今月北米で発売される英語翻訳版マンガで、個人
的に注目しているのが、2月17日にVIZ Media(公
式サイト内ページ)から発売される、どうやらフルタイ
トルは「Pluto: Urasawa x Tezuka」になったらしい、
「PLUTO」(手塚治虫原作・浦沢直樹作)第1巻ですね。
原作にあたる「鉄腕アトム」の「地上最大のロボット」
編は、Dark Horseから出版されている英語版「アト
ム」こと「Astro Boy」の第3巻に収録されています。
英語版「PLUTO」の翻訳を手がけているのは、Jared
CookさんとFrederick L. Schodtさんで、特に
Schodtさん(公式サイト)は、手塚治虫研究家である
だけでなく、その「地上最大のロボット」編の翻訳も直
接担当されていますから、引き続き携わってくれてい
るという意味では、とても安心出来ます。
個人的な意見ですけど、浦沢直樹さんの長編作「二
十世紀少年」「MONSTER」「PLUTO」の中では、
「PLUTO」が一番お気に入りだったりします。
他の作品もそれなりに良い出来だとは思いますが、や
はり講談社の手塚治虫全集で育った身としては、あの
「アトム」をどうリライトするかという、物語それ自体以上
の楽しみがついてきますし。ああ、アトムとウランちゃん
を、こういうデザインにしたのか、という一発でノックアウ
トでした。コミックス派なので、待つのが大変ではありま
すけど(笑)。
発売に先んじて、北米のマンガ・コミック関連のサイト
では、レビューがそろそろ掲載され始めているので、
今日はそれらの一部を紹介しておきたいと思います。
全訳は無理なので、コメントの一部だけを抄訳という
感じで。

Comic Book Bin
"Pluto: Urasawa x Tezuka: Volume 1
By Leroy Douresseaux"
評価:A
「物語世界もまた、読者にとっては未知なものであり、
読者はその奇妙さを通して、物語の中心にある謎を
探っていくと同時に、そんな世界で生きるとはどういう
ことかを理解していかねばならない。なにより浦沢は、
『MONSTER』で描いたのと同じく、この人工知能の
物語においても、人間が様々な面を持ち得ることが
何を意味するのかについて、我々に示そうとしている」
☆
Comic Book Resources
"Pluto: Urasawa x Tezuka Vol. 1
by Greg McElhatton"
評価:5星中5星(満点)
「ロボットの殺人機械が戦場から去ることを決意し、
音楽に挑み理解するために執事になる物語が面白
く読めるとは、まったく思っていなかったのに、それ
らの最後の章では、私は本当に悲しく感じていた。
最初は単にサイド・ストーリーが終わって、孤独な作
曲家とその執事について、もっと読みたかっただけな
んだと思っていたんだ。
けれど1分後に突然、私は理解したんだ。そうじゃな
い、私は本当に、ノース2号という、6本腕のロボット
に気持ちが移ってしまったからこそ、悲しいんだと。
これこそ『PLUTO』の素晴らしさの証明であり、何故
『Urasawa x Tezuka』という副題が付けられている
かということの、私なりの理解でもある。手塚の物語
から選ばれた要素が抜き出され、浦沢の最良の部分
と組み合わされているんだ」
☆
ICv2
"Review of 'Pluto: Urasawa x Tezuka' Vol.1
by Tom Flinn"
評価:5星中5星(満点)
「浦沢のリアリスティックなスタイルは、手塚のレトロ
なロボットのデザインと、驚くほどよくマッチしている。
手塚は常に、深い哲学的なテーマのようなものを、彼
の物語に織り込んでいたのだが、それは浦沢の作品
のような語り口の重みを支えるのに、十分なものだ」
☆
Manga Recon
"Pluto: Urasawa x Tezuka, Vol. 1
By Michelle Smith"
評価:A+
「浦沢による物語のアレンジの結果は、見事というしか
ない。私は全く読むのが早いわけではないが、場面や
ペースの、ほとんど映画的な感覚によって、『PLUTO』
のページはあっという間に進んでいった。物語それ自体
の重みによって沈み込んでしまうような作品では、決し
てないだろう」
☆
Comics Worth Reading
"Pluto: Urasawa x Tezuka Book 1
by Ed Sizemore"
評価:Recommended(お薦め)
「手塚はロボットと人間が平等に生活している世界の
普通の日常というものがどんな風になるのか、細かく
描くことはほとんどなかった。1950年代以降、様々な
マンガ家達が、ロボットが市民であり、それが個人的
レベルでどんな意味を持つのかというテーマについて
の探求を続けていた。浦沢直樹は、それら50年以上分
のロボットについての探求の蓄積を、手塚のオリジナル
の世界に、注入し直している。もし手塚が基礎を構築
したとしたなら、浦沢がやってきて、その上に家を建て
ているようなものだといえる」

というレビューがとりあえず見つかりました。
別に褒めてるところだけ抜き出しているわけではあり
ませんけど、評価的にはどこも絶賛、と考えていいと
思います。これだけネガティブな言葉が見つからない
作品も珍しいですね。ファンとしては嬉しいです。
あとは、これがセールスにもつながってくれると、さら
に嬉しいところですが。