2009年01月15日

海外でのヴィジュアル系バンドのセールスの障害となっている、ファンによる楽曲の違法アップ/ダウンロード


海外でも評価されていると伝えられる、日本のポッ
プ・カルチャーというと、当ブログの主な調査対象
であるマンガ・アニメに加えて、音楽のJ-POPや
J-ROCK、さらにその中のジャンルである、「ヴィ
ジュアル系」とカテゴライズされるバンドが、注目
されることが多いですよね。
海外のコンベンションなどにゲスト参加して、盛況
だったりする様子が、一般メディアでも時折伝えら
れていると思います。


参考・
J-CASTニュース 2008年6月15日付け記事
「日本のヴィジュアル系バンド 『カワイイ』と海外で
大人気」


日経トレンディネット 2008年11月19日付け記事
「『海外に進出する気なんてなかった……』 ビジュ
アル系バンド『アンティック-珈琲店-』が 欧州で大
人気の理由」



ところが実際のところは、海外での「Visual-Kei」
ことヴィジュアル系バンドは、J-POPの中で、むしろ
売れてない方だという事実を知って驚きました。
いえ、人気・ファンの数自体はスゴイようなんですけ
ど、バンドにとって肝心の収入につながる、楽曲のセ
ールスが、あまり上手くいっていないそうなんです。


そういう実態を伝えてくれているのが、海外向けの
邦楽オンライン販売サイトHearJapanのニュースペ
ージに、1月9日付けで掲載された、HearJapanの
社長である、Nathan Reaven氏からの長文コメント、

"A Message To Visual Kei Fans"

なんですね。
(via Icarus Publishing 1月12日付け記事)
実際HearJapanでは、ヴィジュアル系バンドの楽曲
のセールスは、他のジャンルの5分の1ほどに過ぎ
ない、とのことです。オンライン販売だけではなく、
輸出CDのデータでも、ヴィジュアル系バンドの数字
は低いとか。
ネット上の海外コミュニティで確認出来る、ヴィジュ
アル系バンドのファンの数は相当なものなのに、どう
して楽曲のセールスが不調なのかというと、他ならぬ
そのファン達による、楽曲の違法アップロード・ダウン
ロードが原因だと説明するのが、このNathan Reaven
氏のコメントの主旨なのです。


short_g.gif


Nathan Reaven氏が、状況を説明するサンプルとし
て紹介しているのが、HearJapanで2009年1月1日に
デビュー・シングル「終わりの始まり」を独占販売開始し
た、XodiacK(ゾディアック MySpace)というヴィジュア
ル系バンドです。
日本と合わせて、海外での展開を視野に入れていた
彼らは、 Reaven氏に協力を求めて、1stデモになる
「Kuroi Taiyou」を、 HearJapanで11月に無料公開
します。
反応は、HearJapanだけでも500回以上のダウンロー
ドを記録する好調なもので、XodiacKの話題が、海外
のヴィジュアル系ファンの間であっという間に広まって
いくのが確認出来ました。「次の曲が待てない」という
感じで。
それを受けて、XodiacKは、1万ドル以上の予算を
つぎ込んで、3曲入りのデビュー・シングル「終わりの
始まり」を制作します。ダウンロード価格は定価450円
を428円、ドルで4.98ドルでした。


そして、発売日の2009年1月1日をむかえます。
最初の数時間で「両手で数えられる程度」、その後
に2つほど、ということですから、恐らくは10回前後だ
けダウンロードされたところで、売れは止まってしまい
ました。
なのにネット上の掲示板やブログを調べてみると、そ
の時点で100人以上の人が既に楽曲を聞いて、絶賛
しているコメントが次々に投稿されていたんですね。
XodiacKが関心を持たれていないわけではなかった
し、知名度がないわけでもなかった、楽曲の出来が悪
いわけでもなかったことが、それらの反応からわかり
ます。
ただ、ほとんどの人が、お金を払って聞いてはくれな
かっただけでした。
中には、「買って聞いた」と主張する人もいたそうです
が、それらの人の数を合計すると、実際に売れた数を
上回るという、失笑するしかないオチまでついていたと
のことです。


注目がありつつも、シングルが売れなかった理由は明
白で、最初に買った誰かが、すぐにネット上にアップロ
ードして、他の人達はみんなそれをダウンロードしてし
まっているんですね。
バンドが投資したお金と労力が、利益という形で報わ
れるチャンスは、わずか数時間で霧消してしまったわ
けです。
少なくとも、9つのサイトで違法アップロードが確認され
て、当然のことながら削除を要請しても、またすぐに別
の場所でアップロードされるという、イタチゴッコの状況
だったみたいですね。
利益がほとんど返ってこなかったわけですから、結果
としてバンドが被った金銭的損失も、相当に大きかっ
たと想像出来ます。


short_g.gif


同じような状況は、どのヴィジュアル系バンドでも起き
ているそうです。
Reaven氏は、たくさんの日本のヴィジュアル系バンド
のメンバーや、レーベル関係者、プロモーターと話をす
る機会があったそうですが、誰もが口を揃えて言うのが、
「自分が関わったバンドを海外で成功させようと努力は
したが、誰も楽曲にお金を払おうとはせず、大損しただ
けだった」というコメントでした。
確かに、海外のコンベンションでは、よくバンドがゲスト
としてパフォーマンスしますが、それは運営側が渡航費
や宿泊費を負担してくれるから、なんですね。


どうして、ヴィジュアル系にだけ、海外のファン(と呼
べるのかどうかわかりませんが)がお金を出そうとは
しないかというと、その人気ゆえに、すぐアップロード
してしまう人が多い、どこで落とせるかという情報が
すぐに広まってしまうことがあるとは思います。
同じ話題を語った、JAPANATOR1月9日付け記事
は、「ヴィジュアル系のファンが気にするのはメンバー
のルックスだけで、曲はオマケみたいなもの」だから、
違法ダウンロードにも罪悪感がないのでは、というこ
とが述べられてもいます。


この、「人気はあるのに、違法ダウンロードばかり盛ん
で、正規の売上げに結びつかない」というのは、当ブロ
グの専門であるアニメと同じですよね。
1月8日から、アメリカのアニメ動画共有サイトのCrunchyroll
が、日本での放送1時間後に、英語字幕付き「NARUTO-
疾風伝-」の有料配信を開始しましたが、あっという間に、
動画投稿サイト、動画違法配信サイトに、そのエピソー
ドがそのままアップされてしまっています。
こちらは月額契約の前払いですが、こういう状況が続け
ば、お金を払って見ようとする人がい続けるかどうかは
疑問でしょう。


結局、海外でのネット・コミュニティやフォーラムで、
意見投稿がどんなに盛り上がっていても、それが正規
な手段で購入・視聴されているもの経由でなければ、
まったく意味がないということですね。
これで向こうのフォーラムの書き込みから、「XodiacK
は海外で大人気」と翻訳して伝えられても、バンドとし
ては嬉しくもないでしょうし。
「正規の手段で購入して、自分の好きなバンドをサポ
ートしよう」という認識が根付く前に、多くのバンドが消
えてしまいそうです。
それともうひとつ、今回の件で学んだのは、メディア・リ
テラシーからの観点です。
一般メディアが目立つ部分だけ取上げて伝える、「海外
でのヴィジュアル系バンドの人気」も、実態は全然異な
るということで、日本人にとって気持ちよく響くイメージと
いうか、雰囲気だけに惑わされてはいけないと、あらた
めて思いました。




posted by mikikazu at 09:03 | TrackBack(0) | 海外情報(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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