2011年01月14日

米国図書館協会部会のヤングアダルト図書館サービス協会による、2011年度10代向け推薦グラフィックノベルTOP10に「土星マンション」(岩岡ヒサエ)

フォローし始めてから、今年で5年目の話題ですね。
米国図書館協会(ALA-American Library Association 公式サイト)の部会であるヤングアダルト図書館サービス協会(YALSA-Young Adult Library Services Association 公式サイト)は毎年この時期に、

"Great Graphic Novels for Teens"
(10代にふさわしいグラフィックノベル推薦リスト)

を選出しています。10代というのは12〜18歳で、日本でいう中学・高校生くらいが対象と考えていいと思います。
リスト作成が始まった2007年度以降、そのTOP10には毎年日本マンガが含まれていて、これまでのラインナップは、

2007年度
「DEATH NOTE」第1〜3巻
 (作・大場つぐみ/画・小畑健 VIZ Media)

2008年度
「いばらの王」第1〜2巻
 (岩原祐二 TOKYOPOP)
「放課後保健室」第1〜5巻
 (水城せとな Go Comi!)
「エマ」第1〜5巻
 (森薫 DC Comics / CMX)

2009年度
「砂時計」第1〜3巻
 (芦原妃名子 VIZ Media)
「リアル」第1〜2巻
 (井上雄彦 VIZ Media)
「うずまき」第1巻
 (伊藤潤二 VIZ Media)

2010年度
「海獣の子供」第1巻
 (五十嵐大介 VIZ Media)
「PLUTO」第1〜3巻
 (手塚治虫/浦沢直樹/長崎尚志 VIZ Media)
「大奥」第1巻
 (よしながふみ VIZ Media)


というものになっています。
初年度に、いずれアメリカの大統領まで殺してしまう「DEATH NOTE」をいきなり選んでくれる辺り、太っ腹な「見る目のある」リストだと思ったりしました。
ここ数年はずっと10作品中3作品ですから、図書館に置くべき本としての、manga作品への高評価がわかります。


今年2011年度も、エントリーされた作品から、選出委員会が選んだ推薦リストが先日発表され、今年のTOP10には、

「土星マンション」第1巻
 (岩岡ヒサエ VIZ Media)
 ・作者公式サイト

1作のみの、日本マンガ選出となりました。
北米では「土星マンション」は、サンフランシスコに本社を置くVIZ Media(公式サイト)から英語翻訳出版されていて、現在までに第1巻第2巻が刊行済みで、第3巻も5月17日に発売予定です。
また、VIZ Mediaがオンライン・マガジンとして展開している英語版「IKKI」にも掲載されていて、日本からでも英語版の内容を一部読むことが出来ます。
「IKKI」掲載作品としては、昨年の「海獣の子供」(五十嵐大介)に続くものですね。 
これまで、北米でのセールスで特に目立った動きがあった作品ではありませんが、今回の選出で、特に図書館向けの売り上げが増える可能性はあると思います。ともあれ、おめでとうございました!


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推薦リスト63作品の、TOP10以外に含まれている日本マンガは、

「クロスゲーム」第1巻(あだち充 VIZ Media)
「ARISA」第1巻(安藤なつみ Del Rey)
「図書館戦争」第1巻(有川浩/弓きいろ VIZ Media)
「魔王 JUVENILE REMIX」第1巻(伊坂幸太郎/大須賀めぐみ VIZ Media)
「ぼくらの」第1巻(鬼頭莫宏 VIZ Media)
「夏目友人帳」第1巻(緑川ゆき VIZ Media)
「BIOMEGA」第1巻(弐瓶勉 VIZ Media)
「さらい屋五葉」第1巻(オトナツメ VIZ Media)
「not simple」(オトナツメ VIZ Media)
「放課後のカリスマ」第1巻(スエカネクミコ VIZ Media)
「イタズラなkiss」第1巻(多田かおる Digital Manga Publishing)
「70億の針」第1巻(多田乃伸明 Vertical)
「黒執事」第1巻(枢やな Yen Press)
「ふたつのスピカ」第1巻(柳沼行 Vertical)

