まだ伝えていない情報もあるので、もう少し、2008
年の北米マンガ市場についての話を続けます。
今回参考にするのは、マンガレビュー・情報サイト
Manga Recon2月14日付け掲載の、
"Manga Recon @ NYCC 2009: ICv2
Conference, Part 1"
"Manga Recon @ NYCC 2009: ICv2
Conference, Part 2"
という2つの記事です。
ニューヨーク・コミコンでのICv2 Conferenceに
足を運んだErin Finneganさんが、また色々と情報
を伝えてくれてます。
Erinさんは、このManga Reconや雑誌OTAKU USA
にライターとして寄稿するだけでなく、ニューヨーク発
のポッドキャストNinja Consultantを、パートナーの
Noahさんと運営されていますが、本業はカートゥーン
作品の音響エンジニアの筈です。ちょっと前に、今は
Teenage Mutant Ninja Turtlesに関わっていると
仰っていたような。
ともあれ、基本的に明るい雰囲気だったというICv2
Conferenceで示された、あらためての数字もありま
すが、目に付いた情報を整理すると、
・グラフィック・ノベル全体の売上げは3億9500万ドル。
前年から5%の伸び。
そのうち図書館への売り上げは3500万ドル(約8.86%
の割合)。
・北米で出版されたマンガのタイトル数推移
2005年――1088
2006年――1208
2007年――1513
2008年――1372
2009年――1224(予定)
2008年は、初の前年から9%減少。2009年もさらに
減少の予想。
・北米でのマンガ売上げ推移
2002年――6000万ドル
2003年――1億ドル(+67%)
2004年――1億3500万ドル(+35%)
2005年――1億7500万ドル(+30%)
2006年――2億ドル(+14%)
2007年――2億1000万ドル(+5%)
2008年――1億7500万ドル(-17%)
2008年度は初の減少。
・グラフィック・ノベルの中での各ジャンルの割合
マンガ――44%
スーパーヒーロー/SF/ファンタジー/探偵――33%
フィクション/リアリティ――4%
キッズ/ツィーンズ――3%
ユーモア――2%
その他――18%
・他のグラフィック・ノベルのジャンルで、大きな出版
タイトル数の伸びを示しているのが、キッズ&ツィー
ンズ向けで、前年から134%の伸び(145→340)。
・グラフィック・ノベルの最も多い購買年齢層は、
25〜34歳(57.7%)。次いで19〜24歳(27.8%)。
・コミック最大手流通業者Diamond Comic Distributors
が扱いをやめた作品9万8000のうち、最も多かった
ジャンルは、マンガの43%。
・意識調査した小売店のうち、回答者の42%が、2009年
もマンガの棚スペースは2008年と同じと答える。34%
は増やすと回答。減らすと答えた小売店はほとんどなし。
・図書館では、55%が2009年はグラフィック・ノベルの
割合を増やすと回答。「同じ」が40%。
辺りになりますね。
個人的に興味深いのは、図書館へのグラフィック・ノ
ベルの売上げの割合がわかったことでしょうか。
一般書店での売上げデータがわかるBookScanの調
査対象ではないので、詳しい数字はずっと知りません
でした。
グラフィック・ノベル全体の約8.86%で、そのうちマン
ガが半分近くとしても、結構大きい市場ですよね。
続く景気後退の中で、図書館の利用者はさらに増え
ると目されていますが、同様に、図書館自体の予算も
減らされていくと思われるので、その中での図書購入
費の捻出が、司書さん達の悩みになりそうです。
子供向けのグラフィック・ノベルの出版数が急激に
増加しているというのも、割合はまだまだ小さいにし
ても、将来的には意味が大きいかもしれません。
UDON Entertainment(公式サイト)などは、対象
を明確に7〜12歳の低年齢層に絞ったUdon Kids
(公式サイト)を今年立ち上げましたし、けっこう良い
狙いどころになるかもしれません。図書館向けとして
も、いいカテゴリー設定でしょうし。
ところで、昨年の北米グラフィック・ノベル市場の堅調
を支えた要因が、コミックを原作とした映画「ダークナ
イト」と「Watchmen」(の予告編)という話が出ていた
んですが、そういう意味で今年注目になるのが、マンガ
を原作とした実写映画である、「DRAGONBALL
EVOLUTION」(日本公式サイト)だと、流れとして言っ
ておかなくてはならないですか。
確かに、現時点では悪評が圧倒的みたいですけど、
実際の映画本編を最後まできちんと観た人は、まだ
1人もいないわけですし。
VIZ MediaのLiza Coppolaさんによれば、北米で
は4月になる映画の公開に合わせての、「ドラゴンボー
ル」の原作マンガ売上げ増にも期待しているとのこと
なので、コミックに対しての映画「ダークナイト」のよう
に、昨年度売上げが落ちたマンガ全体に対して、映画
「DRAGONBALL」が刺激剤となるのが理想なんです
けど……と、一応言っておきますね。