まず先に小ネタを。
昨日も書いたように、北米では感謝祭明けで年末商戦が
盛んな(筈の)時期に入っているのですが、アニメーション
DVDでも、売れ筋のタイトルは、ここ数週いわゆるクリス
マス物が多くなっています。
BillboardのDVDセールスTop Kids Video部門の最新
週間チャートのトップ5を見ても、
1.「Tinker Bell」
2.「Shrek The Halls」
3.「Barbie In A Christmas Carol」
4.「The Original Television Christmas Classics」
5.「A Charlie Brown Christmas」
と、「Christmas」の文字が目立ちますよね。
そんなランキングに、クリスマスとは特に関係ない作
品ですが、今週ランクインしていたのが、FUNimation
がリリースしている第12位の、「Dragon Ball Z:
Season Seven」(11月11日発売 第195〜219話
収録)だったりします。
「ドラゴンボールZ」の、一連のリマスターBOXセットシ
リーズは、このランキングでは初登場第1〜3位の常
連なのですが、今の時期はさすがに、他の定番売れ
筋に抑えられて、トップ10入りは無理でしたね。
とはいえ、いつもよりセールス数が下がっているわけ
ではないでしょうし、このジャンル全体の売上げが伸
びているのに合わせて、さらに売れているかもしれま
せん。
このホリデイシーズンでマンガの売上げはどうなる、
というのが昨日の話だったわけですが、アニメDVDの
方も気になりますね。
さて本題。
ニューヨーク発のポッドキャストNinja Consultantが
11月23日付けで、少々前のイベントですけど、去る
9月26〜28日にニューヨークのジェーコブ・ジャビッツ
・センターで開催されたニューヨーク・アニメ・フェステ
ィバル(NYAF 公式サイト)での、雑誌OTAKU USA
(公式サイト)のパネルの模様を公開しています。
編集長である、お馴染みパトリック・マシアスさんは
この時東京滞在中だそうで、パネルに出席したのは、
Ninja Consultantの出演者であり、OTAKU USA
にも寄稿しているErin Finneganさんと、広告部門
担当のJeff Knightさん。
とはいえ、エピソードの長さは17分間ほどで、録音状
況も良好とはいえず、さらにErinさんのPCが途中で
クラッシュしてしまったそうで、ちょっと聞き易いとはい
えない内容です。僕もよく聞き取れない部分がいくつ
かありました。
取上げられた話題としては、今は亡き競合誌ニュータ
イプUSAの広告をどれだけ引き継ぐのかとか、現在大
きなページを割いている「やおい」ジャンルの扱いはこ
れからも続けていくのかとか、Anime Insiderは競合
誌とは考えていないとか、色々ありましたが、ひとつ
興味深かったのは、一番売れた号が、やはり「NARUTO」
を表紙にした最初の号(2008年2月号)という話でした。
他の号よりも、25%増しの売上げだったとか。
バックナンバーの表紙を見てもらえばわかるんですけ
ど、かなりマニアックで濃い目の記事内容に反して、
OTAKU USAは「NARUTO」「Bleach」「ドラゴンボール
Z」「鋼の錬金術師」「DEATH NOTE」と、アメリカで売
れ筋のメジャー作品を多く表紙に採用していますよね。
Jeff Knightさんによれば、「そうすれば売れる」からだ
そうです。これはやはりビジネスなんだから、売れるだけ
売らなくてはいけない。だから内容のコアさは保つにし
ても、まずOTAKU USAを手に取ってもらう手段として、
そういうメジャー作品のインパクトは大きいし、実際
「NARUTO」を表紙にしたら売れるわけです。
まあ、「あ、悟空だ!」と、「ドラゴンボールZ」が表紙の
2008年6月号を手に取ったアメリカのティーンの子が、
邦画「県警対組織暴力」(75年 監督・深作欣二 北米
では「Cops vs. Thugs」)のレビュー記事なんかを読
んでどう思うかは、実に興味深いところですけど(笑)。
もうひとつは、OTAKU USAの編集方針についての話
ですね。これは、編集長であるマシアスさんの言葉をJeff
Knightさんが引用していたんですが、いわく、
「スタッフのみんなを雇って最初の号を出す前の段階
で、マシアス編集長が語っていたんだけど、彼の理想
というのは、ただ新しいクールな作品だけを取上げる
んじゃなくて、歴史をさかのぼって古い作品も掘り起こ
して、一緒に扱っていこうということだったんだ。
僕は『ウルトラマン』や『スピード・レーサー』、ゴジラ映
画なんかを見て育ったんだけど――ああ、これで僕の
歳がバレちゃうね――、そういう作品を、『ウルトラマン』
の存在すら知らない新しい世代に紹介するのは、とて
もクールだと思うんだ。僕達には、新しい作品のルーツ
がわかっているんだから。
新しい良い作品と、古い良い作品を合わせて、160ペ
ージの雑誌として組上げていこう、というのが、OTAKU
USAの編集理念なんだね」
――ということでした。
そういう方針は、実際の雑誌で成功していると思いま
すし、セールス的にも現在好調のようですから(約6万
部)、読み応えのある内容が今後も続きそうです。
ただ、日本から購読するとかなり高くなってしまうのが、
個人的には困りどころなんですけどね(笑)。