2008年10月29日

「プリンセスナイン」は、第22話まで見ました。


諸事情でちょっとお休みしていましたが、視聴を
再開した「プリンセスナイン 如月女子高野球部」
(バンダイチャンネル作品紹介ページ)は、第22話
「ユキ、ひとりじゃないよ!」まで見ています。


ここまで見てきて、好きか嫌いかと訊かれたら、
最後まで見届けていい、好きな作品になっている
とは言えます。
野球部のキャラは、多さに埋没することなくそれぞ
れ個性が立っていて魅力的です。デフォルメで描
かれたアイキャッチも皆さんキュートで好きです。
キャストは、高杉宏樹役の子安武人さんのナハハ
演技を除けば完璧ですし、キャラにも合っていると
思います。子安さんの演技は、作品製作時の10年
前ならオッケーだったかもしれませんが。
中でも、やはり涼さんのお母さん・早川志乃役の島
本須美さんの存在感は大きいですよね。ひと言でも
台詞があると、安心出来るという声です。
いわゆるアニメキャラ的な作った声といえば、マネ
ージャーの毛利寧々さんのそれが、高校生にもなっ
て自分を名前で呼ぶことも含めて、その代表になる
んでしょうけれど、とにかく野球部のために一生懸
命なことはわかる、好感をもって見つめていいキャ
ラとしてずっと描かれているので、個人的には許容
範囲内です。いい子なんですっ。


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とはいえ、作品として出来が完璧かというと、実は
そんなこともなかったりします。
一番大きい瑕疵は、エピソード間の連結が上手くい
っていないこと、つまりシリーズ構成がちゃんと仕事
をしていないこと、になるでしょうか。
例えば、第21話「高杉くんなんて、嫌い!」で、いずみ
さんは涼さんから高杉君へのプレゼントである、刺繍
入りのハンカチをわざわざ涼さんの目の前で使ってみ
せたり、といった恋敵の心を揺さぶるための意図的な
行動を示したりするわけですが、その行動は、第17話
で、病院で危篤状態にある、他ならぬその涼さんに会
うために、豪雨の山中を、崖崩れの危険もかえりみず、
裸足で五キロも走ったキャラクターであるいずみさんが
取るには、いささか小さいというか、姑息過ぎます。
エピソードの順番が逆ならば、まだしも納得出来たので
しょうけれど。こんなこと、ここでやらなくてもいいのに
なあ、というのが正直な気持ちです。
その一方の直後に(第22話)、チームの存続のため、ユ
キさんにライナーを放つ行動は、性格の分裂と批判され
ても仕方ないと思います。


本来ならば、いずみさんのキャラクターにおいては、
アスリートとしてのライバルである涼さんを認める気
持ちと、高杉君をめぐる恋敵として認められない気持
ちの、2つの相反する感情の葛藤こそが魅力になるべ
き筈でしたが、作劇は両者を分離させ、別々の、順序
的にも正しくないエピソードで分けて描いてしまっている
ために、せっかくのいずみさんのキャラの魅力が、ずい
ぶんと殺されてしまっていると思います。見る側からも、
その時点でどう考えているのかわかりづらいキャラに
なってしまっているというか。
個人的には、一途なキャラは好きなので、幼い頃から
高杉君への想いをずっと抱き続けているいずみさんこ
そ、応援したいと思っているんですが……。
「妹のままじゃ、いや」と、精一杯に呟くいずみさんの言
葉(第19話)は、切なく胸に響きます。
このまま涼さんが、主人公特権だけで、高杉君をゲット
するとしたら、あまりにつまらない展開です。



あるいは、第14話「幻のイナズマボール」で、ついに涼
さんは父親から受け継いだ魔球であるイナズマボール
を投げられるようになります。
「理屈はわからないけれどとにかくスゴイ球」という設定
の理解は別にして、首を傾げてしまうのが、強豪校の打
者を三者三振に抑えてしまうそのスゴイ球を、初球から
キャッチャーの真央さんが捕球出来てしまうことですね。
真央さんはその2話前である第12話「涙の100連発」で
は、涼さんが投げる普通の球でも、捕球に苦労して、特
訓を重ねていましたよね。
そんな真央さんが練習もせずに初球から取れる程度の
球である一方で、強打者を抑えられるというイナズマボ
ールの威力は結果として矛盾しているというか、よくわか
らないものになっています。
これも、真央さんの捕球特訓が、イナズマボールに対し
てのものであれば、問題はなかったのでしょうけれど。


