2009年05月08日

フェリーぺ・スミスさんの「MBQ -テイルズ・オブ・LA-」第1巻、読みました。


注文しておいた、フェリーぺ・スミスさんの「MBQ
-テイルズ・オブ・LA-」
第1巻(ソフトバンククリエ
イティブ)と、「PEEPO CHOO ピポチュー」第1巻
(講談社)が届いたので、さっそく読んでみました。
まず「ピポチュー」の方は、評価の対象とすべき
物語の本筋となるのが、アメリカ組と日本組の
キャラ達が本格的に関わり始める、第2巻以降
のエピソードからだろうと想像します。
なので、現時点で作品に対して評価をくだすのは
時期尚早でしょうから、コメントはまだ出しません。
すみません。
「MBQ」の方も、全3巻のうちの1巻だけで、どう
こう語るのはフェアではないかもしれませんが、
とりあえずでよければ、感想を少しだけ述べてお
きますね。


参考・
英語で!アニメ・マンガ 2009年4月16日付け記事
「『モーニング・ツー』連載中フェリーぺ・スミス
『ピポチュー』単行本+作者の過去作品『MBQ』
単行本発売!更にNHK『マンガノゲンバ』出演!!」



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オリジナル通りの左開きのままの出版ということ
で、最初は少し戸惑いもありましたが、読み進め
るうちにすぐに慣れました。 
左開きのコミックに慣れた北米の人が、右開きの
日本マンガに触れるのと、ちょうど逆の体験ですね。
台詞についても、横書きの翻訳のトーンには、す
ぐに慣れるでしょう。


内容的なことについて言うなら、抽象的な表現で
すけれど、とてもよく「わかる」作品になっていると
思いました。
もちろん僕は、作品の舞台になっているロサンゼ
ルスで生活をしたことはありませんが、映画やテ
レビドラマで見知っている街の雰囲気とは違うレ
ベルでの、キャラクター達の生活の空気を感じら
れたんですね。
それがリアルとかリアルではないとかいうことでは
なく、ひとつの作品世界としてのレベルに達してい
るということです。
マンガ家志望者からファーストフード店の店員、警
官からギャングまで、それぞれのキャラで、全くそ
の中身は違いますけれど、この作品世界で彼らなり
に生きているという感覚が伝わってくるのは、読ん
でいて、とても心地よいです。彼らの視点の高さを
共有出来るというか。
描写としての誇張はたくさんありますけれど、それ
がナンセンスにいたらず、ギリギリにキャラクターの
リアルを保っている筆致のセンスには才能を感じ
ますし、素直に、このキャラクター達の物語の続き
を読みたいと思いました。


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もうひとつ評価出来るのは、この作品が、誰にでも
一度はチャンス出来る種類の物語であり、そのチャ
ンスを見事にものにしている作品だ、ということで
すね。
後書きによると、この作品に登場するキャラも背景
も、作者の知っている実際のロスにモデルがある、
とのことです。
モデルがあること自体には、何の価値もありません
が、作者が知っていることを、作品のかたちで練り
直して再構築し、読者に伝わるものとして作り上げ
るのには、それなりの技術とセンスが必要だと思い
ます。


僕はかつて自主映画制作の世界に、首を少しだけ
つっこんでいたことがありますけど、特にドキュメン
タリー作品において、何かを撮れと言われた時に
は、どんな人でも、自分や自分の身の回りの人間、
家族や友達、恋人を題材にして、一本くらいは作品
を撮れてしまうものです。
出来は別にして、よく知った相手は素材として楽な
わけです。続けて作品を撮り続けられるかはどうか
は、本人の中の引き出しの数の問題ですけど。


この「MBQ」にある、語り口の視点の細かさ、空気の
描き方にリアルを感じるとするなら、それはモデル
があるからだと結論付けるのは簡単ですが、モデル
があることと、それを見つめていた作者の視点を、
作品のかたちで再構築し、読者に伝わるように提示
するのは、全然別のことだと思います。
モデルがあるから価値があるのではなく、結果とし
ての作品が、ひとつのリアルを構築しているからこ
そ、価値があるのです。
幸いにして、この「MBQ」は、そのレベルに達してい
る作品です。
作者にだけ見えるロスの世界が、そこにあるものと
して、読者としての僕にも伝わってくるのです。
自転車に乗って、オーバーランド・アベニューの坂
を駆け下りるオマリオの頬を撫でていく空気の感触
が、わかるのです。
コミックなのかマンガなのかというくだらない問いと
は別次元の話として、物語世界が構築出来ている
と思うんですね。それでいいと思います。


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なので「MBQ」については、当然続きも読んでみたい
のですが、たぶんフェリーぺさんのエージェントとしての、
椎名ゆかりさんの功績が評価されるとしたら、やはり
それは日本語版の売り上げの数字からになると思うの
で、原書購入ではなく、日本語版の続刊出版を、おとな
しく待ちたいと思います。今後もよろしくお願いします。
作者がアメリカ人だからということとは関係なく、
ロスを舞台にしたひとつの作品として、とてもお薦め
です。




posted by mikikazu at 12:19 | TrackBack(0) | マンガ感想-いろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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