とりあえず、書けそうなことからですね。
以前に紹介した、アメリカ・ニュージャージー州の
百合普及団体Yuricon(公式サイト)代表の、エリ
カ・フリードマンさんから送っていただいた、お薦
め百合作品については、全て読了していますので、
その感想なんかを少しだけ。

・「花やしきの住人たち」第1巻
(桂明日香 角川書店)
第1巻は、女子寮に男子1人だけで暮らすことにな
った主人公桜安芸君を中心にしたドタバタ・コメディ
という感じのお話で、変に萌えハーレムになったり
もせず、素直に楽しめました。
だから、エリカさんに送っていただいたのは第1巻
だけだったので、自分で、既に出版済の第2巻を購
入して読んでみたわけです。
――で、作品を知っている方はご存知の通りの欝展
開だったので、がっつんとやられました。しばらくは頭
がフラフラしました。
ひと言でいうと、もったいないですね。
第1巻のコメディ路線で十分に面白かったのに、わざ
わざキャラクターを壊す、つまらないシリアス展開にす
る必要はなかったと思います。
個人的には、心の病気を軽々しく必要以上に、悲劇と
か不幸とかの材料にすることには反対です。
心の病気は身体の病気と同じく、適切な治療と投薬で
治療可能なものだと思うのですけれど、フィクションの世
界ではことさらに、かかってしまうことはどうしようもない
悲劇なんだ不幸なんだと誇張して描く例を多く見かけて、
現実での、心の病気に対する偏見を助長しているかもし
れない、と感じたりもします。
この作品も、不幸の犠牲者としての、キャラの壊れた心
ばかりが強調されていて、好みではありません。
・「カプレカ」第1巻
(作・松本真/画・ネツマイカ ジャイブ)
組織による改造手術を受けた2人の少女が、借金の返
済のために、合体して無敵の超人「カプレカ」として戦う
仕事を結果引き受ける羽目になる――というお話。
語り口やアクション描写に特に新味はないので、頼る者
はこの世に相手同士しかいない、主人公カップルである
羽乃さんと優奈さんの、ラブラブっぷりを堪能すればいい
作品でしょうか。
変身するにはキスしなくてはならないという設定は、アニ
メだと過剰に描かれてしまうでしょうから、マンガでちょう
どいいのかも。
・「アオイシロ−花影抄−」第1巻
(作・麓川智之/画・片瀬優 ジャイブ)
基本的には、ゲームのストーリーそのままなので、特に
コメントはないですね。
もうひとつのコミック版「アオイシロ−青い白の円舞曲−」
が、本筋から離れて、百子さんと保美さんを中心とした独
自の世界を自由に描けていたのとは対照的で、まあ、立
場上仕方ないでしょうか。
・「GIRLS×GIRLS×BOY 乙女の祈り」
(KUJIRA 双葉社)
レズビアンの女の子と、彼女から愛されている女の子と、
レズビアンの子を好きな男の子の三角関係のお話、とい
う触れ込みでしたが、実際にはそこまでドロドロにはなら
ずに、三角関係を作ろうとするも至らないという、結果的
には軽いお話でした。高校生くらいのキャラなら、これく
らいが本来妥当でしょうね。
むしろ売る側が、「ありえない三角関係」を強調し過ぎて
ミスリードさせている感も。
・「アプローズ−喝采−」第5&6巻
(有吉京子 秋田書店)
全6巻の完結編部分のみ、ということなので、それまでの
キャラが積み重ねてきた関係の歴史を知らないわけです
から、物語を正しく理解出来たとは思いません。
ただ最終的に主役の2人の女性、沙羅とシュナックが結ば
れるかどうかというまでの、愛の困難の過程をみると、「手
間がかかって大変だなあ」という、いささか凡庸な反応をし
てしまったり(笑)。
作品としてとても高級というか、質の高いことをやっている
のはわかりますけど、饒舌と冗長の危うい境目にあると感
じるのは、やはりきちんと物語を最初から味わっていない
がゆえの誤読でしょう。
機会があれば、最初から読んでみたいです。
・「百合螺旋」
(三国ハヂメ 笠倉出版」
これだけは成人向けの内容で(成人コミック指定されては
いませんが)、女の子同士の、そういうシーンが主体のお話
ばかりですね。
商業誌未発表作品集ということで、クオリティという面では
それなり、以上のものではありませんが、同人誌よりはず
っと安くまとめて読める、という点ではお得なのかも。
いわゆる「ふたなり」が登場するお話もあるので、個人的
には、百合作品としては評価対象外です。
・「R.O.D」第6巻(小説)
(倉田英之 集英社)
僕が知っている「R.O.D」は、確か三姉妹のお話だったと
思うんですけれど(AT-Xでちらりと見ました)、これはまた
別の、というかオリジナルの「R.O.D」なんですね。
小説としての出来は、特に個性もない文章による平坦な
仕上がり、と評するしかありません。
ノベライズなのだからそれも仕方ないかな、と思っていま
したら、一応これが原作になるんですね。むむ。
この第6巻だけを送ってきたのは――、表紙でもフィーチ
ャーされている、読子・リードマンさんと、ナンシー幕張さ
んの関係が百合的、ということなのかもしれませんが、本
文内では出会ってわずか半日分の進展しかないので、よ
くわかりません。今後発展するので、ここを起点として読
み進めなさい、ということかもしれません。
・「春夏秋冬」初回限定版特典ドラマCD
「愛情表現/オンナオオカミ」
(原作コミックは、作・影木栄貴/画・蔵王大志
一迅社)
・「春夏秋冬」ドラマCD「逆襲の赤ズキンチャン」
どちらも、同題のコミックをベースにした、音声ドラマで
すね。
能登麻美子さん・川澄綾子さん・田村ゆかりさん・川上
とも子さんといった、僕程度でも知っている人気声優さ
ん達が集って百合な世界を演じてくれるのは、豪華だろ
うと思います。田村さんとかはっちゃけ過ぎですし(笑)。
だからというわけでもありますが、面白かったのは本編
よりも、「逆襲の赤ズキンチャン」収録の、声優さんの生
の声によるトーク・コーナーだったり。
なんていうか、演じている方に照れられると、こちらも思
いっきり照れちゃいますね。みなさん百合作品は初めて
という方ばかりで、初体験ゆえの反応というか感想が、
それぞれ楽しめます。女子校経験者でも、百合的な体験
や記憶に違いがあって面白いですね。