また、第15話「お父さんのスキャンダル」から第18話「加
奈子のバースデー・プレゼント」にかけては、涼さんの父
親が関わったとされる野球賭博スキャンダルを理由とし
て、涼さんの強制退学と野球部の廃部問題が描かれます。
本人が直接関わったわけでもない、生まれる前に父親が
したとされることで、娘の涼さんが退学を求められるのは
理不尽に思えますが、如月女子高が体面を気にする名
門お嬢様学校である、という設定を思い出せば、納得は
いきます。


納得はいくのですが、あくまでそれは書かれた(描かれた、
ではない)設定に頼るもので、ドラマとしての血肉を通した
理解ではありません。
作品を配信しているバンダイチャンネルの作品紹介ページ
でも、「涼にとって、名門お嬢様学校での生活は慣れない
事ばかり」という文章が記載されていますが、実際の本編
で、涼さんが名門お嬢様学校ゆえの生活や雰囲気に戸惑
ったり困ったり、といった描写は、ほとんどなかったと思い
ます。
如月女子高で描かれている涼さんの生活は、おもに登下
校と部活のみで、野球部特待生とはいえ、授業すら受け
ていた記憶はないです。
そういう、名門お嬢様学校ゆえの生活や雰囲気に戸惑っ
たり困ったり、といった過程を、涼さんの個人的経験として
描いていたなら、この理不尽な保護者会の対処にも、同
じく本来はアウトサイダーである他の野球部のメンバー
達と揃って、学校内階差を踏まえた、もっと生っぽい憤り
や、その中でのキャラ達の学園生活空間の深みなんかも
表現出来ていたと思うのですが、そこまでの配慮は、残念
ながらありませんでした。


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アニメ作品製作において、特にテレビシリーズ作品だと
重要なのは、各エピソードごとの時間と体験の積み重ね、
そしてそれらの要素が昇華される論理的帰結、だと思い
ます。
このキャラは、こういう経験を踏まえてきたから、こうい
うことが出来るようになった、こういう決断をついにした、
という論理性は、エンターテインメント作品においては
基本中の基本というか、見る側の感情移入を誘うため
には、決して崩してはいけないものです。
この「プリンセスナイン」の場合、、その論理性を各エピ
ソード単位で結びつけて管理するシリーズ構成の仕事が
出来ていないために、ずいぶんとぎごちない作品になっ
てしまっていると思いますし、時間を経て変化・進行して
いくべきキャラクター達の感情のドラマも、かなり混乱し
て、犠牲になっています。


物語全体のバランスでいっても、次回第23話から、やっ
と甲子園大会の予選初戦が始まりますから、どこまで描
くにせよ、残されたのがたった4エピソードでは、「甲子園
を目指す」という目的のための本筋の舞台は、そうとうに
駆け足の語り口になってしまうのだろうと想像します。
思うに、キャラクター各自のドラマは前半で一区切り置い
て、後半は全て甲子園大会の予選を描く、くらいのバラン
スの方がよかったかもしれません。
1年4クールの作品なら、このペースでもよかったかもし
れませんが、「甲子園を目指す舞台で、女子の野球部が
どれだけ活躍出来るのかを見たい」という期待をしていた
観客さんを満足させるだけの時間は残されていないでし
ょう。


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★やはりというか、そちらでも体調を崩しているのだろう
という想像通りでしたね。どうかお大事に。ゆっくりと休ん
でくださいね。
それでも、かれんさんとこまちさんの微笑ましい会話をま
た読めたのは嬉しかったです。「お姉ちゃん分」は送れな
い立場で申し訳ないですが。
桂明日香さんの「螺子とランタン」については、本屋さんで
並んでいたので、パラパラと目を通してはいます。
さっと読んでまず思ったのが、「ああ、これはりょうさんが
好きそうな作品だなあ」でしたので(笑)、そういう意味では
正解出来ていましたね。

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