という14作品のラインナップです。
日本人作者でないマンガ作品としては、

「Destiny's Hand Omnibus」
(Nunzio DeFillipis & Christina Weir Seven Seas)
「Time and Again」
(JiUn Yun Yen Press)

も加わることになります。
ここでは、北米マンガ市場でシェア第2位の地位にあった筈のTOKYOPOP作品が、ついに姿を消してしまっていますね。
posted by mikikazu at 11:41 | Comment(1) | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月12日

フランス・パリで映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」のヨーロッパプレミア上映が1月26日に開催

日本での劇場公開時にも話題にされていましたけれど、映画「ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?」(日本公式サイト)の、物語の舞台でもあるフランス・パリでのヨーロッパ地域プレミア上映日が、1月26日に決定したようです。

プレスリリース

東映アニメーションヨーロッパ公式サイト内
 映画「ハートキャッチプリキュア」ページ


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1月10日付けで告知された、プレミア上映イベント告知によると、日時は1月26日の午後3〜5時、場所はパリ・シャンゼリゼ通りのシアターElysées Biarritz。ハリウッド映画などのプレミアも行われている場所のようですね。
観客の対象年齢は、日本と同じくらいの5歳以上ということになっており、上記の告知のように、日本での劇場公開時と同じく、プリキュアを応援するためのミラクルフラワーライトも配ってくれるようです。
ただしこの映画、恒例だった本編開始前の、ライトの使い方説明のコーナーが省かれてしまったこともあり、どういうタイミングでライトを使ってプリキュア達を応援すればいいのか分かりづらかった、とも不評でしたので、その辺りはパリの子供達が戸惑わないように、現地のスタッフさん達がきちんと説明してくれるといいですね。
映画の上映だけでなく、内容に合わせてファッション・ショーなども同時に行われるようですから、楽しいイベントになりそうです。
それこそ、TV本編と同じく挿入歌「HEART GOES ON」が流れたりしたら、知っている人は大盛り上がりなんですけど(笑)。


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いま現在ヨーロッパで放送されているプリキュアシリーズは、イギリスの女の子向け衛星チャンネルPopGirlでの1作目「ふたりはプリキュア」、イタリアの国営放送地上波Rai Dueでの5作目「Yes!プリキュア5GoGo!」、同衛星チャンネルRai Gulpでの3作目「ふたりはプリキュア Splash☆Star」になります。
残念ながらこれまでのシリーズが、フランスで放送・公開されたことはなく、フランスでのプリキュアの知名度というと、正直よくわからないのですが、この映画のプレミア上映がきっかけになって、広まっていけばいいと願っています。


あ、映画の公開記念として企画された、JALによる「花の都パリ6・7・8日間」ツアーですが、日本を20日に発つ8日間のコースをチョイスすれば、26日のプレミア上映は見られるかもしれません。
どうせなら、プレミアとセットにしたツアーにしていれば、それ目当てのお客さんは参加しやすかったんでしょうけど。ゲストも登場するとは記載してあるので、ひょっとして日本からも誰か行くんでしょうか? 

2011年01月11日

北米の百合振興団体Yuricon代表エリカ・フリードマンさんからの、マンガ翻訳出版を目指す人達へのアドバイス

2000年から活動を続けている、北米の百合振興団体Yuricon及び、百合マンガ専門出版社ALC Publishing(公式サイト)の代表であるErica Friedman エリカ・フリードマンさんは、彼女の個人ブログOkazuにおいて、百合をテーマとしたマンガやアニメ、ライトノベル作品のレビューを精力的に執筆しています。
最新のレビューは、「まんがの作り方」第4巻(平尾アウリ 徳間書店)で、
Story - Zzzzz
Character - Grrrr
Yuri - Ugh
Overall - Whatever
という感じの、申し訳ないですが「酷評」でした。


