2010年11月18日

アカデミー賞長編アニメ部門の選考対象となった「サマーウォーズ」は、日本語オリジナル版ではなく、英語吹替版

米・アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーが11月15日に、長編アニメ部門にエントリーした15作品を発表してから(プレスリリース)、ずっと気になって調べていたのが、唯一エントリーしている日本アニメ作品の「サマーウォーズ」(細田守監督 日本公式サイト)が、オリジナルの日本語版なのか、それとも英語吹替版なのか、ということでした。


というのも、今でも日本のほとんどの方が、「2002年のアカデミー賞長編アニメ賞を、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が受賞した」と思っていますよね。
でも厳密に言うと、実際にアカデミー賞を受賞したのは、日本語オリジナル版の「千と千尋の神隠し」ではなく、ピクサー・アニメーション・スタジオのジョン・ラセター氏が監修した、英語吹替版の「Spirited Away」という作品になるのではないでしょうか?
つまり、アカデミー賞受賞における評価対象には、日本語版の声優さんの演技や、それらに対する演出行為は含まれていないことになります。
アカデミーには外国語映画部門もありますが、長編アニメ部門にエントリーするには、英語に吹替する義務があるわけではなく、2004年には今敏監督の「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」が共に、日本語音声のままで(英語字幕付き)選考対象へのエントリーを認められています。


なので、少し前から、エントリーのための手続きを進めていると伝えられていた「サマーウォーズ」の場合はどうなるのだろうと思っていたのですけど、16日付けで出されたプレスリリースの文面によれば、「この細田守作品の提出では、Michael SinterniklaasとBrina Palenciaが主演し、Mike McFarlandがADRディレクターを務めた英語音声トラックがフィーチャーされている」と記載されていますので、FUNimationが提出し、アカデミーによる選考対象作品となったのは、日本語音声のオリジナル版「サマーウォーズ」ではなく、英語吹替版の「Summer Wars」であると判断していいと思います。
ですから、今後の経過がどうであれ、アカデミーで評価の対象になっているのは、日本の観客が知っている日本語版そのままの「サマーウォーズ」ではない、ということは理解しておく必要があるでしょう。
映像そのものに修正・削除はないと思いますが、例えば予告編で見た範囲でも、主人公の健二君が、ヒロインの夏希さんを最初の部室のシーンから、「先輩」付けではなく「Natsuki」と呼び捨てにしている、といった違いが確認出来ました。


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個人的な意見を言えば、映画賞という場で、外国語映画をオリジナルの形ではなく、自国の言語に吹替えたバージョンで評価しようというのは、論外だと思います。
逆に考えて、日本の映画賞で、例えアニメーションであっても外国作品を、日本語吹替版で評価しようとしたら、賞としての権威が失われるような、失笑行為になるでしょう。
英語圏であるアメリカの映画賞が、日本語での演技を評価出来るのか?という意見もあると思いますけど、国際アニメーション協会のロサンゼルス支部が主催するアニー賞では、2003年の長編声優部門で、「千年女優」の主人公・藤原千代子を(もちろん日本語で)演じた荘司美代子さんがノミネートされた、という事実もあります。
アカデミー賞の商業的価値を利用するためには、英語吹替での応募も必要である、という考えに反対はしませんが、その英語吹替制作が、日本側のクリエイターさんの意向がきちんと理解され尊重されたものであること、可能なら直接監修してもらったものであることを、祈るばかりです。
posted by mikikazu at 15:19 | TrackBack(0) | 海外情報(北米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月02日

イタリアの国営放送局RaiDueで、11月6日に映画「ふたりはプリキュア Splash☆Star チクタク危機一髪」、7日に「Yes! プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」放送決定!

