(公式サイト)の第17話「たむけんさんの宝物」を見て
みました。
とはいえ、りょうさんの方でコメントがないのなら、
こちらでもスルーなのであります。この「たむけん」
さんという方、僕は今までテレビや雑誌で、一度もお
姿を拝見したことがないので、どう面白がっていいの
か難しかったのは事実です。
映画版の芸能人ゲストであったザ・たっちのお2人は、
ミギリンとヒダリンという役でしたから、ご本人達を知
らなくても大丈夫でしたけど、このたむけんさんはご
本人の役ですし。
あ、でものぞみさんの「ホントにホントにないの?」に
対する、背中を向けたココ・ナッツ・シロップの止まっ
た姿とかはよかったです♪
なので今回は、本編内容とは全く関係ありませんが、
かれん×くるみのSSをちょっとだけ。ほら、「膝の上
に座らせている」という目撃者がいたのなら仕方ない
っていうか、僕のせいじゃないっていうか(笑)。
でもですね、17話に至っても、いまだにかれんさんと
くるみさんの2人だけの会話シーンってなかったと思
うので、どんな口調で喋らせればいいのかは困りまし
た。まあ、その辺はご容赦ください。
「Two in the Room」
何気なく深くもらした息が、自分の顔のすぐ下にある
くるみの髪をわずかに揺らした。
くるみは嬉しそうに目を細めると、「ふふ……」と小さ
く笑みを浮かべ、猫のようにかれんの胸元へ自分の頬
をすりつけるようにする。
ベッドの端に腰掛けながら、かれんは自分の膝の上
に横座りするようにしているくるみの肩を優しく撫でた。
「かれんの匂い……。かれんの温もり……」
胸の中のくるみの呟きは、やっとかれんの耳に届くく
らい細く、小さなものだった。
水無月邸の、かれんの自室である。
ある休日の午後に、お茶のゲストとして招いたくるみ
と、自室で歓談していたのだが、はしゃぐくるみを相手
にしているうちに、いつの間にかベッドで、こういう姿勢
になっていた。ミルクであった時も、自分やのぞみの膝
の上に収まる機会が多かったから、くるみにとっては自
然なかたちなのかもしれない。
くるみの身体は驚くほど軽く、まるでミルクの時と変わ
らないようにも思えた。
自室に招き入れたすぐ後は、かつてかれんに看病さ
れた時の懐かしさもあって、言葉の多かったくるみも、
今はただ、大人しくかれんに自分の身体をあずけてい
るのみだ。
ゆったりとした呼吸のリズムが、かれんにも伝わって
くる。その小さな繰り返しが、くるみのしっかりとした生
命の証しに思える。
詳しい理屈はわからなかったが、ミルキィローズとし
ての激しい戦いが、この小さな身体に負担を与えてい
ないわけがない。ナッツハウスにいる時も、仕えるべ
きココとナッツへの気遣いで、いつもいっぱいだろう。
もし自分がくるみにとって、甘えられる相手になれる
のだったら、かれんはいくらでもくるみを受け入れてあ
げたかった。
「大丈夫よ、くるみ。あなたは私がきっと守ってあげ
るから――」
つい呟いたそんな言葉に、くるみは顔を上げ、意外そ
うな表情をかれんに向けてくる。数度大きくまばたく。
「何を言っているの、かれん? 私はミルキィローズ
よ。かれん――アクアとも、肩を並べて一緒に戦える
ようになったのよ」
「くるみ……」
くるみの瞳には、熱い光りが宿っていた。まっすぐに
かれんのそれを貫く。
「もう、守られるだけの私じゃない。もう――かれんだ
けを危ない目に遭わせたりしない。病気で苦しんでい
た私をかれんが必死に看病して、守ってくれたように、
今度は私がかれんを守ってあげる。それだけの力が今
の私にはあるんだし。おかしいことではないでしょう?」
言葉を返せずにいたかれんに、くるみは意味ありげな
笑みを浮かべる。
