現地時間の3月18日付で、アメリカ・ニュージャージー州に拠点を置く百合マンガ専門出版社ALC Publishing及び百合振興団体Yuriconの代表であるエリカ・フリードマンさんが、個人ブログOkazuに、"Hard Decisions"(辛い決断)と題した文章を掲載しました。内容は、ALC Publishingが百合マンガの出版・配信事業から撤退し、当面新しい百合マンガがALCから出される予定がないこと、そしてイベントとしてのYuriconを開催する夢を諦める、というものでした。
公式サイトからの日本語解説を引用させていただくと、「『ユリコン』は元々『アニレズボコン』(ALC)と言う名で2000年にエリカ・フリードマン女史により創立され、日本のアニメやマンガにおける女性同性愛者、いわゆるレズビアンが描かれた作品のファンを集めることを目的とするイベントです」ということになり、その後2003年にニュージャージー州ニューワーク市、2005年には東京でもその名を冠したイベントを開催していますが、イベントとは別の、百合振興団体・コミュニティに対する名前でもあり、実質的にはそちらがメインと言っていいでしょう。
ALC Publishingは、そのYuriconの出版部門であり、世界の百合・レズビアンマンガ作品を集めたアンソロジー「Yuri Monogatari」シリーズ(既刊6巻)や、高嶋リカさんの「リカって感じ!?」や蓼野絵理子さんの作品集「WORKS」を出版する一方で、ここ最近は日本国内の出版社39社からなるデジタルコミック協議会が協賛する北米向け日本マンガオンライン配信サイト「JManga」と提携し、「飴色紅茶館歓談」(藤枝雅)、「青い花」(志村貴子)、「半熟女子」(森島明子)といった人気百合マンガのローカライゼーションを担当してきました。
特にJMangaでは、デジタルコミック協議会に参加している一迅社のコミック百合姫作品を手がけられることになり、またその公式サイトで表示されるベストセラー・リストでも常に上位の人気を誇っていましたから、今後はさらなる、海外向けの百合マンガの翻訳が進むだろうという期待が寄せられていました。
ところが、現地時間の3月14日付けで、JMangaは突然に、事業終了と5月末にサービス停止することを発表します。事業終了の理由は、JMangaの公式フェイスブックでのコメントによれば、「ビジネスとして続けられるだけの収益が得られなかった」とのことで、これはALC代表のエリカ・フリードマンさんにも全く事前に知らされておらず、事実ALCは今年これからの、JMangaとの提携事業計画も用意していました。実を言うと、その情報展開をメインにした、Yuricon/ALC Publishingの情報を伝える日本語サイトあるいはブログの用意も進めていたところだったんですね。
このJMangaとの提携終了や、イベントとしてのYuriconの実現が難しいこと、その他多くの、北米におけるマンガビジネスの困難さが、今回のエリカさんの決断に繋がったのだと思います。長年北米において百合というジャンルの普及に努めてこられてきたエリカさんの決断ですから、それは尊重したいですね。その心情吐露を引用させていただくと、「13年でもう十分です。私は疲れました。13年間は、何かを失敗するには十分なだけの長い時間だったと思います」ということですから…。
エリカさんは個人ブログOkazuでの、百合作品レビューや情報発信は続けられますし、ファン・コミュニティとしてのYuriconも存続しますが、全てのビジネス面から一度撤退するということですね。
お疲れ様でした、エリカさん。今後は個人的に、百合とご自身の人生を楽しんでいってください。