2009年02月18日

さらに2008年北米マンガ市場について


まだ伝えていない情報もあるので、もう少し、2008
年の北米マンガ市場についての話を続けます。
今回参考にするのは、マンガレビュー・情報サイト
Manga Recon2月14日付け掲載の、

"Manga Recon @ NYCC 2009: ICv2
 Conference, Part 1"


"Manga Recon @ NYCC 2009: ICv2
 Conference, Part 2"


という2つの記事です。
ニューヨーク・コミコンでのICv2 Conferenceに
足を運んだErin Finneganさんが、また色々と情報
を伝えてくれてます。
Erinさんは、このManga Reconや雑誌OTAKU USA
にライターとして寄稿するだけでなく、ニューヨーク発
のポッドキャストNinja Consultantを、パートナーの
Noahさんと運営されていますが、本業はカートゥーン
作品の音響エンジニアの筈です。ちょっと前に、今は
Teenage Mutant Ninja Turtlesに関わっていると
仰っていたような。


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ともあれ、基本的に明るい雰囲気だったというICv2
Conferenceで示された、あらためての数字もありま
すが、目に付いた情報を整理すると、

・グラフィック・ノベル全体の売上げは3億9500万ドル。
 前年から5%の伸び。
 そのうち図書館への売り上げは3500万ドル(約8.86%
 の割合)。


・北米で出版されたマンガのタイトル数推移
 
 2005年――1088
 2006年――1208
 2007年――1513
 2008年――1372
 2009年――1224(予定)

 2008年は、初の前年から9%減少。2009年もさらに
 減少の予想。


・北米でのマンガ売上げ推移

 2002年――6000万ドル
 2003年――1億ドル(+67%)
 2004年――1億3500万ドル(+35%)
 2005年――1億7500万ドル(+30%)
 2006年――2億ドル(+14%)
 2007年――2億1000万ドル(+5%)
 2008年――1億7500万ドル(-17%)

 2008年度は初の減少。


・グラフィック・ノベルの中での各ジャンルの割合

 マンガ――44%
 スーパーヒーロー/SF/ファンタジー/探偵――33%
 フィクション/リアリティ――4%
 キッズ/ツィーンズ――3%
 ユーモア――2%
 その他――18%


・他のグラフィック・ノベルのジャンルで、大きな出版
 タイトル数の伸びを示しているのが、キッズ&ツィー
 ンズ向けで、前年から134%の伸び(145→340)。

・グラフィック・ノベルの最も多い購買年齢層は、
 25〜34歳(57.7%)。次いで19〜24歳(27.8%)。

・コミック最大手流通業者Diamond Comic Distributors
 が扱いをやめた作品9万8000のうち、最も多かった
 ジャンルは、マンガの43%。

・意識調査した小売店のうち、回答者の42%が、2009年
 もマンガの棚スペースは2008年と同じと答える。34%
 は増やすと回答。減らすと答えた小売店はほとんどなし。

・図書館では、55%が2009年はグラフィック・ノベルの
 割合を増やすと回答。「同じ」が40%。


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辺りになりますね。
個人的に興味深いのは、図書館へのグラフィック・ノ
ベルの売上げの割合がわかったことでしょうか。
一般書店での売上げデータがわかるBookScanの調
査対象ではないので、詳しい数字はずっと知りません
でした。
グラフィック・ノベル全体の約8.86%で、そのうちマン
ガが半分近くとしても、結構大きい市場ですよね。
続く景気後退の中で、図書館の利用者はさらに増え
ると目されていますが、同様に、図書館自体の予算も
減らされていくと思われるので、その中での図書購入
費の捻出が、司書さん達の悩みになりそうです。


子供向けのグラフィック・ノベルの出版数が急激に
増加しているというのも、割合はまだまだ小さいにし
ても、将来的には意味が大きいかもしれません。
UDON Entertainment(公式サイト)などは、対象
を明確に7〜12歳の低年齢層に絞ったUdon Kids
(公式サイト)を今年立ち上げましたし、けっこう良い
狙いどころになるかもしれません。図書館向けとして
も、いいカテゴリー設定でしょうし。


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ところで、昨年の北米グラフィック・ノベル市場の堅調
を支えた要因が、コミックを原作とした映画「ダークナ
イト」と「Watchmen」(の予告編)という話が出ていた
んですが、そういう意味で今年注目になるのが、マンガ
を原作とした実写映画である、「DRAGONBALL
EVOLUTION」(日本公式サイト)だと、流れとして言っ
ておかなくてはならないですか。
確かに、現時点では悪評が圧倒的みたいですけど、
実際の映画本編を最後まできちんと観た人は、まだ
1人もいないわけですし。
VIZ MediaのLiza Coppolaさんによれば、北米で
は4月になる映画の公開に合わせての、「ドラゴンボー
ル」の原作マンガ売上げ増にも期待しているとのこと
なので、コミックに対しての映画「ダークナイト」のよう
に、昨年度売上げが落ちたマンガ全体に対して、映画
「DRAGONBALL」が刺激剤となるのが理想なんです
けど……と、一応言っておきますね。


posted by mikikazu at 12:51 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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