2009年04月06日

HIMEKAさんの歌う「明日へのキズナ」(戦場のヴァルキュリアOP曲)を聴く、2つのスタンス


あ、いよいよテレビアニメ春新番シーズン開始という
ことですね。
チェック予定に入っていた、「戦場のヴァルキュリア」
(公式サイト)は、こちら関西地区では先週土曜日深
夜から放送が始まっており、本編を見るのは、りょう
さん
に合わせて、BS11で放送が始まる4月11日以
降になるんですけど、ちょっと気になっていたOPだけ
見させていただきました、すみません。


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この「戦場のヴァルキュリア」のOPテーマである「明
日へのキズナ」という曲に対して向き合うには、とりあ
えず2つのスタンスが思いつきます。
まずは、歌い手であるHIMEKAさん(公式サイト)自身
の「物語」にとっての、ひとつの到達点とするものです。
ご存知のようにHIMEKAさんは、カナダのフランス語
圏ケベック州の出身で、日本語のネイティブ・スピー
カーではありません。そんな彼女が、日本語でアニメ
ソングを歌い、プロのシンガーとしてデビューするとい
う、サクセス・ストーリーの最初のクライマックスだと
考えるわけですね。


彼女の「物語」を知るには、公式サイトからはリンク
されていませんが、デビュー以前から綴られている、
他ならぬ彼女自身のブログ「HIMEKA in JAPAN」
が、一番役に立つテキストになると思います。
ブログの最初の頃は、とにかく「お金がない」という言
葉ばかりで(笑)、生活するだけで精一杯、歌の練習
をするのもカラオケボックスしかなくて、お金がない時
はそれも無理、日本語上達のための学校に通うなん
てとても考えられないといった感じの、本当に自分は
日本でアニソンシンガーになるという夢をかなえられ
るんだろうか?という、不安と焦りの気持ちがたくさん
伝わってきます。
それが、第2回全日本アニソングランプリに応募し、
見事に勝ち抜いて、ついにプロ・デビューに至るまで
の過程は、他人が感情移入するには、十分です。
○○○○の写真は削除して欲しいですけど。うぎゃ。


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一方のスタンスは本質主義というか、歌はあくまで独
立したひとつの存在であり、歌い手がどんな物語を背
負っていようと関係ない、というものですね。
例えば、ハリウッドで仕事を得ようという者にとっては、
英語でのコミュニケーション能力は最低限の必要基
本事項に過ぎず、「非英語圏出身なのに英語が出来
てスゴイね」なんて褒められることはないでしょうし、
それだけで仕事に繋がることはないと想像します。
日本市場向けのアニメOP曲なのだから、日本語で歌
うのは当たり前であって、その当たり前のことが出来
ているだけで、評価するのはおかしい。
重要なのは、結果としてのその曲自体が、OP曲として
作品とその物語に、どんな貢献をしているかである――
という考えになります。


確かに全ての人が、「この曲は日本語ネイティブでは
ない、外国から来た人が歌っている」という知識を前
提に聴いてくれるわけではないですよね。
本当に、ただの深夜アニメのOPとして、あるいはたま
たまラジオや有線、アニメショップの店頭で流れていた
曲としてだけ、この「明日へのキズナ」に触れるのかも
しれません。
そんな人達が、HIMEKAさんのことを知らないからとい
って、この曲のことを理解する資格がないとは、決して
言えないでしょう。


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僕個人の感想は……、「戦場のヴァルキュリア」という
作品については何も知らないままなので、作品のOP
としてふさわしいのかどうかという判断は全く出来ませ
んけれど、前者のスタンスを踏まえて言うと、彼女の
母語であるフランス語で歌ったのなら、どんな感じに
なるだろう、とは思いました。
日本語で歌うからこそ、アニソン歌手としてのアイデ
ンティティが構築出来るという話は以前にも少ししま
したけれど、だからこそ、とりあえずデビューを果たし
た彼女の物語が進むべき次の段階は、自分にとって
ネイティブでない言語で歌うことの、シンガーとしての
本質的な意味になると思います。


母語であるフランス語での方がずっと上手に歌えるの
だとしたら、日本語で歌いたいという気持ちは、自己
満足にしかならない。
歌は何かを伝えるためのものだから、歌い手という媒
介である自分は、自分にとってベストの表現ツールを
選択すべきである。
自分は日本語で本当に、何かを伝えられているのか、
日本語でしか伝えられないものが、自分に与えられた
アニメソングの中にあるとするなら、それは一体なんな
のか――。


「だから、歌の力でみんなにも力をあげたいです。

 助けてくれて、ありがとう。
 私は歌声で返すつもりです。」

 (2009年3月23日付け記事より)


そういうHIMEKAさんの気持ちが、本当に伝わる瞬間が
あればいいと思います。


posted by mikikazu at 07:57 | TrackBack(0) | アニメ感想-いろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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