イタリアでは現在、民放最大手局のItalia 1で平日夕方枠に再放送中の、「美少女戦士セーラームーン」が(局公式サイト内番組コーナー)、新作の「ONE PIECE」と共に、時には視聴者数が100万人を超えるほどのリバイバル人気を博している最中なんですが、同じ東映アニメ
ーション作品では、日本での稼ぎ頭のひとつであるプリキュアシリーズも、負けずに広く展開されつつあります。


前回の記事で、国営放送局RaiDue(公式サイト)による、奇しくも日本での最新映画「ハートキャッチプリキュア! の都でファッションショー…ですか!?」公開と同日になった10月30日の、プリキュア映画第2作「ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち」の放送についてお伝えしましたけれど、Raiグループのプリキュアプッシュは続いていくようです。


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まず、RaiDue公式サイトの番組表で確認出来ますけれど、11月6日午前7時45分からは、"Pretty Cure Splash Star - Le leggendarie"こと、映画「ふたりはプリキュア
Splash Star チクタク危機一髪!」(日本公式サイト)の放送が予定されています。
シリーズ第3作「Splash☆Star」のTVシリーズは、イタリアでは同局で2008年夏に放送されていて、ヨーロッパでは現在唯一の放送国ですね。アジア地域だと、香港と台湾で放送済みです。
この「チクタク危機一髪!」が、「Max Heart 2」と共に、イタリア語吹替版も制作されていることは、当時から伝えられていて、放送も近いかもとは想像していたんですが、意外に早かったです。


さらに続く7日・日曜日の午前7時20分からは、"Le Pretty Cure nel regno degli specchi"こと、映画「「Yes! プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!」(日本公式サイト)の放送も予定されています。
2日続けてのプリキュア映画放送というプログラムは、イタリア現地のプリキュアファンには嬉しいプレゼントですよね。
イタリアRaiDueでの「5」TVシリーズの放送は、「S☆S」の1年後になる2009年5月から。やはりヨーロッパではイタリアが唯一の放送国で、また現在までにイタリアで放送された、最後のプリキュアシリーズになっています。


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さらに、これは現在公式な番組表ではまだ確認されていなくて、ファンサイトのフォーラムで報告されている情報なんですが、「5」に続くシリーズ第5作の「Yes! プリキュア5 GoGo!」も、RaiDueで翌週土曜日の11月13日午前8時10分から放送開始予定、という話も出ています。
RaiDueで昨年8月に「5」の最終話が放送された際に、「GoGo!」の予告も放送されたことで、その放送は確実と思われていたんですが、近年は夏だった、プリキュアシリーズの放送時期が過ぎても音沙汰はなく、秋には放送するとは言われつつも、10月が過ぎてしまいで、イタリアのプリキュアファンが、不安になっていたところでした。


そのフォーラムでの情報を信じるなら、今回の「GoGo!」の放送が近作と異なるのは放送時期だけではなくて、スケジュールも変わりそうです。
「S☆S」「5」はずっと、平日朝の時間帯で連日放送し、数ヶ月程度で全話の放送を消化していたんですが、「GoGo!」は土曜日朝の一度だけ、つまり日本と同じように1年間かけて放送するらしい、と伝えられています。
イタリアのプリキュアファンの不満のひとつは、放送が日本から二年遅れということだけでなく、キャラクター商品などのマーチャンダイジング展開が近年皆無ということでした。
正確にいうと、1作目の「ふたりはプリキュア」放送時は、人形や文具などの展開はあったんですが、それ以降のシリーズではないようで、慌しく数ヶ月で放送を終えるだけ、という状況でした。
けれど今回の「GoGo!」が1年間の放送期間を用意しているのなら、じっくりとした商品展開も予定されているのかもしれません。


ともあれ11月のイタリアは、地上波RaiDueで「Splash☆Star」「5」映画、「5GoGo!」TVシリーズ、衛星チャンネルRai Gulpで「ふたりはプリキュア Max Heart」の再放送と、プリキュアがたくさんな月になりそうですね。
来年2月からのフランスでの「ハートキャッチプリキュア!」放送と合わせて、1作目放送時はイマイチだった模様の、ヨーロッパへのプリキュア進出が成功して欲しいです。
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