「でも、この身体になって一番よかったのは……」
言いつつくるみは、両腕をかれんの背中にまわし、そ
の身体を包むようにそっと抱きしめた。かれんの首筋
に、くるみの頬があたり、熱い吐息が、皮膚を撫でた。
「こうやって、かれんを抱きしめてあげられるように
なったこと。自分の力で、自分の手で、気持ちいっぱ
いに大切なかれんを抱きしめられる。こんなに素敵で、
嬉しいことはないの――」
「くるみ……」
数度の躊躇のあと、かれんは同じくらいの力で、くる
みを抱きしめ返した。その身体の細さが、心に痛かった。
そのままくるみの勢いにまかせ背中を倒しつつ、ベッ
ドのやわらかさが2人を包んでくれることだけを、かれ
んは祈った――。
2人の息づかい以外には何も聞こえない、秘めやかな
長い時間が過ぎ去り、やがてかれんは、そっと抱擁を解
いた。
潤んだ瞳を見つめながら、くるみの額や頬にかかった
髪の乱れを指先で優しく直してやる。かれんの指が触れ
る度、くるみはまた嬉しそうに、子供っぽく、くすくすと笑
う。頬は赤く上気した色を残している。何度か深く深呼吸
して、身体から消えない熱を冷ましているようだ。
自分自身の危うさに、くるみはまだ気づいていない。
おそらくはそれを言葉で伝えても、彼女には理解出来
ないだろうもどかしさが、一方でかれんの胸を苦しくさせ
ていた。
まだまだ幼い心と、ミルキィローズという強大過ぎる
力のバランスは、そう簡単にとれるものではない。同じ
悩みは、キュアアクアとしての自分も経験してきたこと
だから、かれんにはよくわかる。
幸い自分は、一番最後にプリキュアになったという立
場で、仲間達の経験からのアドバイスを頼ったり、悩み
を分かち合うことも出来た。なにより、どんなことでも話
せる、伝わってしまうこまちという親友が、自分にはいて
くれた。けれどくるみには――。
自分以外で一番くるみに近いのはのぞみだろうが、そ
ういうくるみへの細やかな気遣いが期待できるかという
と、たぶん無理だろう。相手がのぞみだからこそ、くるみ
が意固地になってしまう可能性も高そうだ。
1人で何でも出来ると思っているくるみが、そうではな
いと気づく時がやがて必ず来る。その瞬間を取り返しの
つかないことにしないためになら、かれんは何でもする
つもりだった。
かれんは、しっとりとした感触のくるみの頬を、手の甲
でゆったり撫でながら呟く。
「ねえくるみ、夕食も一緒にどうかしら? 可愛いゲス
トさんがいてくれた方が、じいやも腕の奮いがいがあ
るというものよ。もし好きな料理があれば――」
「ああ! もうそんな時間? ココ様とナッツ様の夕食
の準備をしないと!」
言ってくるみはベッドから跳ね起きる。
「ごめんなさい、かれん。招待はまたの機会ね」
「――私も手伝いましょうか?」
「いいえ、これは私のお役目なんだから」
「それはそうなんでしょうけれど、たまには2人でする
のもどうかなって思って。2人で一緒にお買い物をして、
2人で一緒にお料理をするの。きっと楽しいわよ?」
かれんは優しく微笑んでみせる。
数瞬だけ、戸惑いの色がその瞳に浮かんだが、くるみ
はやがて頷きながら、
「――うん、かれんがそう言うのなら、それもいいかも。
でも、料理長は私ですからね?」
「はい。仰せのままに」
かれんが大げさにかしこまってみせると、次の瞬間目が
合った2人は吹き出してしまっていた。
「ふふふ――。じゃあ、行きましょう。ココ様とナッツ様が
お腹を空かして待っていらっしゃるかもしれないわ」
「ええ!」
かれんはもう一度くるみの手を取ると、しっかりと握りし
め、2人でそろって部屋を出た――。
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