1月9日に掲載された"Licensing Manga - the Miracle, the Message, the Moral of the Story"と題された記事は、いつもと少し趣きを変えて、アメリカでマンガの翻訳出版を夢見ている人達への、先輩からのアドバイス、という内容のエッセイでした。
Yuriconの立ち上げについての、当事者からの回想でもあるので、日本の方々にYuriconとエリカさんについて紹介する良い機会と思い、エリカさんの許可を得て、その日本語訳を掲載しておきます。


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Licensing Manga - the Miracle, the Message, the Moral of the Story
(マンガをライセンスするには − 奇跡、メッセージ、教訓)

時折私は、どのようにマンガをライセンスして、出版し始めるようになったかについて質問してくるメールをいただくことがあります。
つい最近も、ある常連の読者さんから微笑ましいメールをいただいて、簡単にいうと、「どれくらい難しくて複雑なんですか? 他の人にも薦めます?」という内容でした。
「日曜版」としてその質問に、このOkazuブログでお答えしてみたいと思う理由は、私達はコミュニケーションの自由における前例のない時代にあって、版もまた、急速な勢いで大きな変化を経ようとしているからです。

それをふまえて、話を始めてみますね。

10年と少し前頃に私は、現在ほとんどの人に「百合」と呼ばれているものに、興味を抱き始めるようになりました。
UseNETには、様々な作品における百合について語り合っているグループがいくつか存在していて、百合について広く会話がされているような場所もありました。けれどそれらのほとんどは、二つの種類に分けられました。レズビアン・ポルノか、あり得ないカップリング(つまり、まったくの異性愛者である女の子が、他の女の子にもたれかかっている、目を惹くようなイラストが1枚あるだけで、2人はカップルだといきなり決め付けられてしまうような!)です。
さらにいくつかのグループは、現実のレズビアン達が関心を寄せてくることに、はっきりとした敵意を向けていました。
だから私は、百合を好きな人なら、誰でも歓迎するようなグループを作ろうと決意したのです。

そしてその数年後、ある考えを思いつきました。ニューヨーク市のレズビアン・バーで、バレンタイン・デイを祝うイベントを開催しよう、というものです。
映画「少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」を上映して、オタクっぽい趣味をみんなでまったり楽しもうという趣旨ですね。結局それが、初めて実際に開催されたYuriconのイベントになりました。今でも、その時の私をなにが衝き動かしていたのか、全くわかりません。
そのお店Meow Mixに足を踏み入れる時まで、私はそれまでの人生でレズビアン・バーに入ったことはありませんでしたし、バーそのものにも、数度しか行ったことがありませんでした。
私自身はイベントを主催した経験はなかったのですけれど、自己満足に終わっても構いませんでしたし、私の家族が積極的にボランティア活動に参加していたこともあって、過去たくさんのイベント運営にしっかり関わってはいました。
Meow Mixを選んだのは、以前に「ジーナ」(95〜01年に放送されたファンタジーTVドラマ:訳注)のイベントも開催していて、また違う種類のオタクっぽいイベントもクールかも、と考えたからですね。

そして、奇跡が起きたのです。

2人の日本人女性がそのレズビアン・バーに入ってきました。その内の1人が、情報サイトTime Out New Yorkでの告知をたまたま見つけて、友達と来ることに決めたのです。
その人物が、高嶋リカさんだったのでした。リカさんと私はこれを書いている2日前の晩にも、なんて奇跡だったんだろうとお互いを不思議な気持ちで見つめ合ったところです。
私達は友達になり、ある時、彼女のマンガ(「リカってかんじ?!」)の英語出版について申し出てみました。それが私にとって最初のライセンスになったのです。

リカさんと私は日本のコミケに行って、そこでとてもお気に入りのマンガ家さんと会い、お礼を述べることが出来ました。それから彼女を私が開催しているイベントにも招待し、結果として蓼野絵理子さんの作品集「WORKS」を出版することになりました。それが私にとって2番目のライセンスです。

おわかりになるように-私が百合マンガ出版においてやってきたこと全てが、奇跡から始まっているのです。それがあなたにも起こるように願うのはちょっと変ではありますが、話はまだ続きます。

