何度かご紹介したことがありますけれど、Dave
Merrillさんは80年代半ばから、北米のアニメフ
ァンダムで活動されている方で、1995年に立ち
上げられたコンベンションAnime Weekend
Atlanta(ジョージア州アトランタ 公式サイト)では、
代表を務められていました。
「英語で!アニメ・マンガ」のceenaさんが紹介さ
れていたドキュメンタリー「OTAKU UNITE!」にも
出演されていたので、ご記憶の方も多いかと思い
ます。
14回目を迎えた、昨年のAWAは1万1101人の
有料入場者を記録し、全米で第10位の規模を誇
るまでに成長しました。
現在では、Daveさんは代表から退き(関わりは続
いているそうです)、カナダ・オンタリオ州トロントに
居を移して、コミックについて語るライブジャーナル
「Slightly Higher In Canada」の一方で、80年代
の北米アニメファンダムの記録を伝えることを主目
的としたブログ「LET'S ANIME」も更新しています。
ありがたいことに、うちとも相互リンクしてくださって
いますね。
その「LET'S ANIME」2月5日付け記事で告知さ
れていたので知ったのが、DaveさんがStar Blazers
公式サイトに寄稿した、北米で一番最初のアニメ
コンベンションとされる、YamatoConについて調査
したレポート、「Anime conventions and their
Yamato roots」です。
当時を知る関係者への取材により、YamatoConが
どんなイベントであったのか詳しくわかる、貴重な
レポートになっていると思いますので、北米のアニ
メファンダムの歴史に興味がある人には、必読の資
料です。
レポートから、YamatoConの概要をまとめると、
・開催日
1983年8月13日
・主催者
Mark Hernandez, Don Magness, Bobb Waller
・場所
テキサス州ダラス ハーベイ・ホテル
・参加者数
約100人
・ディーラー数
8 テーブル数22
・主なプログラム
「Star Blazers」第1シーズン全26話と劇場版
の上映
ということになるようですね。
主催のお三方は、SFやコミック・コンベンションの運
営に参加した経験もあり、YamatoCon設立に際し
ては、運営費も自腹で捻出したそうです。
メインのプログラムが上映会というのは、まだビデオ
デッキとテープすら高価で、ほとんど普及していない
時代ですから、まとめてエピソードが視聴出来る、と
ても貴重な場になったようです。
小さいながらもディーラーズ・ルームも用意され(解説
図を参考)、主に売られていたのは、徳間書店のロ
マンアルバムなどのアニメ・マンガ雑誌、フィルム・
コミック、それにプラモデルなどになるようです。
参加者の数について、主催者の1人であるDon Magness
さんのコメントを引用させていただくと――、
「ホテルには早めに着いてしまったんで、部屋の用意
を整えてから、まず朝食に出かけたんだ。戻ってみる
と、ホテル前の階段に、3人の若い男たちが座ってい
て、そのうちの1人の手には、YamatoConのチラシが
握られていた。
Markが彼らに、YamatoConのために来たのかと訊
くと、そうだと答えてくれた。僕らは中に入ると、彼らに
声が届かないところにまで行って、ちいさく喜び合ったん
だよ。『3人も来てくれたぞ!』ってね。会場がいっぱい
になるなんて、思ってもいなかった」
という感じだったそうです。
Donさんの別のコメントを借りれば、約100人という入
場者数は、「予想より100人くらい多かった」ということ
で、ひょっとしたら誰も来てくれないんじゃないかという
不安も、開催前には強くあったようですね。
なにしろ、それまでに誰も単独では開催したことのな
い、日本のアニメをテーマにしたコンベンションだった
わけですから。
幸いに、YamatoConの成功はすぐに各地のアニメフ
ァンダムに伝わり、「アメリカ人でも、アニメコンベンシ
ョンを成功させられるんだ」という意識が広がって、今
日に続く、アニメコンベンションの歴史が始まっていくこ
とになります。
細かい歴史をたどれば、大きなイベントの中の"micro-con"
といった形で、Star Blazers/宇宙戦艦ヤマトをテーマ
にした集まりが企画されたこともあるようですが、完全
に独立した、アニメだけを冠したコンベンションとしては、
YamatoConを「北米初」としていいようです。
やはり、最初に誰かが始めてくれたこそ、歴史が始まっ
たわけですから、掲載されたコメントや写真を見ながら、
当時のファン達の勢いや熱気を想像するだけで、楽しく
なりますね。素敵なレポートでした。