2008年09月27日

「プリンセスナイン 如月女子高野球部」第1話、見ました。


アニマックスでの放送開始を待つまでもなく、第1話
については、バンダイチャンネル発で、無料配信して
いるということなので、さっそく「プリンセスナイン 如
月女子高野球部」の第1話「わたし早川涼、15歳!」
を見てみました。


ちなみに「プリンセスナイン」について知った、そもそ
ものきっかけは、英語版「鋼の錬金術師」でエドワー
ド・エルリックを演じているVic Mignognaさんが、
インタビューで、「鋼」以外のお気に入りとして、よく
この作品を挙げていたからですね。
英語版「プリンセスナイン」でVicさんが演じていたの
は、日本版では子安武人さんが演じている、高杉宏
樹というキャラクター。
英語版のADRディレクターであり、リリース元のADV
Filmsの共同創設者であるMatt Greenfield氏と会う
たびに、「ADVが出資して、『プリンセスナイン』のパー
ト2を作ってもらおうよ」みたいな話を、いつも持ちかけ
るのだとか。


北米では2004年1月に、BOXセットがリリースされてい
ますが、残念ながらいま現在は、どこのストアでも在庫
切れで、新品でDVDを入手するのは難しい状況にある
みたいですね。
サントラCDなら、Right Stufに1枚目2枚目が、400
〜450枚ほど不良在庫化しているようです。3.99ドルと
いう捨て値状態なので、お買い得ではあるんですけど。
ADVは今年に入って、旧作BOXセットの再リリースに専
念していますから、「プリンセスナイン」もいつか可能性が
あるかも?


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さて本題の、本編感想ですね。
「わたし早川涼、15歳!」というストレートなサブタイトル
は、むしろ清々しいくらいです。
この作品の製作年は、ちょうど10年前の1998年という
ことですが(放送期間・1998年4月8日〜10月14日)、
まだセル作品だと思います。テレビアニメのデジタル化
は、この頃から本格化したような気がしますけど。
放送枠は、NHKBS2の衛星アニメ劇場ということです。


そうですね、第1話だけの印象を言うなら、悪くないとい
うか、語り口に、特に目立った無理や破綻もなかったと
思います。
しいて言うなら、第1話のこの段階で、草野球の試合に、
ポーランド国立ワルシャワ・フィルハーモニック・オーケス
トラによる仰々しい劇伴音楽がこれでもかと鳴り響くのは、
ちょっともったいないかも、くらいです? 
まあ、それが作品のカラーなのかもしれませんが、映画
だったらクライマックスに温存しておきたいような、盛り上
がる曲なので。


キャラクターの掘り下げに関しては、まだまだこれから
でしょうけれど、主人公である早川涼さんについては、
ピッチャーとしての才能云々よりも、中学校の制服は、
わりと乱暴に脱ぎ捨てるのに、お店を手伝うのに着てい
たエプロンは、丁寧に畳んでお母さんに手渡す、という
比較の描写で、十分に伝わってくると思います。言葉で
はなく行動でキャラクターを描くという、基本ですね。
また、ラストで彼女と対峙することになった高杉宏樹君
が、まったく彼女を女の子扱いせず、あくまで優れたピ
ッチャーとしてのみ受けとめている風なのが、個人的に
は好感触ですし、高杉君というキャラにとってもプラスだ
と思います。この辺は次回に続いてしまったので、まだ
早計かもしれませんが。


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作品に対する全体評的なことを言うなら、現時点では
まだ不明な、「女子だけの野球部が甲子園を目指す」
というメインプロットの扱いが、ストーリーの展開だけで
なく、リアリティを規定する上でも重要になってくると思
います。つまり、リアリズムでいくのか、ファンタジーで
いくのかという、語り口のさじ加減の問題ですけど。


現実世界では、女子だけの硬式野球部が甲子園大会
に参加するのは絶対に不可能ですよね。女子部員とい
うことすら、試合出場は認められない筈です。
この作品世界での甲子園大会が、最初から女子の参
加も認めているのなら別ですけれど、それでは逆に、ド
ラマの障害として機能しません。
その不可能を可能にするからこそ、フィクションとしての
醍醐味があるわけですが、それでも、現実で不可能な
ことを可能にしていく過程の説得力というものは、ある
程度求められてくると思います。


例えば「カレイドスター」という作品があって、日本人
=アジア人である主人公の苗木野そらが、アメリカの
エンターテインメント舞台である「カレイドステージ」で
スターになっていく物語が描かれるわけですが、アメリ
カのエンターテインメント業界で、アジア人がそんな簡
単にスターになれるのか?というリアリティの疑問が、
常にありました。日本の宝塚で、外国人が主役を張ら
せてもらえるか?と考えればわかると思います。


「プリンセスナイン」でも当然同じように、「女子が甲子
園大会に参加出来るのか?」「参加したとして、男子選
手に勝てるのか?」という現実側からの疑問が突きつ
けられていくわけですが、後者は今後の物語の展開に
よるとして、前者については全てのドラマの出発点です
から、ある程度説得力がないと困るわけです。この作品
世界における、高野連的団体との政治折衝の説明は、
納得のいく形で、絶対に不可欠なんですね。「甲子園に
出たい」という、こちら側の都合だけで、物事が進んだ
りはしませんから。
また一方で、現実では絶対に無理な話でもあるのです
し、リアリティだけにこだわり過ぎることも、現実が見え
てきて空しくなってきますから、とても難しい。
これはファンタジーなんだよと割り切るのもひとつの手
ですが、そうすると、それに沿った範囲でしか、キャラ
クターの情動も描けません。それでいいのなら、それは
それでいいんでしょうけど。
作品内のキャラクター達がその目標を信じて、見る側
も彼女達の努力に感情移入出来るくらいの、説得力と
はどんなものなのか、「ああ、この手があったか!」と
いう驚きに期待して、第2話も見てみたいと思います。




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