた、という役割色の強い短編集にな
っていると思います。
百合コミックというジャンルの歴史の短さ、市場の
小ささからすれば、ジャンルを紹介する出発点的な、
定番のお話ばかりのこういう短編集も、商品として、
きっと必要なんでしょうし。
そういう意味でオリジナリティは薄いと思うんです
が、それだけどれもシンプルなお話になっているの
で、読みやすいとはいえます。
これが初めての作品集ということで、作者さん個
人のオリジナリティが発揮されているとしたら、次
の作品「クローバー」からでしょうか。
単行本の表題作である「かわいいあなた」が、一
番訴求力がある作品だとは僕も思いますけれど、
それは自己否定から、他者による自己肯定のハッ
ピーエンドという文脈の力強さゆえだと思います。

高屋奈月さんが新作「星は歌う」を連載されている
ことは、もちろん知っていましたけど、すぐに読もう
としなかったのは、やはり大長編「フルーツバスケット」
の後で、すぐに別の物語に移るのにも、少し気後れ
があったからですね。
でもとりあえず、5巻までまとまったということで、
読んでみることにしました。
語り口のクオリティ的には、「フルーツバスケット」
終盤の雰囲気そのままで、安心して読み進められ
ました。微笑ましいキャラクター達のやりとりを楽し
む一方で、こちらの心を痛く抉るそれぞれの事情が
展開されていくのも同様で、ページをめくるのに、
いい意味での覚悟が必要な作品というのも変わりま
せん。
ファンタジー設定が導入されていた「フルーツバスケ
ット」の場合は、呪いが解けるという、ひとつの救い
というか展開が用意も出来ましたが、それがないこの
「星は歌う」は、本当に生身の人間の出来ることだけ
で事態に立ち向かわなくてはいけないというシビア
さが明確なので、「フルーツバスケット」の次にやる
作品としては、正解だと思います。

文字通り息を詰めて読み進めなくてはならない
「星は歌う」の後だと、その馬鹿馬鹿しいテンション
の高さが、いい意味で救いというか気分転換になっ
てくれたのが、「ストロベリーシェイクSweet」全2巻
(林家志弦 一迅社)ですね。
これは、「かわいいあなた」と同じく「百合姫」(と今
は亡き「百合姉妹」)掲載作品ですが、僕が読もうと
思ったのは、同じ作者さんの「はやて×ブレード」が
面白かったからです。
一応学園バトル物の体裁をとっている「はやて×ブ
レード」では、女の子同士の関係は、戦うパートナ
ーあるいは敵としてのものが、まず前提でしたが、
こちらの作品は、正面から、恋愛感情を主体として
描いています。
バトル物でないのに、こんなにも女の子が鼻血を出
す作品はスゴイとは、確かに思いましたけど(笑)。
ギャグ四コマがメインの第1巻と違って、ストーリー
モードがメインとなる第2巻では、主役2人の恋愛
関係も、それなりにシリアスに進んで、読み応えは
あると思います。
「はやて×ブレード」がそういう意味では寸止めなの
で、逆に直球の恋愛心情物語を、とことん満喫出来
るというか。
少しずつ歩み寄り始める2人の恋心の描きようが、
微笑ましく嬉しい物語です。

マンガ版に限定してなんですけど、「マリア様が
みてる」(長沢智 集英社)で一番可愛いと思った
キャラは、実は祥子さんかもなんですね。
これは絵柄の影響が大きいんでしょうけれど、
いい意味で不器用な、表情と感情の多彩さが楽し
めるという感じで、キャラが生きていると思いました。
由乃さんもいい子ですけど、まあ担当が令さんと
して、はっきりしてますし(笑)。変に堅苦しくない、
祐巳さんとのまっすぐな友情も素敵ですよね。
ともあれ、お気遣いありがとうでした。ぼちぼち
出来る範囲で頑張っていきます。