更新をお休みしていた間での、海外での大きな
ニュースのひとつは、高橋留美子さんの新作マ
ンガである「境界のRINNE」が、日本での掲載誌
少年サンデーの発売と同日に(4月22日)、アメリ
カでも新規に立ち上げられたサイトTheRumicWorld.com
において、英語翻訳版をネット配信開始したとい
うことですね。
参考・
アニメ!アニメ! 2009年4月16日付け記事
「高橋留美子 新連載『境界のRINNE』 米国サイト
で同時配信開始」
UPI.com 4月26日付け記事
"Japanese publisher fighting comic bootlegs"
アニメでも、日本での放送直後の配信というケース
が増えてきましたが、マンガ作品では初めてになる
ようですね。
この日米同日配信の目的のひとつは、海外で大き
な問題となっている、アニメだとファンサブ、マンガ
だとスキャンレーションと呼ばれる違法配信を抑制
することだそうですが、実際どれだけの効果があっ
たんでしょうか。
結論から先に言ってしまうと、あくまで僕の調べた
範囲ですけれど、独自に翻訳した英語台詞をその
まま貼り付けた形での、「境界のRINNE」の英語ス
キャンレーションというものは、ちょうど一週間が過
ぎた今でも、ネット上に出回っていないようです。
日本と同日に配信されることが発表された時点で
見かけた、「これなら、もうスキャンレーションする
人はいないよね」「必要ないよね」という、アメリカ
のファンの反応そのままの結果ですね。
ただし、オフィシャルでの翻訳はそれとして、自分
ならこう訳すという風に、訳文だけを発表している
人はいます。
作品内容それ自体への評価は別にして、配信され
た英語翻訳版の、画像・翻訳のクオリティに対する
不満もないようです。
ただ、4月22日の同日配信という触れ込みにはな
っていましたが、実際にアメリカで配信開始された
のは、現地時間の22日午後7〜9時頃、日本時間
でいう4月23日午前9〜11時頃になり、正確には
24時間以上の時間差はあります。
プレスリリースなどでは、「4月22日」という記載の
みで、配信が開始される時刻までは伝えられてい
ませんでしたから、朝からずっとワクワクしながら
ネットに張り付いて待っていた人達は、夜まで大変
だったようですね。お疲れさまです。
このTheRumicWorld.comにおける英語版の配
信は、あくまでアメリカ国内からのアクセスに限定さ
れていて、日本を含むそれ以外の国からは、アク
セスすることは出来ません。
出来ませんが、「鋼の錬金術師 FULLMETAL
ALCHEMIST」の時と同様に、配信開始と同時に、
世界の誰でもがアクセス出来る画像アップロード
共有サイトなどに、内容がそのまま転載されてい
るので、「アメリカ限定配信」というお題目は、無意
味化されているのが現状です。
大手フォーラムなどで、「うちの地域からは見られ
ないんだけど」と訊くと、「ここにアップされてるから
問題ないよ」とすぐに教えてくれています。
一週間が過ぎた今でも、複数のサイトで削除されて
いなくて、権利者サイドが気がついていないわけも
ないと思うんですが、黙認あるいは放置という処置
に、結果としてなっています。
また、英語以外のスキャンレーションということでは、
3日後の25日頃になって流れ始めた、ポルトガル
語版がまず確認されています。
ひとつ指摘しておきたいのは、英語版の公式配信
によって、それ以外の言語によるスキャンレーショ
ンの制作・流通が早くなる可能性もあることです。
つまり、日本語からそのまま訳せない、英語以外の
言語のスキャンレーション・グループは、英語版の
スキャンレーションの配布を待って、それを基に翻
訳を進めていくこともあるわけですが(だから、原文
とはかなりかけ離れた翻訳になる場合もあります)、
オフィシャルな英語翻訳が、オリジナルの出版直後
に配布されるのなら、これまでのように、他のグルー
プによる翻訳を待つ必要もなくなるんですね。
このポルトガル語版が、日本語版から訳したものか、
英語版を経由したものかは判断出来ないので、あく
まで可能性のレベルですが。
とりあえずこの辺りが、一週間を経た現時点での
状況のようですね。
この日米同日配信を、どうやってビジネスとしての
大きな利益につなげるか、その手法に注目したい
ところです。