私はYuriconを、ソーシャルメディアがそう名付けられる以前に、その中において立ち上げました。UseNET、メーリングリスト、Yahooグループ。
やがて徐々にですが、コミケに参加しながら、私はお気に入りとなる、また別のサークルを見つけるようになり、メールで連絡を取って、数年前に描いたような古い作品を出版出来ないかどうか訊ねてみました。
それには理由があって、ほとんどのマンガ家は古い作品のことは気に留めなくるし、そういった作品は誰からもライセンスされたり、思い出されたりすることもないからです。新しい作品は大事だけれども、8年前の作品なら……ああ、好きにしていいよ、という風に。

私は何をすべきか全くわからぬまま、ライセンスや出版をしていくようになったのです。
まるで知識がなかった出版とライセンス双方の面で、私は厳しい学習局面を経てきました(特に出版については、当初「同人誌」を出版するコンセプトをアメリカで再構築しようとしていた計画が、突然実際の「本」を出版することに変わっていきましたから)。

この種のことにおいて、私は最悪のお手本でしょうけれど、私はいつもこうなんです。やり方など知らないうちに事を始めて、それからやり方自体を新しく考え出していく。他人に訊きたくないのではなく、そもそも他の人達と同じことをやっているわけではないのですから。そして全て理解する頃には、ルール自体を変えてしまうのです。なぜなら同じことを何度も何度も繰り返すのは嫌いだからです。

けれど今は、私が変えてしまえるようになるのよりも早く、ルール自体が変化していっています。だからここでメッセージがあります。
「訊いて失うものは何もない」のです。
たくさんのマンガ家さんがTwitterで発言していますし、ブログも持っていれば、メールでも連絡が取れます。大好きなマンガ家に連絡をして、作品を出版出来るかどうか訊ねることで失うものは、「何もない」のです。
起こり得る一番最悪のことは、返事がもらえなかったり、もらえても断られてしまうことです。そうすれば落ち込んでもしまうでしょうけれど、気を取り直して、また進んでいけばいいのです。

奇跡は助けになりますけれど、自分自身で奇跡を作り出していくことも出来ます。
イベントに参加し……いえ、開催しましょう。描いて書いて、どうやって本が出版されるのかを学び、ライセンシングについて勉強し、インターンとして企業に赴き、コミケに行って、マンガ家さんに自分を紹介しなさい。彼らとコミュニケートするのです。関係を築くのです。人々と会話をしなさい。あなたに力を貸してくれる人が、きっとたくさん必要になります。
私も今やっていることを、自分だけでやっているわけではないのです。私には、助力してくれる最高に素晴らしい人達がいてくれるのです。リカさんはもちろんですが、Erin S.、Mari Morimotoさん, Komatsuさん、そしてAnaのような人々、マンガ家ご自身達、私のスタッフや編集者さん達、果てのない様々な私の話に耳を傾けなくてはならない友人達、それから当然、私のパートナー、世界中の貢献してくれるみなさん。
私がやってきたどんなことも、ただひとつさえ、私1人で成し遂げたものではありません。
全て「私達みんな」で成し遂げてきたことなのです。共に力を合わせて。

ALC Publishingは小さな小さな出版社だということを考えてみてください。私達はけっして大企業ではありませんし、ほんのわずかの予算で働かなくてはならないこともしばしばです。このストーリーはVIZ MediaやTOKYOPOPのお話ではありません。あなた自身が主人公になれるストーリーなのです。

マンガをライセンスするのは難しくて複雑ですか? その通りです。
誰かに薦めますか? もちろんです。

今回の教訓-
「もしあなたが世界を変えなければ、他の誰かが変えてしまうでしょう。
どうしてそれがあなたではいけないのでしょう? 訊ねてみて失うものなど、何もないのですから」


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ALC Publishingは今年、エッセイにも登場する高嶋リカさんの作品「リカってかんじ?!」のオムニバス版の出版を計画しています。
日本でも現在入手が難しい作品ですが、アメリカでも第3版までが品切れとなり、再版が望まれていました。
北米地域での百合マンガの出版に興味がある方は、ALC Publishingと連絡を取ってみてはどうでしょうか。
posted by mikikazu at 13:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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